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Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2021 企業部門 「従業員規模別 300名以上1,000名未満の部」において第3位に入賞した、コクー株式会社。「デジタルの力でダイバーシティ&インクルージョンがあたりまえの社会を創る」というパーパスを掲げ、社会課題解決に取り組んでいます。今回は、代表取締役社長の入江雄介氏にお話をうかがいました。


多くの選択肢があることが、イキイキとした社会につながる



コクー株式会社 コーポレートサイトより

━━コクー様では、ダイバーシティー&インクルージョンの”ステップ1″として、「女性がイキイキと働き、活躍している社会を創る」をビジョンに掲げていますが、女性活躍推進に取り組む意義を教えていただけますか?

背景には「EXCEL女子」の事業があります。こちらは「ITエンジニアほどとは言わないけど、一般事務よりはもう少しITスキルがある人材がほしい」というお客様の声からスタートしました。

「ITに強い事務」というニーズを探るために、都内の412社を対象にアンケート調査をすると、66.5%の企業がExcelスキルを求めていることがわかりました。さらに働く女性200人にもアンケートを取ったところ、「手に職をつけてイキイキと働きたい」という声が8割もあり、企業にも個人にも強いニーズがあると確信したのです。そこから当社独自の研修プログラムを作り、スキルアップしたい女性をIT人材として育成し、「EXCEL女子」のサービスを開始しました。これが2013年の12月です。

ちょうどその頃は、安倍政権が「女性活躍推進」を最重要施策の一つとして掲げ、「すべての女性が輝く社会づくり」を唱え始めた時期です。今となっては当たり前かもしれませんが、当時はまだ目新しさがありました。自分たちのサービスは社会にとって必要な事業だ!と気合が入りましたね。

その後、Excelだけではなく「VBA女子」「BI女子」「RPA女子」「デジマ女子」「インフラ女子」を展開。スキルアップしたい女性たちと企業の架け橋となるようなサービスを目指し、非デジタル人材を未経験採用して、デジタル人材に育成していきました。サービスの成長と共に女性社員が増え、ライフステージも多様になっていく中で、多くの選択肢があること、そしてそれを自分で選んで自信を持って働けることこそが、イキイキとした社会につながるのではと考えたのです。

女性はよく「自己肯定感が低い」と言われることがありますが、当社の女性メンバーを見ていると、仕事に対する責任感の強さや「やりきる力」の凄さを感じるんです。だから私たちは「ジェンダーギャップの問題を解決するため」というより、「優秀な女性たちがもっとイキイキと活躍するためにはどうしたらよいか」という姿勢で取り組んでいるのです。

━━確かなニーズをもとにスタートされたサービスですが、手ごたえはいかがでしたか?

まず企業サイドで言うと、非常に感謝されることが多く、ニーズは今後さらに高まっていくと感じています。DXが叫ばれる中で、SaaSツールが次々と登場していますよね。これらは導入ハードルが低いので一気に広がるのですが、機能がどんどん進化して使いこなせないというケースもよくあります。そのギャップをちょうどよく埋めることができるのが、VBAを駆使できる「EXCEL女子」だったり、マーケティングツールを使いこなせる「デジマ女子」だったりするのです。

働く女性たちも、未経験からスキルを身につけてデジタル人材に成長し、お客様の企業のデジタル化を進めるという経験を通して、市場価値がグンと上がります。だから週3勤務でも十分に稼げたりとか、スキルの掛け算で違う領域に挑戦したりとか、新しい働き方の形がどんどん生まれています。

昇進のあり方は人それぞれ。管理職も多様性を大事に




━━事業の成長と女性の活躍推進がリンクしていて素晴らしいですね。社員の働く環境にも工夫されていると聞いていますが。

「ままさぽ」という、ママ・パパ社員が仕事と子育ての両立を図るために制度・環境整備に取り組むプロジェクトがあります。

「ままさぽ」の始まりは6,7名の有志チームで、女性社員が安心して産休・育休をとり、復帰する環境や制度を整えていきました。子の看護休暇や産前休暇の前倒し、育休者のウェルカムバックのイベントなどが特徴的ですね。コクーは女性社員の育休復帰率は100%なのですが、その裏には育休中も会社とつながりが持てるように2か月に1度は本部長も交えてランチをしたり、LINE WORKSで育休中のメンバーのグループを作って、毎月会社の状況を伝えたり、メンバー同士で交流をしています。交流が復職後も続くようにと「パパママサークル」も立ち上がり、社内の育児中の社員が繋がっていく…といったさまざまな工夫があります。

