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冨田:とても大事です。日本社会の場合、特に教育システムが意欲的な人の“邪魔”をしていますよ。「嫌いな苦手科目から克服しろ」とかね。IABでは高校生をたくさん受け入れ、自由研究をさせてあげています。ただし、条件が一つだけあります。それは、「受験勉強禁止」です。「受験勉強はしない。そして、研究成果をアピールすることによってアドミッションズ・オフィス(AO)入試、または自己推薦入試で第1志望から第4志望まで受けてください」という条件で、高校生を受け入れています。その点だけは、私は絶対に譲れないのです。

別に、一般入試を否定しているわけではありません。日本人の8割ぐらいが、文部科学省が用意した教科書を勉強して大学入学共通テストで良い点を取って大学に進学する、という道も私はアリだと思っています。ただ、そうした試験や受験勉強が苦手で嫌いなのだけど、得意なことをさせると活き活きと熱中するタイプの子もクラスに何割かいますよね? そうした生徒は、自由研究であっても芸術であってもスポーツであっても、せっかく熱中して打ち込んでいることがあるのに、高校2年の終わりぐらいになると、「そろそろ受験勉強しなさい」と言われ、その子にとっては苦痛な受験勉強を1年間も疲弊しながらやることになります。

ところが、試験のために勉強したことは身に付きません。試験が終わったら忘れてしまう。多くの大学では1〜2年が必修科目なので、最初の2年間はまだ試験勉強なのです。だから日本の大人に聞けばわかりますが、学生時代の勉強で覚えていることや身についたことがあるかといったら、ほとんどはきれいさっぱり忘れている。唯一残っているものは、モチベーションをもって一生懸命に取り組んだ授業と、あとは面白い先生の講義、この2つぐらい。テストのためにイヤイヤ勉強することがいかに非効率なことか。得意なことで突き抜けて日本の宝になるかもしれない子供たちの足を、周りの大人が寄ってたかって引っ張って凡人にしてしまっている可能性があります。

一人でも多くそうした生徒を救出しなくてはいけないので、バイオ好きな子は鶴岡市内すべての高校からIABに受け入れ、自由研究を支援しています。

:市内すべての高校ということは、いわゆる偏差値や、学力は関係なく、さまざまなバックグラウンドからということですね?

冨田:その通りです。IABの隣には山形県立鶴岡中央高等学校があり、いちばん最初に提携しました。同校には普通科と総合学科があり、普通科は大学進学を目指し、総合学科は多くが就職します。総合学科は、情報ビジネス系列、美術・デザイン系列、家政科学系列、社会福祉系列から構成されていて、例えば、家政科学系列では被服や食物、保育について学びます。生徒は、自分で専攻を選んでいるから、本当に楽しそうなんですよね。

これは3年次で取り組む「総合的な学習の時間(課題研究)」の一環だと思いますが、「鶴岡シルクガールズ・コレクション」と称して、鶴岡シルクで作ったドレスのファッション・ショーまで開いています。それも、毎年開催しているんですよ。すごく楽しそうな姿を見ると、こういう生徒たちにこそAO入試を受けてほしいと思わずにいられません。

5教科7科目でのテストの点数が得意でないとしても、面白いアイデアを形にした生徒はAO入試を受験してほしいです。そういう意味では、鶴岡中央高校からAO入試で「スター」を出すことが、ゲームチェンジャーになるのでは、と期待しています。地元の高校の卒業生が好きなことや得意分野で大学に進学し、培ったスキルセットや習得した知識を武器に、地元の会社に就職する━━。そうした「エコシステム」が回り始めることを目指しています。

インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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