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安田造船所 代表取締役 野澤隆之

ヨーロッパにあって日本にないものは色々あるが、そのひとつに海辺での豊かな過ごし方があるだろう。自分のプレジャーボートで旅をし、スポーツフィッシングをし、時にただパーティをするために沖へ出る。停泊する港町には彼らが食事を楽しむ洒落たレストランやバーが集り、華やかな社交が日夜繰り広げられる——。サントロペ(仏)やポルトフィーノ(伊)にあるような海辺の豊かなカルチャーを日本で築けないかと尽力しているのが安田造船所 代表取締役の野澤隆之さんだ。


海に片足をつっこんでないとパワーが出ない。


──今日は京浜島(大田区)のオフィスにおじゃましておりますが、すぐそこが海という素晴らしい環境ですね。こんなに大きな船が停泊しているマリーナが東京にあるとは知りませんでした。

マリーナっていうのは主にヨットなどの小型船舶を停める場所のことなんですが、ここは一般の人が入れないプライベートマリーナです。ここ「YASUDA SHIPYARD」では、私たちが輸入販売しているイタリアの最高級クルーザーブランドである「AZIMUT」を中心に、多くの顧客の方のボートをメンテナンスや販売のためにお預かりしています。

──きっと……お高いんですよね?

う~ん、あれは20億くらいだったと思います。



──‼想像とケタ違いでした。そもそも野澤さんがプレジャーボートを取り扱うようになったのはどのような経緯があったのでしょうか?

私は群馬県の出身なんですが、子どものころから釣りや川遊びは好きでね。イワナやヤマメを釣って遊んでいました。そのうちにもっと大きなものを釣りたいと思って海に興味を持ったけれど、群馬は“海なし県”でしょ。余計に憧れが募って。大学卒業後、不動産業界へ入り、世界を巡ったのですが、惹かれるのはいつも港町や海辺の街だったんです。船もそのころから好きで、20代半ばですでに小さなボートを持っていたかな。世界で行われるボートショーにも顔を出していました。もともと水に片足突っ込んでないとパワーが出ないタイプなんですよね(笑)。

──その後、2000年ごろに安田造船所(1910年創業)の事業を継承されたのですね。

まずはプレジャーボートのメンテナンスから始め、輸入や建造に進みました。造船所は船の設計も製作も修理も何でもできますから、とにかく楽しい。なにしろ一番好きなものなんだから。そのうちによいお客さまにも出会えて現在につながるわけですが、だんだん課題も見えてきました。すなわち、せっかく大型プレジャーボートを購入しても、日本では遊びに行ける場所が少ないんです。日本の海は外海が多く、大きな船が停まれる港町はほぼ漁港や産業港になっていますからね。

──だから日本にはサントロペやポルトフィーノのような美しい港町がない、ということなのでしょうか?

私はアンティーブ(仏)を例に挙げることが多いんですけれどね。アンティーブは最初は漁港だったと思うのですが、プレジャーボートも停泊できるように防波堤を造ったんです。するとどうなるか?ヨーロッパはもちろん世界から富裕層がバカンスに訪れるようになった。彼らはもちろん街でお金を使うわけですから、ミシュランで星を獲るような素晴らしいレストランもでき、アートギャラリーもでき、美術館もできる、と。街に活気と洗練をもたらしてくれるんです。私の持論は「桟橋からすべてが変わる」ですから。港が変わればくる人々が変わる。つまり、街が変わります。



「SHIMODA RENDEZVOUS」で日本のラグジュアリーを発信


──野澤さんは2016年から下田市の武ガ浜でイベント「SHIMODA RENDEZVOUS(下田ランデブー)」も開催されていますね。

ここが日本にラグジュアリーを根付かせるためのゲートウェイになれれば、との想いで始めました。50周年を迎えるイタリアのスーパーカー「Dallara Stradale(ダラーラ・ストラダーレ)」やレーシングカー「Dallara EXP」のお披露目をするほか、こちらも昨年50周年を迎えた「ランボルギーニ・カウンタック」などの展示、イタリア最高峰のクルーザーである「AZIMUT」やヘリコプターの乗船・搭乗ができるイベントです。私たちはいわば‟プロの趣味人“ですからね。楽しいですよ。当日は500名ほどの方が首都圏やその他からいらっしゃるかな。日本の富裕層にとって邸宅や別荘、そして高級車などそのステイタスを表すアイコンはいくつもありますが、世界にはもっともっと刺激的なモノがあるということを知って、そのライフスタイルを体験していただくよい機会になるのではと期待しています。

