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朝日新聞外交専門記者

(Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images)

日本を訪れた5月末、米国のバイデン大統領は台湾有事の際に軍事介入する考えを示し、世界を驚かせた。台湾有事に、軍事介入するのかしないのか、「肯定も否定もしない」とするのが米政府の伝統的な立場だったからだ。「介入する」と言えば軍事的緊張を高めるし、「ひとつの中国」を認めてきた米政府の外交方針と矛盾する。「介入しない」と言えば、中国が誤解して台湾に侵攻しかねない。米政府はそう考えてきた。

ホワイトハウスは今回も、やはりこの方針を踏襲し、バイデン氏の発言が米政府の公式の立場ではないことを確認した。しかし、バイデン氏が軍事介入の意思を示したのは今回で3度目だ。米国の記者団の間で「ここまで同じ言葉を繰り返すのは、確信犯だからではないか」「ホワイトハウスとバイデン氏で、わざと役割分担しているのではないか」という声が上がった。米大手紙の知人は「ホワイトハウス担当チームが総力をあげて、いろいろな当局者に取材をかけたが、結果はノーだった。担当者たちは慌てふためいていて、バイデン氏と示し合わせていた様子はまったくうかがえなかった」と語る。

では、バイデン氏の真意はどこにあったのだろうか。バイデン氏はいわゆる「口が軽い」ことでも有名だ。日米首脳会談の際などで、座持ちの良い話を繰り返し、関係者から「まるでワシントンの永田町男みたいだ」という評価を頂戴したこともある。ただ、今回はそのような「リップサービス」だけが原因とも思えない。

バイデン氏は日本を訪れる前、韓国を訪問した。バイデン氏は歴代米大統領が恒例行事にしてきた南北軍事境界線に近い非武装地帯(DMZ)には行かず、サムスン電子の半導体工場を視察した。韓国政府関係者によれば、米側の強い要望だったという。この関係者は「半導体を中国に一つたりとも渡さない、という米国の強い意思を感じた」と語る。

さらに、バイデン氏は5月21日、韓国の尹錫悦大統領と会談した。ここで、バイデン氏が熱弁をふるったのは、金正恩朝鮮労働党総書記ではなく、習近平中国国家主席についてだったという。バイデン氏は、今年3月に行われた、習氏との電話会談で、民主主義や人権の問題で激しくやり合ったと、尹氏に説明した。そのうえで、「韓国は米国を取るのか、それとも中国を取るのか」と迫ったという。

文=牧野愛博

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