勝ち残る企業になるためのDX処方箋

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先日、ある上場企業経営者グループにESG経営の必要性やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要性について話す機会があった。

感想として聞こえてきたのは、非常に切実な声であった。

「うちもDXはやらないといけないと思っているが、ESG経営はどうなんだろう? ロシアウクライナ紛争でエネルギー価格は早くも高騰し始めている。電気料金、物流コストが連動して上がっているほか、円安傾向で原料コストも上がり経営を直撃している。こんな時にSDGsやESGと綺麗事を言っている余裕が本当にあるのか?」

「DXのようにコストをかけてでもやらないと生産性向上や競争力アップに繋がるものはやらざるを得ない。でもそうなるとESG経営の優先順位は上げられない。『なんちゃってESG経営』で格好がつくような良い方法はないか? 経営者にとって今後のマクロ経済の不安定さを考えると、目先の利益を少しでも確保することが大事なのでは」

実はこうした反応は日に日に増えている。特に地方の非上場企業の経営者になると、「頭ではわかっているが、正直やっていられない」が大半である。

今回は「コロナ禍」「ロシアウクライナ紛争」の余波としてのESG経営のあり方について考察をしてみたい。

ESGは世界的に一時棚上げ?


エネルギー天然資源国であるロシアとウクライナが紛争の当事国になってしまい、産油国の増産動向もあいまって、短期的には各国とも化石燃料の確保に躍起になっている。

実際、一年前に1バレル60ドル付近だった原油価格が最近は100ドル近辺まで上昇。ESGファンドと呼ばれる投資信託商品も総資産額は減少傾向にあり、基準価格の切り下げも度々発生している。

こうした状況下、ESG経営の最大の眼目であった「脱炭素」「脱化石燃料」という項目からはやや関心が薄れている。

では、ESGは世界的に一時棚上げなのか?

この問いに答えを出すのはまだまだ難しい。しかし、ここでは昨今の国と金融機関、そして諸外国の動きから、あえて「No」と言っておきたい。

その理由はまず第一に、「ESGスコアを上げることは企業にとってもはや“必達事項”だからである。まだSDGsとESGの区別が明確でない経営者も少なくないが、SDGsは2030年までに持続可能な社会を創るための人類共通の努力目標として制定された。

一方でESGは企業が果たすべき責任としてはマストであり、その厳しさは大きく異なる。ESGスコアアップへの努力が見られない企業は投資家から見放され、金融機関から融資条件の見直しにあうケースもあるほど看過できないものになっている。

第二の理由には、次のような金融業界のスタンスが挙げられる。

「ロシアウクライナ紛争は化石燃料へ依存することのリスクを浮き彫りにした。中長期的には脱化石燃料に向けた取り組み、再エネを含むエネルギー自給に向けた取り組みを強化することが必要」

この姿勢を象徴するのは、6月8日にみずほ銀行が「インパクト志向金融宣言」に署名したことだ。これはメガバンクをはじめ、国内の各種金融・投資機関35社余りが参加しており、投融資先企業の環境・社会問題解決の動きを金融側からインパクト投資の観点で支援していこうというものだ。

文=INDUSTRIAL-X 編集=露原直人

日本経済DX
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