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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

井上慎一 全日本空輸代表取締役社長

「慌ててはいなかったですよ。ANAの力を発揮すれば、逆にチャンスになると考えていたくらいです」

ピーチを国内3位の航空会社に育てた井上慎一が、古巣のANA専務に復帰したのは2020年4月だ。折しも緊急事態宣言が発令されて人の流れが止まった時期。錦を飾るのにふさわしいタイミングとは言えなかったが、本人はむしろ好機ととらえていた。

この逆風をチャンスと呼ぶのは、強がりに聞こえなくもない。しかし、井上は「ウソじゃないですよ」と笑って理由を説明してくれた。

営業部門で管理職をしていた2000年代前半、ANAはふたつの危機を経験した。2001年米国同時多発テロ、2003年SARS流行だ。

「国際線は大打撃を受け、北京線はお客様が3人という日もありました。しかし、諸先輩方は決して下を向かなかった。結果的に2005年3月期に国際線黒字化を果たして、無配から復配へ。長年の宿願を、危機を経て達成したのです。まさにピンチはチャンス。その経験があったから、今回もやればできると信じて疑っていませんでした」

とはいえ、マインドを強くもつだけでは危機をチャンスに変えることはできない。ANAはコロナ禍以降、ふたつのチャレンジをした。まずは従来のサービスモデルを見直して、非航空で収益の柱をつくること。そしてコストマネジメントで損益分岐点を下げ、収益力を高めること。特に後者の貢献があり、2022年3月期第3四半期(10月〜12月)は8四半期ぶりに営業利益が黒字化した。

今年4月、井上はANAの代表取締役社長に就任した。こだわるのは、やはりマインドの強さだ。

「この2年で設計図ができ、稼ぐ力も増しました。準備は整っています。あとはANAのDNAを発揮できるかどうか。ドラッカーはCulture eats strategy for breakfast、つまり企業文化は戦略に勝ると指摘しました。先輩たちもやれたのだから、みんなも顔を上げようと伝えていくつもりです」

文=村上 敬 写真=苅部太郎

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