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:この概念を作った人はサラス・サラスバシーというインド人の経営学者です。これが面白いことに、冨田さんも師事された、ノーベル経済学賞受賞者で米カーネギーメロン大学のハーバード・サイモン教授の最後の弟子なんです。ハーバード・サイモン教授の晩年に、弟子入りして最後の博士号を取得した学生だそうです。

冨田:そうなんだ、じゃあ私の後輩じゃないですか!

:これは偶然でしょうか。冨田さんをモデルにしたのでは、と思うほどそのままなので面白いなと思いました。冨田さんからみたら、広い意味で兄弟弟子にあたる方なんですよ。実際、サイモンの理論を発展させた面もあるようです。

冨田:この2つの原則は、私も本当にドキッとするくらい当てはまりますね。1つ目の「新しい方法ではなく、既存の手段を組み合わせる」という原則は、ある意味当然だと思います。新しい手段で新しいことに挑戦なんてできませんから。仮に分野を変えた場合でも、今もっているスキルや手法をフルに活用して新しいことに挑戦します。それは正しいというか、コンピュータ・サイエンスからバイオロジーに移行したときもそうでした。2つ目の「損失が出ても致命的にはならない許容範囲のリスクをあらかじめ設定する」というのも、非常に興味深いですね。これは、私がいつも学生にも話していることなんですよ。

よく世の中には「退路を断って」自分を追い込む人いるでしょう。これがうまくいかなかったらもう大変なことになってしまう、という状況にして、わざわざ自分を追い込むことによって力が出るとか。言い換えると、自分を追い込まないと力が出ないということ。でも、それは“邪道”で、二流の人が一流を目指す方法だと私は思います。

一流の人が超一流になるときには、そんな方法は使いません。なぜなら、選択肢は多い方が良いに決まっているからです。臨機応変に、ダメだったら別の選択肢をすぐに選べるよう、選択肢は少しでも多く持っていたほうがいい。「これだ!」と決めたら意地でも変えない、という人は選択肢がいらないのかもしれないけれど、やはり柔軟に、データを見て「あれっ?」と思ったら最初の戦略を変える。ゴールポストそのものを動かすこともアリなんです。

平均台の上で宙返りをするとき、絶対に失敗できないよう、平均台の下に画鋲を敷き詰めて落ちたらアウト、という状況にして自分を追い詰めることは、本当に二流だと思います。私なら逆に落ちても痛くないように、ふかふかのマットを敷いておきますよ(笑)。そのほうが、思い切ってできるじゃないですか。しかも、成功率が上がると思います。仮に最悪のことが起きた場合でも「まあ、何とかなるか」と覚悟できるようでなければ、思い切り実力は発揮できないと思います。

インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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