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中道:そのときはおいくつでしたか。

安西:30歳過ぎで、確かにビジネスにもなりにくいんだろうとは思いました。それでも、都市計画や建築家の考えを知りたかったので、イタリアの建材や家具を日本に輸出するためのコンサルタントやコーディネートといった業務をこなし、その中で建築家やデザイナーとの付き合いを深めていきました。

そのうちに、日本とヨーロッパの両方から文化的制約にぶつかりました。例えば、イタリアの家具を日本に輸入しようとすれば「かっこ良すぎる」「日本の空間では浮いてしまう」と言われてしまうので、少しダサイ家具を輸入しなければいけなかったりする。そういった経験をするうちに、文化性のないハイテク製品なら扱いやすいのではないか、と思い至りました。

ところが、実際にヨーロッパの通信メーカーに小型部品を定期供給する仕事を経て、たとえテクノロジーでの互換性があっても、結局アプリケーションやコンテンツに文化性が出てくることがわかりました。

文化性に無縁のテクノロジーも難しいなかで、プロダクトデザイナーたちと付き合うようになり、2000年代中盤から、電子デバイスのインターフェースのユーザビリティ向上やローカライゼーションを専門としたアイルランド企業のコンサルタントを務めるようになりました。

その業務で、日本企業の商品企画やクリエイティブ人材は異なった文化を理解することが苦手で、ローカライゼーションが遅れがちだとわかりました。対米と対欧の違いも気になりました。

もちろん、アメリカと比較すると欧州の方が市場が小さい、あるいは複数言語が話されているなど、コストがかかる問題もありますが、なによりも「ヨーロッパ文化がわからないからローカライズしない」という。その実情を知るにつれ、ビジネスパーソンのための異文化理解の方法がなければいけないと思いました。

ヨーロッパの駐在員の多くは、渡欧前に本屋で駐在国の歴史を知れる書籍を買っていくと言われていますが、それは直接業務にいきる行動ではありません。例えばカーナビのローカライズで必要とされる知識は、ヨーロッパの人々が地理的把握をする方法であり、そのためには日常生活をいかに理解するかが重要です。



そんな問題意識から、2008年に『ヨーロッパの目 日本の目』という、ヨーロッパの文化を題材に、ビジネスパーソンに異なる文化への理解を促す書籍を執筆しました。

中道:ヨーロッパ、あるいは海外という視点から、日本という国をどう捉えていますか。

安西:あまり言わないようにしているんですが(笑)。ひとつだけ、「絶対日本よりマシだ」と確信を持っている点があります。教育のことですね。

イタリアでは小学校1年生から、成績の50%は筆記試験、50%は口頭質問で決まるんです。現在20歳の息子がミラノで生まれたため、イタリアの公的教育の良い面も悪い面も知っていますが、その評価方式によって、相手の表情を見ながら話し方やその内容を変えていく訓練ができるという教育は圧倒的によかったと思っています。

文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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