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一方、「成長」につながらないものには厳しい側面もある。スウェーデンの同一労働同一賃金、レーン=メイドナー・モデル(上図)では、最低賃金を法律で高く設定することにより、賃金を払えない生産性の低い企業は市場から退出し、人材は再教育され成長企業に流れる、という自然淘汰のモデルだ。また、大学教育については、人文系の学部が減らされていることに批判があることも書き添えておきたい。

世界経済フォーラムの競争力調査(2018年)によると、日本は製造、生産管理(1位)、企業の研究開発支出(2位)に比べて、高度教育訓練(21位)、労働市場の効率性(21位)が先進国として大きく見劣りし、「人的資本を強化することが、今後の決定的な課題となる」と指摘されている。人材再配置が進んでおらず、能力のミスマッチが起こっているだけでなく、いまだ労働市場が膠着化しており、リスクを取って新しいことに挑戦することが難しい環境にある。

学びは人間本来の喜びである。しかし、日本では競争の道具になり、個人が生来もつはずの意欲が削がれている現状がある。共著者が講師をしている東海大学の学生に、講義のあとに「北欧に生まれていたら、何を学びたかったか」と聞くと、グラフィック・デザインやファッションなど、現在の専攻と異なる分野を言う。「向いていないとわかったら、やり直しがきくからだ」という。働く現場でも同じことが起こっているのではないだろうか。

米国在住の連続起業家でS&R財団理事長兼CEOの久能祐子は「いまはニーズやパーパスが重要視される時代だが、インターネットの次の潮流、ブロックチェーン技術を基盤にした新しい経済圏(Web3.0)では唯一無二のオリジナリティが重要視される時代になる」と話す。いかにオリジナリティと創造性を発揮できるかが、成長力の鍵になる。

そんな「正解」のキャリアがない新しい時代では、一人ひとりがなぜ働くのかを考え、学び直し、移動する必要があるのではないだろうか。そのためには、リスクを取り、新しいことに挑戦しようとしている人材を評価し、大切にする社会をシステムとして構築していけるかが、最も重要な鍵となる。

柴山由理子◎東海大学文化社会学部北欧学科専任講師。早稲田大学大学院博士課程満期退学、フィンランドのベンチャー企業の上級副社長を経て、2018年より現職。専門は比較福祉国家論、フィンランドの政治。本稿はフォーブス ジャパン編集部(岩坪文子)と共著。

文=柴山由理子(東海大学文化社会学部北欧学科専任講師)、岩坪文子

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