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朝日新聞外交専門記者


ロシアは兵員数で負けないよう、本国の予備兵力からの補充や入れ替えを行っている。掌握した地域はすべてロシア国内と地続きになっているため、補給面では問題がなさそうだ。7月にルハンスク州を掌握すると作戦を一時停止したが、兵力の入れ替えを行っていたとみられている。ただ、祖国を防衛するという明確な目的を持つウクライナ兵に比べて、戦う理由が弱いため、士気で劣る。休息を取る間に、ウクライナ侵攻を巡る国際世論を目にする機会も多いはずだ。プーチン大統領らが「ノヴォロシア」に言及するのも、ロシア兵に戦う大義名分を与えようとしているからだろう。

一方、装備では、西側諸国がどこまでウクライナ軍に対する支援を続けられるかにかかっている。ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、米国が支援する高機動ロケット砲システム「ハイマース」の数が不足しているとし、更なる支援を求めた。

ただ、米国も11月の中間選挙でバイデン政権を支える民主党が大敗すれば、ウクライナ支援の動きが鈍るかもしれない。バイデン政権は中国に対する制裁関税の一部引き下げを検討しているほか、バイデン大統領が7月にサウジアラビアを訪れ、石油の増産を要請した。人権や民主主義を重視するバイデン政権にとって、権威主義の中国やサウジアラビアは許せない相手のはずだ。バイデン氏が両国にあえて接近するところに、米国内で急速に高まっている物価高への不満と政権批判に苦悩している様子が見て取れる。

また、欧州諸国も、ウクライナへの支援を叫ぶ英国やバルト三国、ポーランドなどの「正義派諸国」と、ドイツやフランス、イタリアなどの「和平考慮派諸国」に微妙に分かれている。和平を考慮すべきだという声は、ロシアによるウクライナ侵攻が、欧州経済に深刻な影響を与え始めているからだ。ロシアも欧州諸国の結束を揺るがすため、天然ガスの供給量を減らしたり、黒海を経由したロシア・ウクライナ産食糧の積み出しを妨害したりしている。ロシアによるこうした政治・経済工作が成功し、西側諸国のウクライナ支援が鈍ると、ロシア軍が再び、進軍を始めるかもしれない。

日本政府関係者の1人は「ロシアによるウクライナ侵攻の行方は、全世界の動き次第だろう。その意味では、すでにこの問題は世界大戦と化しているとも言える」と語った。

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文=牧野愛博

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