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朝日新聞外交専門記者

尹錫悦大統領(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

韓国大法院(最高裁)が2018年秋に日本企業に損害賠償を命じた徴用工訴訟問題を巡り、韓国・ソウル新聞は20日、問題解決を目指す官民合同の協議体が今月末にも発足すると伝えた。同紙は「日本政府が最も敏感に反応する、日本企業の資産売却を通じた現金化手続き防ぐ作業に乗り出した」と説明した。韓国外交省は同日、この報道について「記事内容について言及することはない。我が政府は強制徴用問題に関連した韓日両国の共通利益に一致する合理的な解決案を模索するために努力していく」という内容の記者説明を行った。

関係筋によれば、この動きは事実だという。徴用工訴訟では昨年、韓国地裁が三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)の韓国内資産の売却を命じており、現金化の作業が最終段階に進んでいる。果たして、この動きは問題解決につながるのだろうか。関係者の話をまとめると、大きな前進には違いないが、この先、まだまだ難しい問題が待ち受けている。

「大きな前進」としたのは、韓国政府が問題解決に向けて動き出したからだ。今年5月までの文在寅政権時代は「三権分立で、政府は司法に介入できない」「被害者に寄り添った政治が必要だ」などと主張していた。韓国大統領府や外交省がまったく努力しなかったわけではない。当局者の1人によれば、文在寅政権当時も政府関係者が原告団と接触し、問題解決の道を探ろうとしていた。この当局者は「文在寅は決して日本が嫌いだったわけではない。ただ、青瓦台(当時の大統領府)には色々な立場の人がいた」と言葉を濁した。大統領府や外交省には当時、強硬な反日主義者がいたのも事実で、こうした足並みの乱れが、韓国政府としての問題解決の動きを止めていた。

韓国政府の元高官も「文政権は問題解決の動きに耳を貸さなかった。尹錫悦政権が問題解決の動きを始めたことには大きな意味がある」と評価する。おそらく、今後は、韓国政府が日本企業に代わって原告団に賠償金を支払う「代位弁済」を軸に話が進むだろう。

文=牧野愛博

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