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朝日新聞外交専門記者

Lewis Tse / Shutterstock.com

北朝鮮による7回目の核実験が迫っている。日米韓3カ国政府は、金正恩朝鮮労働党総書記が決心すれば、いつでも実験できる状況だとみているという。緊迫した状況のなか、北朝鮮で最近、姿を消した要人が3人いる。

1人は于尚哲〈ウ・サンチョル〉中央検察所長(党政治局員候補)だ。于は新型コロナがらみで責任を問われた。それは、5月16日付の朝鮮中央通信の報道を見れば明らかだった。報道によれば、金正恩朝鮮労働党総書記は15日、党政治局の非常協議会で「厳しい時局にさえ何の責任も、呵責も感じず、何の役割も果たせない中央検察所所長の職務怠業、職務怠慢行為」を辛辣に叱責したという。

でも、検察と新型コロナって、何の関係があるのだろう。同通信によれば、正恩氏は于氏の「職務怠慢行為」の理由について「司法、検察部門が医薬品供給に関連する行政命令が迅速かつ正確に施行されるように法的監視と統制をまともに行えずにおり、全国的に医薬品取り扱いおよび販売で現れているさまざまな否定的傾向を正せずにいる」と指摘したという。ほとんど言いがかりのような内容だ。北朝鮮は「無償医療」を掲げるが、病院でタダなのは、診察代だけ、というのは、北朝鮮研究者の間でよく知られた話だ。医薬品は患者が自ら、市場で購入しなければならない。「行政命令」ひとつで、医薬品の供給が円滑にいくような状態では決してない。

では、なぜ于氏は正恩氏から罵倒されたのか。脱北した朝鮮労働党の元幹部は「どうも、于の態度が悪かったようだ」と語る。正恩氏は12日の深夜2時に新型コロナ対策のための政治局会議を招集。14日の政治局協議会では、新型コロナの感染拡大を「建国以来の大動乱」と表現していた。トップがこれだけ焦っているのに、于氏は「俺は検察だから、コロナは関係ない」という態度で構えていたため、激しい怒りを買ったという。

文=牧野愛博

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