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朝日新聞外交専門記者

青瓦台(Efired / Shutterstock.com)

韓国の情報機関、国家情報院は6日、文在寅政権時代の朴智元、徐薫・両元院長をそれぞれ大検察庁(最高検察庁)に告発したと明らかにした。朴氏の場合、2020年9月に黄海で行方不明になった韓国公務員が北朝鮮によって射殺された事件で、国情院が収集した情報を無断で削除したとして、国家情報院法違反(職権乱用罪)などの疑いがかけられている。徐氏の場合は、脱北する意思を示した北朝鮮船員2人を19年11月に北朝鮮に強制的に送り返した事件で、合同調査を無理やり早期に終了させたとして、やはり同罪などの疑いがあるという。

韓国のスパイの総元締めとも言える国情院長が、司法の手にかかる受難はこれで6代続けてということになった。国情院の内部では動揺が広がっている。

李丙琪元駐日大使ら、文政権下で逮捕された3人に対しても、国情院の関係者らからしきりに同情する声が上がっていた。3人が問われた罪は特定犯罪加重処罰法(国庫損失)違反で、国情院が、使い道を明らかにする必要がない特別活動費を流用する形で大統領府に送金したことが違法だと認定された。国情院の元幹部は「昔からの慣行。拒否した国情院長は誰もいなかった」と語る。韓国検察は当時、贈賄罪の適用を考えたが、国情院長たちが個人の利益を考えたわけではなかったため、同罪の適用を断念したほどだった。

今回の2人については、朴智元氏が政治家だったこともあり、「情報を政治的に利用するのではないか」という疑問の声は国情院OBのなかからも上がっていた。ただ、今回深刻だと言えるのは、「国情院による告発」というスタイルを取ったところにある。別の元幹部は「いわば、後輩が先輩を訴えたことになる」と話す。国情院自身がそれほど強烈な改革意思を持っていたからなのか、それとも後日、この処分が問題になったときに「大統領の指示でやったわけではありません」と釈明するためなのかは、まだわからない。元幹部は「こんなパターンが続いたら、組織がガタガタになる」と心配する。

そして、もっと深刻なのは、国情院が1級公務員の27人全員に待機命令を出したことにあるという。韓国の1級公務員は、公務員が自らの努力で這い上がることのできる最高職で、100人のうち1人がなれるかどうかというポストだ。時々の政権が任命する国情院長とは性格が異なる。元幹部は「政権交代で1級公務員が異動することは珍しくはないが、全員に待機命令を出すなど、前代未聞だ。なかには政治色の強い人間もいるかもしれない。でも、大部分は情報のプロフェッショナルとして、一生懸命生きてきた人たちだ」と話す。

文=牧野愛博

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