ママ社員へのサポートはだいぶ充実してきたので、今はパパ社員向けのサポートに力を入れています。若いパパ社員はほぼ育休を取得していますし、2か月育休を取得したメンバーもいます。誰かが取得すると、次の人も取得しやすくなり、あっという間に当たり前のカルチャーになるんですよね。会社オリジナルの「男性版 育休・看護休暇ガイドブック」も用意していて、非常に好評です。

━━昨年、「女性活躍推進委員会」を設置されていますね。どんな取り組みをしているのでしょうか?

コクーには「働きかた改革委員会」や「人財育成委員会」など、全部で7つの委員会があります。その中の1つが「女性活躍推進委員会」です。

メンバー全員が女性で、偏りのないように各事業部から1名ずつ入れて、すべて権限移譲しています。役員のおじさんたちは一切入れません(笑)。子育て中の方だけでなく、すべての女性がイキイキと働くにはどうしたらよいのかを考えてもらっています。3年後のゴールを「働きがいに関するランキングの女性部門で1位を取ること」に設定し、その達成に向けてまず社内アンケートで実態を洗い出したり、人事制度や仕組みをブラッシュアップしたりしています。

━━ゴールを明確に設定しているのですね。具体的にどのような課題が見えてきましたか?

細かいところはまだまだこれからですが、明らかに取り組みの必要性を感じていることは、女性管理職・女性役員の輩出です。これはよく自虐的に話すことなのですが、400人ほどの社員がいて、うち77%が女性なのに、役員4人が全員おじさんなんですよ(笑)。これがすごくイマイチだなと。今後さらに会社の規模が大きくなると、女性比率が9割になると試算しています。それなのにまだ役員が全員男性だったら、多様性が全くないですよね。だからせめて役員の半分は女性にしたいと考えています。女性管理職比率も今50%弱まで来ていますが、もっと上を目指していきたいですね。

━━管理職育成については、どんな取り組みをされていますか?

今年の5月から、キャリア支援のプロフェッショナルである森本千賀子さんに社外取締役として参画いただいています。様々なキャリアの相談を受けてこられた“もりちさん”だからこその視点でアドバイスをいただき、自社の社員のロールモデルにもなっていただきたいなという思いがあります。

また、コクーは一人ひとりが当事者意識を持つための「アメーバ組織」という仕組みがあります。組織をできるだけ細かく分割し、5〜10名程度の小規模なチームで仕事を進めています。各アメーバにはそれぞれCEOがいて、ビジョンやコンセプトを作るところからチーム運営を任されます。つまり今後社員がどんどん増えれば、アメーバの数も増え、任せられるメンバーも増えていきます。そこから、リーダーやマネージャーといったポジションに積極的に挑戦してもらいたいと思っています。

コクーの管理職は、多様性を大事にしたいと考えています。一度リーダーになったからといって、必ずしもそこから突き抜けていかないといけないかというと、そうではありません。自分のライフスタイルに合わせて柔軟に選択してほしい。例えば、今チームリーダーをやっている方では、「子どもが小学生のうちはチームリーダーのままでステイし、中学生になって余裕が出てきた頃にグループリーダーに挑戦します」というケースもあります。従来の「昇進」の考え方を打ち破って、そういう多様なキャリアパスを用意していくことで、一人ひとりに合った形の活躍を応援していきたいですね。

注目度の高いアワードなので、客観的評価が企業の信頼につながる




━━Forbes JAPAN WOMEN AWARDにエントリーしたきっかけは何でしたか?

女性活躍の推進に取り組んでいる中で、客観的に自社の立ち位置を把握したいなと思ったのがきっかけです。正直なところ、初めてのエントリーで3位入賞は想像以上の嬉しい結果でした。サーベイのフィードバックレポートも詳細で、課題感があったところがそのまま数値として表れている印象でした。

━━受賞後の効果はいかがでしたか?

