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組織と個人にダイナミックな変化を生み出す「越境学習」。その学びはどのような変化を個人、そして組織にもたらすのか。


組織と個人の働き方の新しい関係が求められるなか、個人・組織の活性化を生むとして「越境学習」が話題だ。『越境学習入門』共著者・法政大学大学院教授の石山恒貴に背景と可能性について聞いた。

──なぜ、越境学習に注目が集まるのか。

企業は革新的な価値を生み出そうとするが「行き詰まり」に直面し、かつ、現場での経験学習的な人材育成だけでは限界が出てきた。また、既存の枠組みに当てはまらない人材、組織内にイノベーションを起こす人材の育成も難しい。さらに、働き方の柔軟性が促されるなかで、組織としても、個人としても、越境学習が求められているのではないか。

越境学習の定義は「個人にとってのホームとアウェイの間にある境界を越えること。ホームとアウェイを往還(行き来)することによる学び」。そして「往還することで生まれる違和感や葛藤が学習効果をもたらす」ことだ。越境学習は、「不確実性の高い状態で探究し続け、それを乗り越えようとする」「異なる世界に思い切って飛び込む」という能力の向上を生む。

また、越境学習は、知識やスキルといった「何を学ぶか」ではない。アウェイの環境に身を置くことにより、自分の価値観に気づき、どんなアイデンティティを形成したいかといった「何になりたいか」を問い、なりたい自分になっていく学びだ。

──人事領域で関心が集まっている「キャリア自律」にもつながる。

自律は、「自分を律する」という意味だ。自分が大切にしている価値観や興味・関心で自分を律していくということ。キャリア自律とは、自分の価値観を判断軸として主体的にキャリア形成をすることを意味する。こうした人材が組織を強くする。

キャリア自律した人材は、会社の価値観と自分の価値観が100%一致しているわけではない。だからこそ、企業がパーパス(存在意義)を掲げた際、共鳴できる点がはっきりする。こうした自律型人材の存在は、みながそれぞれでパーパスに対して共鳴する、多様な価値観をもつ組織につながり、会社にとってもいいことだろう。

企業間の「レンタル移籍」を仲介するローンディールは、組織のイノベーションを実現するための人材育成を行っているが、そのために必要なこととして「会社と個人のミッション、ビジョン、バリューの分離」をあげる。レンタル移籍(越境学習)前は、会社と個人のそれらが一致している事例が多い。その価値観を分離し、個人のミッション、ビジョン、バリューをまず語れるようにすることの重要性を説いている。でなければ、イノベーションに結びつかないという。

キャリア自律で、注目すべきキーワードが「イントラパーソナル・ダイバーシティ」だ。個人のなかにもさまざまな価値観があることを意味する「内なる多様性」が重要視されている。さまざまな経験をした「内なる多様性」をもつ人たちが、ダイバーシティに関する議論をしたほうが、組織が内部で分断されず、成果が出ることがわかっている。「多様性がある個人」をつくること、気づくことも、越境学習がもたらす効果のひとつだろう。

文=フォーブス ジャパン編集部

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