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アクリスジャパン 代表取締役社長 井野智恵子

ミシェル・オバマやカマラ・ハリス、またアンジェリーナ・ジョリーなど、エグゼクティブな女性たちに支持されているファッションブランド、それがAKRIS(アクリス)だ。「上質な素材と着心地の良さ、体形を美しく包むパターンが長く愛される理由のひとつです」と、アクリスジャパン 井野智恵子代表取締役社長は語る。今年6月、銀座中央通りにオープンしたばかりの「AKRIS 銀座」で話を伺った。


女性の社会進出にともないファッションも変化


──AKRISはスイス、ザンクト・ガレン発祥の女性ファッションブランドですね。井野さんは長きに渡って代表取締役社長を務めていらっしゃいます。

もう16年目を迎えました。私は必ずしも経営者を目指してきたわけではないのです。最初にオファーをいただいたとき、当時40代の未熟者には荷が重いと考え、一度はお断りしたんですよ。でも面接だけでも、と言っていただき、本国(スイス)のオーナーとデザイナー(ともに創業者一族)にお会いしたところ、彼らの人間性のすばらしさに魅了されて……一歩を踏み出す決意をしました。ビジネスは“人”で成り立っており、彼らが上司であれば、大きな試練も乗り越えられるのではないかと考えることができたからです。

──AKRISというブランド自体にも魅了されたのでしょうか?

その通りです。パリでオーナーのインタビューを受ける前に、ミステリーショッパー(覆面)としてほぼ全店を回ったところ、ほどよいトレンド感、ショップの雰囲気、VMDや接客のクオリティの高さに将来性を感じました。何より、私自身が、着てみたいと思うような服が店頭に並んでおり、その時点でアイデアがたくさん浮かんできたのです。これなら、私にもお手伝いできることがあるのではないか、と。

そして、家族や友人など周囲の人々の声も背中を押してくれました。賛成派と反対派に分かれましたが、決め手となったのは、とある先輩の「誰にでもくるお話ではないし、トップのポジションにならなければわからない事もある」というアドバイス。気持ちが固まるまで、ほぼ半年かかりましたが、最後は「やらずに後悔するより、やって後悔したい」という私の信念も顔を出し、お受けすることにいたしました。

──井野さんはずっとファッション畑でキャリアを積み重ねていらしたのでしょうか?

勤めた会社はすべて外資系企業ですが、私のキャリア前半はビューティ(メークアップ、フレグランス、スキンケア)業界、後半がファッション業界です。なかでもディオ―ルやシャネルはビューティ、ファッション以外にジュエリー、ウォッチも有する総合ブランド。当時から日本市場への期待は大きく、日本からの発案が活かされる時代背景もあり、次々と大きなチャレンジをすることができました。

──時代は80年代から2000年代へ。女性の社会進出も大きく進んだ時代ですね。

私が初めて仕事に就いたころは、まだまだ男性優勢の社会。男性の社長や部長たちがタバコをくゆらせるため、煙で真っ白になった会議室で書類を用意し、お茶を出していた光景が思い出されます。女性=お茶を淹れる、コピーをとる……まさに昭和(笑)。いま思えばマンガのようですが、本当にそういう時代でした。

当時の大手日本企業に勤める女性は制服着用でした。私はファッションブランドに勤めておりましたので、そのブランドのものであれば、ジャケットでもブラウスでもOKでしたが、足元は“パンプス”マスト。ピンヒールを履いて、何度も靴擦れしました(笑)。また、結婚や出産を機に退職される女性が多かったように記憶しています。残業も当たり前でしたし、業務に忙殺されるような会社では、育児と仕事の両立も難しかったことでしょう。

そのころと比較すると、職場環境は激変していますね。個人の権利がリスペクトされ、能力主義、かつ、ハラスメントへの啓蒙もあり、他者への配慮も優先されています。フレックス制度も導入され、ライフスタイルにあわせたワークバランスが重視されています。そしてこのコロナ禍により、リモートワークが主流となったのも大きな変化と言えますね。