──みなさん、すごいクルマでいらっしゃるらしいですね。下田の人もびっくりするのでは。

当日は地元の魚介類や野菜の販売を行うファーマーズマーケットも開催し、地元の方にも参加していただいています。最初は驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は歓迎してくださっているのではないかな。この「SHIMODA RENDEZVOUS」を開催することで、町に若い、エネルギッシュな人たちがたくさん来る。つまりは経済も活性化するということを実感してくださっているようです。もともと下田は1854年にペリーがやってきて日本開国の舞台となった土地でもありますから、新しいものを取り入れていくという気概に富んでいるんですね。ラグジュアリーなライフスタイルを発信する地として、ゆるやかにムードが醸成されているように感じます。


プレジャーボートやスーパーカーがずらりと居並ぶ下田ランデブー。

──富裕層が集まる土地といえば軽井沢のイメージがありますが、下田もそうなっていくんでしょうか。

そこに“憧れ”が創れないと、地方創生は不可能だと考えます。日本にもラグジュアリーのピース(カケラ)はあるけれど、それをつなぐストーリーがないんですよね。たとえば日本固有の文化、伝統は本来とてもラグジュアリーなものだったはずですが、我々はいつかそれらを見過ごしてしまい、廃れてしまったものもあるでしょう。すでにあった魅力を再発見し、伝えていく、つまり街をデザインという観点から見ることが非常に大切だと思います。私は「街にデザインをふりかける」とよく言うのだけど、それはつまりぼやっとしたイメージを具現化すること。「SHIMODA RENDEZVOUS」のようなアクションを起こすことで、批判や批評、議論を巻き起こすかもしれないけれど、いろんな人が参入してくることで機運も高まっていくはず。私たちはラグジュアリーを発信するきっかけを創るだけ。あとはもっと力のあるみなさんの参入を期待したいですね。

カジキ釣りはチームプレイで勝負


──日々とてもお忙しそうですが、休日の日はなにをされているのですか?

私は7days on and off。オンとオフを分けて生活していないので、いつからいつまでが休日とも言えないのですが、趣味と言えるのはカジキ釣りでしょうか。


カジキ釣り用のルアー。カジキは大きなもので3~4m、ゆうに100㎏を超えるそう。

──カジキ!とても大きな魚ですね。釣るにも体力が要りそうです。

必要なのは体力というより、チームビルディングの能力かな。カジキ釣りというのはひとりではできないんですよ。潮目を見ながら船を操舵するキャプテンと、ヒットしたら魚の方向性を見定めてキャプテンに連絡するアングラー、釣り糸を操る人、タグを打つ人……と少なくとも4~5人は必要。全員が力と呼吸を合わせて初めて成し得ることだから、大きな達成感を味わえるんです。男って、大人になってもそういうのが好きなんですよね(笑)。

──せっかく釣り上げてもタグを打つだけで食べないんですね。なんて贅沢な趣味なんでしょう(笑)。

食べないどころか、弱っている魚がいたらきちんと蘇生してからリリースしているんですから。魚の負担をできるだけ少なくするように努力しています。


野澤さん所有のカジキ釣り用ボート。

──海で遊ぶ醍醐味ってなんでしょう?

世界は広いということを教えてくれます。たとえば100フィートの船といえば日本では大きいほうだけれど、世界ではそれほど大きくないですから(笑)。従来、日本の成功者は非常に小さく閉鎖的なコミュニティのなかにいた印象がありますよね。たとえば昔の金持ちは不動産やスーパーカーなどを買ったことを隠すでしょう。でもいま少しずつ変わってきていて、若い成功者たちはもっとオープンマインドです。船でパーティして、それをSNSにあげ、その人にファンがついていく。そうやって憧れを生み出すことがとても大切だし、日本に真のラグジュアリーを根付かせるためのスタートラインなんじゃないかなと思います。

──Forbes JAPAN SALON に期待することとはなんでしょうか?

いわゆるビジネスマンのコミュニティとは趣を異にして、集まっている方々が若く、何か新しいものにチャレンジしている方が多いという印象を抱いています。私も精神年齢は永遠の27歳なので若いつもりではあるけれど、なにか刺激を与えていただけるのではないかと。またこちらからも何か楽しいことをご提案し、ご一緒できたらうれしいですね。なにせこちらは“プロの趣味人”ですから。


のざわ・たかゆき◎群馬県生まれ。大学卒業後、不動産ビジネスや企業再生プロジェクトに従事。1998年に安田造船所 代表取締役CEOに就任。その後、ヴィンテージカーやイタリアの最高級家具の販売、マリンリゾート開発などを手がける。ラグジュアリーなライフフタイルを愛し、自ら実践している。

Promoted by Forbes JAPAN SALON / interview & text by Miyako Akiyama

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