他にもいくつかアワードに挑戦しているのですが、Forbes JAPAN WOMEN AWARDに関しては、社外からの反応が圧倒的に多かった印象です。注目度の高さを実感しました。

社内にもよい影響がありました。自分たちで考えを巡らせ、コクーの中だけでやっていたさまざまな活動を外から評価していただけると、やはり社員のモチベーションが上がります。3年後の目標に向けたチャレンジが、よりリアルになりましたね。

また採用にも効果があったようで、人事からは「Forbesのアワードで受賞した企業」だと認識した上で応募してくださる方も増えたと聞いています。

さらに今は、ベンチャーキャピタルのESGへの関心が高まっています。女性にフォーカスした事業をやっていく中で、このようなアワードで第3位を受賞しているというファクトが、企業としての信頼性に繋がり、投資家からの見られ方にも変化があるのを感じています。「女性活躍を推進しています!」と主観だけで主張するよりも圧倒的に説得力があるので、助かっています。

強い理念があるからこそ、多種多様なやり方を楽しめる




━━価値観が大きく変化した今の時代において、これから企業は何を考えるべきだと思いますか?

私たちが大切にしていることは「for me, for you」という理念であり、これは昔も今も、これからも変わらないと思います。まずは自分たちがイキイキと働くこと(for me)で、真の顧客満足(for you)につながると考えています。企業成長の一番の源泉はやっぱり人なんですよね。人が一度きりの人生の中で多くの時間をかける「仕事」にどう向き合うか、そしてどうイキイキと成長していけるか。それを突き詰めれば、自然と本質的なダイバーシティ&インクルージョンに辿り着くと思っています。

この先どうなるかわからない時代で、また大きな変化があるかもしれません。だからこそ「何に向かっているのか」を考えることが大事です。理念の大切さは、社長の私だけではなく、他の役員や部長・課長陣など、みんなが発信して浸透させていく必要があると思っています。ちなみに私は毎週月曜日の朝に社内向けブログで発信していて、もう3年になります(笑)。他の役員やマネージャーも持ち回りでやっているのですが、皆それぞれ伝え方・やり方は異なるものの、本質的には同じメッセージになっているんです。それがすごく大事なことだと思っています。

━━トップだけではなく、あらゆるレイヤーの方がさまざまな角度で発信しているのですね。では最後に、今後のチャレンジについてお聞かせください。

会社全体としてはこの3年の中期計画として、IPOとES(従業員満足度)日本一を目指しています。また「人財×デジタル」で日本をさらに元気にするために、新しい事業やサービスづくりにも挑戦したいですね。

新規事業を立ち上げるにあたって、私たちは3つの観点で判断しています。一つ目は、社会的意義があるかどうか。二つ目は、我々の強みが活きるかどうか。そして三つ目は、今いる社員によい影響があるかどうか、です。この観点で今後チャレンジしてみたいと考えていることは、フェムテック領域の事業です。

当社は入社してくださる方のバックグラウンドが多種多様であることが最大の特徴です。今、1か月に1000名以上の応募がありますが、コロナ禍以降に多いのは、航空・ブライダル・飲食・アパレル・エステ等の業種の方々です。バックグラウンドが多様でも、成長したいという思いは同じ。だから当事者意識が強く、主体的に発信してくださる方ばかりなんです。

その方々の多様な業界経験や視点を活かして、フェムテック領域でアイデアを出し合いながら「女性ならではの問題」に向き合ったら、また新たな形で社会課題の解決ができるんじゃないか…。そんなことを、まだ漠然とですが考えていますね。

━━今後が楽しみですね。多種多様なバックグラウンドの方々がひとつになれるのも、強い理念があるからこそですね。

そうですね。結局、理念に共感して正しいゴールに向かってさえいれば、やり方は「アメーバ」ごとに多種多様でよいと思っているんですよ。その方が面白いアイデアが出てきます。現に、私が思いつきもしなかった仕組みが会社にどんどん生まれています。女性活躍のための取り組みも、経営サイドが作ったものなんてほとんどないんですよ。現場のみんなが声を上げて、ボトムアップで活動してくれる。経営陣はそれをいつも応援しています。今後もそうやって、本質的なダイバーシティ&インクルージョンを推進していきたいですね。

Promoted by LiB | photographs by Asami Okada | edit by Asako Takashima

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