シーンに合わせて着こなせるAKRISのマジック


──本当にこの数十年で女性のライフスタイルも大きく変わりました。朝、子どもを幼稚園に送った母親が、オフィスに出勤してビジネスウーマンとなり、夜はパーティや会食に出席する、とか。1日のなかでもさまざまなシーンがあり、いくつもの顔を使い分けているような気分になります(笑)。

まさに、そのポイントでAKRISの魅力が発揮されるのです(笑)。AKRISのクリエイティブ ディレクターであるアルベルト・クリームラーが提案するスタイルには、忙しい現代の女性のワードローブを簡素化することを念頭におき、多様性を重視した商品が多く存在します。

たとえば、胸元のファスナーを開閉することで、肌の露出に変化をつける事ができ、着替えなくてもそのままカクテルパーティに対応できるドレス。デイタイムはジレとして使え、イブニングはファスナーを閉じてドレスになるような一着。ホックで長さを調節することで、ロング丈をミドル丈にし、雨にも対応できるようなコート。1着のコートがファスナーをはずすことで、2着のコートに様変わりし、春から冬にかけて長く着用できる一着など……まさに魔法のよう。

また、アルベルト・クリームラーの偉大な点は、上質な素材を吟味することで、カジュアルなスタイルをフォーマルに、そしてその逆も可能にしたこと。たとえば今季の提案では、一般的にはカジュアルと考えられているデニム素材で、女子会やお出かけの席でも十分に対応できるドレスを作っています。あるいはシルク素材で、透け感のあるカジュアルなブルゾンや、ふんわり広がるチュールスカートなど。素材にかかわらず、さまざまなシーンに対応できるので、まさに忙しい現代の女性に向けたファッションです。



──今日お召しのセットアップもとても華やかですが品があって、ビジネスからカクテルまで多彩なTPOで着こなせそうですね。

スイスの1883年当時の地図をプリントしたセットアップですが、このトップスはコットン100%。つまりTシャツなんです。でもいわゆるカジュアルなTシャツと一線を画しているのは、やはり素材のすばらしさゆえ。そしてこの地図の中に、現オフィスの場所がマークされ、デザイナーの遊び心も加わっています。これも、毎シーズン、素材の開発から製品化、販売まですべて一気通貫で行うAKRISだから実現できるクオリティだと思います。

──AKRIS はたとえばミシェル・オバマ、カマラ・ハリス、クリスティーヌ・ラガルド、アマル・クルーニー、アンジェリーナ・ジョリーなどなど……世界の第一線で活躍する女性たちからの支持が篤いブランドですが、その理由はなんだと思われますか。

創業以来一貫して、女性の個性を引き立てるモノづくりに心を砕いてきたことが一番の理由だと思います。AKRISは、1922年に起業家精神にあふれた女性、アリス・クリームラー=ショッホが1台の家庭用ミシンで、地元の女性たちのためにエプロンを縫い始めたことが始まりです。当時、バリエーションの少なかったエプロンに着目し、女性のお洒落の幅を広げ、また縫子達の雇用を確保するなど、当時としては先駆的な女性経営者でした。3代目の現クリエイティブ ディレクター、アルベルト・クリームラーにブランドの権限が委譲されても、ブランド創業のフィロソフィーを大切に受け継ぎ、一貫して、Women with Purpose(自立した女性)のためのモノづくりに注力しています。

猛暑の日本から生まれたハイサマーコレクション


──女性ファッションブランドであっても女性が代表取締役を務めるのはまだ少数派だと感じます。井野さんが指揮をとるアクリスジャパンにあって、女性目線から生まれた施策はありますか?

