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レイ・イナモトが考える「世界に通用するキャリア」の作り方

「ものを作ることこそが大事。作れなければ戦略なんて意味がない」

僕は20代のとき、そう思っていた。そして、とにかく作ることに専念していた。ニューヨークのデザイン会社で初めて就職した当時、デザイナーがウェブサイトをもって自分の作品を載せたりすることが流行っており、僕も友達数人とデザインユニットを作って会社の仕事以外にもたくさんの作品を載せていた。今、自作の動画をInstagramやTikTokに投稿することに似ているだろう。

そんな時、あるデザインカンファレンスで「戦略を立てるのは簡単そうでいて、実は難しい」という言葉を聞いた。戦略の重要性を理解していなかった僕にとって気になる言葉ではあったが、やはり意味はよくわからなかった。

戦略というのは、振り返れば当たり前のことを言っているものが多いと感じていたし、僕自身、当時は戦略という概念すら理解していなかったと思う。まだ経験が浅く、良い戦略に出会えていなかったことも関係しているかもしれない。だからこそこの言葉はずっと僕の頭に残り、結局、10年後にようやく意味を理解することになった。

「なぜ」に基づいた「なに」


30代でなぜ理解できるようになったか。それは、経営層やマーケティング担当へのプレゼンテーションを無数に重ね、「なに」を超えた「なぜ」の重要さを理解し始めた点にあると考えている。

30歳になった頃、僕はR/GAという会社に身を置いていた。R/GAは1990年代に既に映像やウェブサイトの制作に優れた会社として名が知られており、創設者であるボブ・グリーンバーグという人は業界では伝説的な存在だった。

一方、次のキャリアとして選んだAKQAという会社は、2005年当時、ほぼ無名だった。しかし、友達の紹介で経営責任者と創設者の二人トム・ベデガレーとアジャズ・アメッドに会い、転職を決めた。名門エージェンシーから無名の会社に行くのにはかなり勇気が要ったが、制作重視のR/GAからアイデア重視のAKQAに興味が湧き、思い切って踏み出したのだ。

AKQAでは、一つのクライアントに集中してデザインチームを牽引していた立場から、数十人のクリエイティブ部を統括する立場になった。それにより、熱心にものを作るばかりだった20代の頃は意識していなかった二つの業務が、自分にとってとても重要になった。

一つはチームメンバーにフィードバックをすること、もう一つはクライアントにプレゼンをすることだ。

文=レイ・イナモト

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