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コロナ禍で自由に海外に行くことが難しくなっているなか、市場が拡大しているのが越境ECだ。とりわけアジア市場が急拡大しているが、ECプラットフォームに商品を並べたからといって、すぐに売れるわけではない。

そこで注目されているのが、SNSで大きな影響力をもつ人に製品やサービスを紹介してもらう「インフルエンサーマーケティング」だ。台湾発のAI企業iKalaの共同創業者でCEOの程 世嘉、同じく鄭 鎧尹、電通 トランスフォーメーション・プロデュース局の桜庭真紀がアジアにおけるインフルエンサーマーケティングの重要性について語り合った。


国によって異なるSNSの使われ方


程 世嘉(以下、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが、EC市場の成長を加速させています。こうした変化にともない、消費者に直接商品を売る「D2C (ダイレクト・ツー・コンシューマー)」に注力する企業が増えています。これまでメーカーは自社のホームページを設置するだけで、D2Cにはあまり積極的ではありませんでしたが、直接販売しようという流れが非常に強くなっています。それは越境ECも例外ではありません。

そこで重要になるのがインフルエンサーマーケティングです。COVID-19によって、いままでECを利用してこなかった人も利用するようになりました。「KOL(キー・オピニオン・リーダー)」と呼ばれるインフルエンサーが商品を使用した体験を動画や画像、文章でSNSに投稿し、一般の人たちがそれを見て購入するという現象がアジアで広がっています。


程 世嘉(Sega Cheng)|iKala共同創業者兼CEO

鄭 鎧尹(以下、インフルエンサーマーケティングでいちばん大事なのは内容です。その内容がおもしろかったり、情熱的に語られたりしていることが人を惹きつけます。KOLの発信するコンテンツは、それだけ力をもっている。発言に嘘をつかず、思ったことを正直に言うことが信頼感につながります。KOLに対する信頼感がそのまま、その人が推薦する商品への信頼につながると言っていいでしょう。

桜庭真紀(以下、桜庭コロナ禍で人々がSNSを使う時間は非常に増えています。中国に関していうと、TikTokの本家中国版「抖音(Douyin)」の視聴時間が非常に伸びていて、ユーザーもすごく増えています。弊社でも抖音や中国版LINE「WeChat(微信)」などを使った「ソーシャルコマース」を日本企業にご提案する機会が増えています。商品の情報を自分で探して検討する従来のモール型ECではなく、おもしろい動画や興味のあるコンテンツを何気なく見ているうちに欲しいものに出会い、購入に至るというソーシャルコマースは、生活者にとっても新しい体験になっています。

ソーシャルコマースで成功するには、自社のアカウントや運営するECサイトにいかにユーザーを呼び込めるかが鍵になります。KOLを活用したインフルエンサーマーケティングによって魅力的なコンテンツを提供できるかどうかが今後、ますます重要になるでしょう。

鄭:多くの人たちがより多くの時間をSNSに費やすようになったというのは同感です。日本ではTikTokやTwitterの利用者が多いですが、台湾ではFacebookやInstagram、YouTubeの利用者がますます増えています。また、マレーシアを例にとりますと、ライブコマースが盛んな国で、最近Instagramにライブコマースの機能が実装されたことで、その活用が増えています。このように、国によってSNSの使われ方は異なるのです。

桜庭:おっしゃる通りです。日本だとSNSは個人が楽しむチャネルですが、中国ではもはやインフラです。それなしでは生活ができない状況です。日本のTikTokは若者が楽しむエンタメ的要素が強いですが、中国では10代から60代まで幅広い年代の方が普通に利用しています。内容も多岐にわたっていて、エンタメだけでなく生活に根ざした情報もある。かつて日本のテレビがそうだったように、非常に大きな影響力をもっているのです。

桜庭真紀(Maki Sakuraba)|電通 トランスフォーメーション・プロデュース局

程:越境ECに向けてインフルエンサーマーケティングを行うには、その国のSNSの使われ方を意識することが重要です。どんなSNSが使われていて、どういう内容が好まれているかを研究することが必要です。SNSは、自分の好きなインフルエンサーや興味のある分野について理解を深めることができます。メッセージを伝達する媒体としては、対象が狭いかもしれませんが、ユーザーはインフルエンサーのことを知りたくて集まってくるので、結びつきはかなり強いです。

