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全米経済研究所(NBER)が先日発表した新たなワーキングペーパーにより、大学が学生に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種を義務付けた場合、周辺コミュニティでの死亡率が低下することが明らかになった。

分析手法


ワーキングペーパーの著者たちは、少なくとも1つの4年制大学がワクチン接種を義務付けている全米の州のうち、こうした大学のある郡をすべてリストアップした。その上で、2021年秋学期の開始以前にワクチン接種の義務化を発表した大学がある269の郡と、接種を義務化していない大学がある284の郡の2グループに、サンプルを分類した。

研究チームは、郡レベルの新型コロナウイルス感染症の感染者数、ワクチン接種率、入院患者数、死者数に関して、義務化大学がある郡と、ない郡を比較した。データは、米国疾病予防管理センター(CDC)の公開情報を利用した。

分析対象とした期間は、学生がキャンパスに戻ってくる秋学期開始直前の週から、秋学期の約3分の2が終わった感謝祭連休の直前の週までの13週だった。

一般に、健康な大学生は新型コロナウイルス感染症による入院や死亡のリスクが低い。そのため研究チームは、郡レベルでの感染データ、すなわち「学生たち自身ではなく、学生の間の感染が、コミュニティのその他のメンバーに波及する外部性」に注目して分析をおこなった。

結果


研究チームによれば、大学でのワクチン接種義務化は、郡内の新型コロナウイルス感染症感染者数を10万人あたり339人減少させた。これは、平均と比較して約10%の減少に相当する。

また大学での接種義務は、分析対象となった13週の期間中、郡内の新型コロナウイルス感染症による死者数を10万人あたり5.4人(12.8%)減少させた。

研究チームの推定によれば、13週の期間中に実施された大学でのワクチン接種義務化によって、全体で約7300人の死亡が回避された。これは、同期間中の新型コロナウイルス感染症による総死者数の約5%にあたる。

研究チームはまた、異なる複数の仮定に基づき、大学生の間のワクチン接種率の上昇が、郡内における新型コロナウイルス感染症の感染者数および死者数の減少にどれだけ貢献するかを推定した。これにより、「大学生のワクチン接種率が1%上昇するごとに、総感染者数は10万人あたり20〜30.5人、総死者数は10万人あたり0.34〜0.6人減少する」という結果が得られた。

この研究によると、ワクチン接種義務化が最も大きな効果を発揮したのは、以下の3つのケースだった。すなわち、(1)義務化されなければワクチン接種率が低レベルにとどまると予測される大学、(2)人口に占める大学生の割合が比較的大きい地域、(3)入学のハードルが低い大学で実施された場合だ。

これらの結果を考慮すると、大学でのワクチン接種義務化のメリットは、大学周辺のコミュニティに波及し、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクがより高い人々を感染から守ることに貢献すると考えられる。

今回の知見は、ワクチン接種義務化に関する議論を再燃させるだろう。一部の大学は最近、政治的圧力に屈する形で接種義務を撤回した。2022年秋学期の開始が目前に迫るなか、新型コロナウイルスの新たな変異株が猛威を振るっている。大学でのワクチン接種義務化をめぐる議論は、「感染防止の恩恵はキャンパス内にとどまらない」という今回の研究結果を考慮に入れる必要があるだろう。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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