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朝日新聞外交専門記者

独立記念日の街頭デモで、カーキ色の軍服を着たロシア・ウクライナ戦争の退役軍人の列にいる従軍聖職者(ウクライナ・キーフ、8月24日)(Oleksandr Polonskyi / Shutterstock.com)

米CNNは7月28日、バイデン米政権が、ウクライナ侵攻開始以降のロシア側の死傷者が7万5000人を超えたと米下院議員らに説明したと伝えた。ロシア陸軍の80%以上が行き詰まり、疲労しているという。ロシア軍兵士らはウクライナ侵攻の大義を見いだせず、士気が下がっているという報道も相次いでいる。

ロシアに比べ、祖国防衛という大義名分があるウクライナは比較的、士気が高いと言われている。それでも、ロシア軍の侵攻後に総動員令が出され、18歳から60歳の男性の出国は原則的に禁じられているため、「国外退避した家族に会えない」といった不満の声も出ているようだ。すでにロシアによる侵攻から5カ月が過ぎた。このまま戦闘が長期化すれば、程度の差はあれ、両軍ともに兵士の士気を維持することに神経を遣うことになるだろう。

自衛隊の元幹部は「人間は殺されることにも、殺すことにも激しい心理的なストレスを感じる。兵士として戦うことは簡単なことではない」と語る。日本でも昔、戦争で徴兵された市民が人を殺すことをためらい、上官から怒鳴られたという手記があちこちに残っている。

過去、自衛隊は幸いにも、本格的な戦闘に巻き込まれたことはない。ただ、2011年3月に発生した東日本大震災の救助活動の際には、大勢の犠牲者を目の当たりにした。震災にかかわった、別の元自衛隊幹部によれば、犠牲者を清拭する仕事に携わった隊員の多くが心理的に強いストレスを受けたという。自衛隊はメンタルヘルスの専門家を招き、こうした隊員たちのケアにあたった。この元幹部は「とにかく、隊員に自分が見聞きし、やったことをそのまま話すように指示した。その日の仕事を話すうち、涙が止まらなくなった隊員が大勢出た。話すことで、精神的な落ち着きを取り戻したケースが多かったが、それでも現場に復帰できなかった隊員もいたようだ」という。

韓国軍の場合、こうした「心の平安」を得るため、頼っているのが宗教だという。韓国軍の士官候補生は、陸海空の各士官学校に入校すると、「カトリック」「プロテスタント」「仏教」のうち、どれか一つの宗教を選択するよう求められる。「私は、宗教は信じません」という答えは許されない。1カ月の猶予を与えられ、その間にどの宗教にするのか決めるという。学校の施設内には、寺や教会など3つの宗教施設があった。学生らは、日曜日午前の「宗教の時間」になると、いずれかの施設で礼拝したり、講和を聞いたりする。

文=牧野愛博

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