最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

イラスト=エミール・ヴィークストロ

国際競争力が高く、多くのユニコーン・スタートアップを生む北欧諸国。その秘密は「何度でもやり直せる」教育と社会成長の一体化モデルにあった。


北欧諸国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド)はその経済規模に比して、一人当たりの名目GDPが突出して高い。また、国際競争力(デンマーク2位、スウェーデン6位、ノルウェー7位、IMD世界競争力年鑑2020)、イノベーション指数(スウェーデン2位、デンマーク6位、フィンランド7位、INSEAD“Global Innovation Index” 2020)も高く、その数字は2000年代より活発になった新興企業がけん引している。

バルト3国を加えた8カ国では、人口すべて合わせても3300万人程度だが、評価額10億ドル以上のユニコーン・スタートアップが30社近くあり、これは人口1人当たりのユニコーン数ではシリコンバレーを除くと、世界最多の地域となっている。

北欧ではなぜ、こんなにも「人」の力が強いのか。これは、リスクを許容する文化と包括的な社会制度が後押ししているといわれるが、その社会制度の背景には、資源と人口の制約のなかで、伝統的にすべての人を社会の資源とする考え方が浸透していることにある。

19世紀末に国民高等学校「フォルケホイスコーレ」を考案し、北欧の福祉制度や民主主義に大きく貢献しN.F.S.グルントヴィの考え方も、社会階層を超えて個々に内在する能力を生かすことで、社会全体を安定的に豊かにしよう、というものだった。ここでは北欧で、いかに個人の「学び」が社会の「成長」、「強さ」(リジリエンス)と一体化されて考えられ、制度化されているかについて見ていきたい。

null

「パンデミックのような不幸が起きても、その先をよくするのか、悪くするのかは自分次第。それをかなえる自由をスウェーデンが与えてくれた」。コロナ禍を機に大学に入学、NASAに研究を承認されたサーカス団員のライン・ヴェラスコ(32)の言葉が示すように、スウェーデンでは「いつでも、どこでも、誰でも」を原則に、あらゆるライフステージで無償教育が提供されている。大学は原則国立で、生活費も住宅手当の補助やローンを受けることができる。

1970年代の高等教育改革では、大学と社会の結びつきを強め、学部課程をすべて職業志向のものとし、研究は大学院で行うこととした。また大学・行政・企業が有機的に結びつき、カリキュラムも最新のテクノロジーに対応するなど、労働市場の変化するニーズに沿うものになっている。

もう一方の柱として成人教育も行われており、職業訓練校や、フォルケホイスコーレがある。また、企業に就職してもある一定の年数を勤務すると有給で学習するための期間が保障されるスタディ・リーブなどの制度も充実しており、リカレント教育のモデルとなっている。

文=柴山由理子(東海大学文化社会学部北欧学科専任講師)、岩坪文子

なぜ「働く」のか?
VOL.16

自己の「内なる多様性」に目を向けよ。越境学...

VOL.18

会社と個人の成長の両立へ!アサヒグループHD...

PICK UP

あなたにおすすめ