世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

世界経済のエンジンとなった米カリフォルニア州のテクノロジー企業集積地、通称「シリコンバレー」。その成功により、産学官が連携したハブが世界的に注目を浴び、各国・各都市がそのモデルを模倣しようとしている。

日本において、グローバルな世界と連携する「スタートアップ・エコシステム(生態系)」は育成できるのだろうか。早稲田大学ビジネススクール(WBS)の牧兼充 准教授が、エコシステムを形成する関係者へのインタビューを通じてその課題と可能性を探る。

今回のゲストは、慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)の冨田勝所長。システム生物学の教授でもある冨田は42歳だった2001年、山形県・鶴岡市に文字どおりゼロからIABを創設。「Data Driven Biology(データ・ドリブン・バイオロジー)」を旗印に、大腸菌のゲノム解析や、メタボローム(代謝物の総体)など、コンピュータ・サイエンスとバイオロジー(生物学)をベースとした研究で世界をリードしてきた。

それから20年余──。IABは、人工クモ糸繊維などの新世代バイオ素材開発「Spiber(スパイバー)」、メタボローム解析企業「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)」、唾液によるがんリスク検査「Saliva Tech(サリバテック)」といったバイオテクノロジー企業のほか、「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイホテル スイデンテラス)」を建設・運営する街づくり企業「ヤマガタデザイン」などを輩出。

冨田は、IABのスタッフや学生と共に、日本を代表するスタートアップ・エコシステムを作り上げてきた。

米カーネギーメロン大学でコンピュータ・サイエンスを研究してきた日本を代表する“スターサイエンティスト”の冨田は、いかにして自分自身も起業家になり、起業家を育成するようになったのか。その背景と、思考の源泉について明かした。


牧 兼充(以下、牧):冨田さんは「サイエンティスト(科学者)」という職業と役割にこだわりをもっていらっしゃって、それがとても良いなと思っています。冨田さんにとってサイエンティストと研究者の違いとはどういったものでしょうか。そして、サイエンティストという職業・役割に対してどういった思いをもっていらっしゃるのでしょうか?

冨田 勝(以下、冨田):「研究者」とは研究をする人ですよね。一方、サイエンティストつまり科学者は「研究者」でもありますが、同時に「教育者」であり、「解説者」であり、「経営者」でもあってほしい。「4K」ですね(笑)。教育者というのは学校の先生という意味だけではなく、ラボの後輩を育てるといった人材育成も含めます。解説者とは一般向けに講演をしたり市民講座を開いたり、本を書いたり、テレビで解説したりすることです。

そして経営者というのは会社経営に限らず、ラボの業務を回していったり、大人数のチームメンバーをまとめていったり、励ましたり、助言したりもする。これが僕の考える経営です。ちょっとよくばりかもしれませんが、私が指導する後輩や学生たちには、この4つすべてをやってほしいと思っています。

インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

バイオテック

PICK UP

あなたにおすすめ