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伝説の超ロングヒットセラー『ティファニーのテーブルマナー』(W.ホービング著、後藤鎰尾訳、1969年、鹿島出版会刊)

誰しも、「きちんとしたテーブルマナーを身につけたい」と思う瞬間があるのではないだろうか。何となく知っているつもりでもそれが正しいのか、商談相手との会食に臨んでから不安になることさえある。かといって、その場で同席者に確認するわけにもいかない。

歳を経るにつれて、面と向かって不作法を指摘される機会はなくなってしまう。何も知らないまま食事をして、その日はやり過ごせるかもしれないが、相手がこちらの振る舞いを大目に見てくれているとは限らない。実際、「誰それのマナーはあまり良くなかった」というような類いの愚痴を耳にする場面は少なくない(そのような陰口自体がマナー違反であるともいえる。とはいえ、筆者も少なからず言われているのだろう)。

せめて一人前の大人として振る舞えるようになりたい。そう思い、私たちは本屋に向かったり、インターネットで検索したりして本の一冊でも購入しようと考える。そこで待ち受けているのは、目眩がするほど並べられたマナー本の大群である。一口にマナーといっても様々な流儀があるようだから仕方ないのだが、これから勉強しようという人にとっては、適切な一冊を見つけるだけでもずいぶんと敷居が高い。

あの「ティファニー」お墨付きのマナー本がある


1969年に刊行されて以来、今なお版を重ねている『ティファニーのテーブルマナー』(W.ホービング著、後藤鎰尾訳、1969年、鹿島出版会刊)はマナーについて悩んでいる私たちにうってつけの入門書だ。本書は映画『ティファニーで朝食を』や、宝飾品・銀食器ブランドとして有名なティファニー社が、顧客に対して進呈するのを目的に編纂したマナー本である。


『ティファニーのテーブルマナー』(W.ホービング著、後藤鎰尾訳、1969年、鹿島出版会刊)より

『TIFFANY‘S TABLE MANNERS FOR TEEN-AGERS』という原題からもわかるように、元々は若者をターゲットに書かれたようだ。まえがきにも「食卓での作法は、幼少のころから、しつけはじめ、自然に身につくように教えなければなりません」とある。しかしながら、大人が読んでも遅すぎるということは決してない。老若男女を問わず、踏み出すべき最初の一歩としてふさわしい一冊であるといえるだろう。大切なビジネスパートナーとの会食を前にしても使える、汎用的な一冊である。

教えるのは「フルコースのテーブルマナー」オンリー


タイトル通り、扱われている題材はテーブルマナー、それもフルコースと向き合う際のテーブルマナーに絞られている。わずか100ページに満たない本書の多くは洒脱なイラストで占められており、文章については要所を押さえた短文が添えられているのみだ。それだけに一つ一つの作法が記憶に残りやすい構成となっている。ビジネスシーンでの大事な会食の直前に読み返すのにも適しており、自らの振る舞いが正しいかどうか、手軽におさらいすることができるだろう。


『ティファニーのテーブルマナー』(W.ホービング著、後藤鎰尾訳、1969年、鹿島出版会刊)より

さて、ここまでで解説したとおり、本書は確かにマナー本の一種だ。しかし同時に、「自然体でいること」の重要さを力説している本でもある。むしろ、「自然体こそが最も重要な作法である」と主張しているようにさえ思わせるのだ。

たとえば、以下はナイフやフォークを使う順序を誤った際の忠告である。

「まちがったことに気づいても、そのまま食べつづけなさい。ナイフやフォークを元へもどしてはいけません。のん気になにげなくふるまうこと」

他にも、『べからず集」(してはいけないこと)にはこのような項目もある。

「何よりも自然にふるまうことが大切です。(中略)きざな、愚かしいかみかたで食べないでください。飾り気のないあなた自身がよいのです」


『ティファニーのテーブルマナー』(W.ホービング著、後藤鎰尾訳、1969年、鹿島出版会刊)より

文=松尾優人 編集=石井節子

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