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文教堂グループホールディングス代表取締役社長 佐藤協治

「ここ2年の黒字は、コロナ禍の巣ごもり需要や『鬼滅の刃』ブームによる奇跡的なもの。計画通りに事業を再生できるかどうかは、これからが正念場です」

債務超過に陥っていた文教堂グループホールディングスが事業再生ADRを申請したのは2019年6月。再生計画2年目の2020年8月期にさっそく黒字化したが、同社を率いる佐藤協治の表情は険しいままだった。

このままでは会社が潰れる──。

佐藤が自社の窮状を知ったのは、財務担当役員になった2017年秋だ。以前から経営がうまくいっていないことは知っていた。2013年8月期から1年を除いて赤字続きだった。それでも店舗開発で書店づくりの最前線にいた佐藤は、「親会社が大日本印刷。いざとなったら支援してくれる」と危機感が薄かった。

雲行きが怪しくなったのは、筆頭株主が日本出版販売(日販)に代わってからだ。日販は文教堂の経営にコミットするつもりはなく、それを知った銀行も距離を取り始めた。前任の財務担当役員が入院して佐藤に白羽の矢が立ったのは、そうしたタイミングだった。

「最初は現金の動かし方も知らない素人。しかし、勉強して銀行さんと話すうちに、これは待ったなしだとわかりました」

2018年に債務超過になり、翌年、事業再生ADRへ。役員のひとりとして経営責任を取って退職するつもりだったが、日販や銀行との話し合いで再生の指揮を執ることになった。

まず手をつけたのは、店舗内の整理整頓という基本的なことだった。

今までの文教堂は、大量に納入して売れ残れば返品する方針。積み重なった在庫は経営を圧迫するだけでなく、バックヤードに収まりきらない段ボールが店頭にはみ出して客を遠ざける一因になっていた。佐藤は再生の第一歩として、何百トンにのぼるゴミを処分した。

組織面ではエリアマネジャー制度を導入した。それまでは本部からの指示が一方的に店舗に出るだけ。現場の声を吸い上げる仕組みはなく、各店長もその状況に慣れて指示待ちになっていた。新たに中間管理職を置くことで、ボトムアップで提案ができる環境を整えた。

身を切る改革もしている。不採算店を中心に3年半で約4割を閉鎖・売却。賃金体系にもメスを入れて、給与を業界平均並みに下げた。

「脱落した社員も出ましたよ。ただ、『ようやく普通の会社らしくなる』と残った社員も多かった。半年ほどすると空気が変わって、現場から提案が上がるようになりました」

文=村上 敬 写真=苅部太郎

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