そうですね、ではふたつほどご披露させてください(笑)。まずひとつは2009年から導入した、当社独自、業界初のフィッティングコンシェルジュ®制度。これは日本独自の新しい社内資格で、この資格を取得したショップスタッフはお客さまに対して美しく見える着こなしをアドバイスするだけではなく、丁寧なカウンセリングと採寸で身体によりフィットする仕上がりをご提供できるというサービスです。AKRISの商品はクオリティにともない高価なものですので、一度お買い上げいただいた洋服が体形の変化にともない着られなくなってはもったいないですから。長くご愛用いただけるという意味でもこのサービスは重要。いま、全ショップスタッフの60%がこの資格を保有していますが、100%にしていかねばなりません。

もうひとつは、日本社からのアイデアで実現した“ハイサマーコレクション”です。これは日本特有の高温多湿という気候にあわせて、糸やファブリックの開発からスタートしたコットンやリネンを中心に展開された日本限定のコレクションでしたが、のちにグローバルで展開するコレクションとなり、現在も継続して売り上げ拡大に貢献しています。これはAKIRISが直営の工場をもち、リテール部門と卸部門まで垂直統合という生産体制をとっているため、フレキシブルな対応が可能なことから実現できること。品質を重視しつつ、日本市場の特性やニーズを取り入れてくれた一例です。

──井野さんご自身はどのような観点から日々の装いを決めていらっしゃるのですか。

コーディネートでいつも気にかけているのは、色や柄などの組み合わせだけでなく、素材がもつその質感をどう組み合わせるのか、ということ。着用する場、季節、目的を思い浮かべて、ワードローブから組み合わせを考えます。お会いする相手の方がどんな方か、男性か、女性か、仕事関係か、友人か、家族なのか。着用シーンが、フォーマルか、あるいは少しリラックスできる環境か、デイタイムか、イブニングか?現代の忙しい女性をとりまくTPOは本当に多彩ですね。悩んだときに思い出すのはこのふたつの言葉です。

「流行は時代遅れになるもの、スタイルは永遠」(ココ・シャネル)
「ファッションは着る人を引き立てるべきもの」(アルベルト・クリームラー)



──今年は新旗艦店となる「アクリス銀座」がオープンしました。ここに込めた想い、また期待されることをお教えください。

AKRISに入社した2007年当時、私へのファーストミッションは銀座に路面店を出店することでした。そのミッションは2011年に晴海通りにて達成したのですが、残念ながら、契約満了により閉店しました。今回の出店は、重要拠点である日本市場への期待を込めて、本社が投資許可をしたものです。課題であるブランドの認知、そして顧客年齢層の拡大のために、アパレルのみならずバッグなどのレザーグッズやアクセサリーの売り上げ拡大が主な目標です。





──女性にとってバッグはファッションやステイタスなど多くを物語る最重要アイテムですよね。では井野さんのバッグと、その中身を拝見させていただけますか(笑)。

え、本当にご覧になるのですね(笑)。愛用しているのはAKRISのシグネチャーマテリアルであるホースヘア(馬毛)素材のカードケースやウォレット。こちらのマスクは2020年コロナが蔓延し始めた当初、お客様と社員のために、スイス本社がいち早く用意をしてくださったものです。

──大変お忙しい日々をお過ごしだと思いますが、オンとオフの切り替えはどのようになさっているのですか?

静と動のメリハリをつけること、でしょうか。私は身体を動かすのが好きなので、ヨガやジムに出かけることをルーティンにしています。ゴルフも趣味。最近ではジャズボーカルのレッスンも受けています。また、夫と愛犬(ポメラニアンとチワワにミックス犬)との暮らしも大切にし、まとまった休みが取れれば旅に出かけています。

──Forbes JAPAN SALON に期待することとはなんでしょうか?

やはり会員の皆様との交流と、そのネットワークからアイデアが生まれてくることでしょうか。Woman with Purpose(自立した女性)のみなさまへ、AKRISをご紹介したいです。私自身、あるいは会社として、どんな貢献ができるのかわかりませんが、何かしらお役に立てることがあればうれしいです。


いの・ちえこ◎アクリスジャパン 代表取締役。イヴ・サンローラン、クリスチャン・ディオール、ジョンソン・エンド・ジョンソン、シャネルのいずれもマーケティング部門で経験を積み、2007年より現職。

Promoted by Forbes JAPAN SALON / interview & text by Miyako Akiyama / photographs by Kenta Yoshizawa

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