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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介


レジリエンスプログラムは、最新の医学や心理学の知見を基につくられている。核となるのは「身体の健康」「情動の健康」「思考の健康」「精神性の健康」という、活力の向上にかかわる4つの健康だ。

身体の健康では、活力を引き出すための運動や睡眠、食事について学ぶ。情動の健康では、意欲や集団の信頼などがどのように形成されるかをテーマに据える。思考の健康では、人が最高のパフォーマンスを発揮する状態に関する心理学的な知見を基に管理職自身の行動を振り返る。精神性の健康では事例を用いながら、意味感をもって働くことの重要性など、より健康になるための要素をひもといていく。

プログラムの受講者は、合宿や四半期ごとのセッション、個別発表会などを通じて4つの活力を高めるための具体的なアクションを考え、習慣化に取り組む。

プログラムの開始前と終了時には、本人と部下、家族による「活力360度評価」を実施。その結果からは、この5年間で受講者が率いる職場の「一体感」や「個人の尊重」、仕事に意欲的に取り組むワーク・エンゲージメントの指数が上昇するなど「周囲の人への波及効果を見て取れる」と言う。「医学の知見を生かして、人と組織を活性化することは私のライフワークです」

社員もステークホルダーも


そう話す小島だが、実は産業医の仕事に意義を見いだせない時期もあったという。

働く人たちを支えたい。その思いから産業医の仕事を選んだ。働き始めた当初は、メーカーの専属産業医をしながら心療内科で外来診療に従事していた。だが、3年が過ぎたころから葛藤を抱え始める。

「産業医は会社や社会をよくすることに貢献できる。そんな理想を描いていましたが、実際には調子が悪い人に対応する仕事が
中心。企業に産業医がいる理由は何だろうと考え続けていました」

そのころに描いたのが、冒頭のカカシの絵だ。医学をベースに人と組織の活性化に取り組みたい。そう考えて、06年に大学院に進学した。そこで出合ったのがフロー理論だった。自ら主体的に取り組み、没入しているときに得られる深い楽しさや喜び。フロー状態こそが、人と組織の活性化のヒントだと思った。

博士課程を修了し、丸井グループの専属産業医になったのは11年のことだ。各店舗や事業所で行われる安全衛生委員会に出席するために、小島は初年度だけで延べ262カ所の現場を訪れた。そしてさまざまなテーマで講話を行った。あるときは事務所別の健康度ランキングを発表し、別の日には釣りに使う赤虫を用いてタバコの有害性を伝える実験をした。

「小島先生の話は面白い」。そんな評判が広がり、それまで多忙を理由に出席していなかったリーダー層や統括安全管理者がこぞって会議に来るようになった。

現場を回るうちに、小島はある事実に気がついた。店舗の規模や特性によって職場の雰囲気が異なるのだ。そこで、現場の印象とメンタルヘルス不調者数などのデータを照合し、1本のリポートを作成した。

そして、このリポートが思わぬチャンスを引き寄せる。内容が人事担当役員の目に留まり、社長の青井浩と話す機会が設けられたのだ。詳しい説明が求められるのかと思いきや、青井の口から出たのは意外な質問だった。

文=瀬戸久美子 写真=小田駿一

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