桜庭:中国では、消費者の代表とも言える「KOC(キー・オピニオン・コンシューマー)」の活用も増えています。ただ、KOLからKOCにトレンドが変わっていっているということではなく、KOLと役割が違うと思っています。

程:KOCは、台湾でははっきりとトレンドに現れています。KOCは、KOLと比べるとフォロワー数は少ないですが、生活者であり、消費者であることが強みです。自分が実際に使って感じたことを自分の言葉で実感として説明することで、説得力が増します。ユーザーの反応がよく、「じゃあ私も買ってみよう」という購買につながりやすいのです。

鄭:KOCが抱えるフォロワー数はKOLよりも少ないですが、「使ってみてよかったです」「私も買ってみたいです」という会話が何往復も続き、密度の濃い反応が起きることが特徴です。

日本企業の最初の海外マーケットとして台湾は最適


桜庭:中国では、日本ブランドの品質に対する一定の安心感はいまでもあるものの、日本ブランドだから購入するという時代はもう終わったと感じています。中国の若者、特にZ世代と言われる人たちは、欧米ブランドも日本ブランドも韓国ブランドも、フラットに評価します。そのブランドがどんなストーリーをもっているのか、あるいはどんな個性をもっているかが重視されます。ほかのアジア市場もそうですが、いかにブランディングをしていくかが問われる時代になっているのです。

程:確かにブランディングは重要です。ただ台湾では、日本のブランドにはまだまだ優位性があります。特に私の場合、母が日本に留学していたということもあり、小さい頃から日本の漫画やアニメを見ていましたし、家の中の電化製品はすべて「メイド・イン・ジャパン」で揃えています。台湾人にとっては、日本製品自体に魅力があります。


鄭 鎧尹(Keynes Cheng)|iKala共同創業者

桜庭:台湾は日本を好きでいてくださるのでありがたいですが、中国はなかなか難しいです。

鄭:電化製品だろうと食品だろうと、台湾人は日本のブランドや日本製の製品をよく認識し、受け入れやすい傾向があります。ですので、日本の企業が海外進出を考える際、台湾は最初に試してみるマーケットとして最適です。台湾のKOLやKOCたちには、日本のブランドに代わってストーリーを語れる蓄積があるのです。

KOLにしてもKOCにしても、テレビより小さな集団に向けての情報発信になります。それは、小さなグループがバラバラにたくさん存在しているイメージです。分散しているユーザーを同時に分析することは、人間には不可能です。そこで効果的なのがAIです。私たちが開発したAIシステム「KOL Radar」では、アジア5カ国14万の KOL/KOCが毎日発信しているコンテンツに対し、何十万人、何百万人、何千万人といったグループ単位でリアルタイムのパフォーマンス分析を行うので、キャスティングの最適解に辿り着くことができるのです。

桜庭:インフルエンサーマーケティングを重視する理由のひとつが、インタラクティブだという点です。KOLとユーザーとのインタラクティブな会話や反応のすべてを把握することは、従来のツールでは不可能でした。AIだからこそできることであり、素晴らしいツールだと思います。

程:私どものシステムを使って検索していただくと、ピンポイントでKOLやKOCといったインフルエンサーとのマッチングが可能です。例えば「化粧品」で検索すると、化粧品に関して発言をしているインフルエンサーが表示されます。さらに「男性向け」とか「アンチエイジング」などのキーワードを追加していくことで、どんどん対象が絞られていきます。キーワードを増やせば増やすほど、最適なインフルエンサーが見つかりやすくなるのです。インフルエンサーのランクも選べるので、少ない予算で試すスモールスタートが可能です。小さく始めても成功を見込めるので、その効果を確認しながら予算を増やしていただけることが、私たちの商品の強みだと思っています。

AIで最適なインフルエンサーとのマッチングを実現する「KOL Radar」




鄭:KOL Radarは台湾だけでなく、タイやマレーシアなど東南アジアのデータベースも構築されており、日本語で検索することが可能です。台湾とマレーシアはサポート体制が整っているので、スタッフとすべて日本語でやりとりすることが可能です。また、物流や倉庫など越境ECに必要なパートナーをご紹介することも可能です。

日本ではデータが重視され、効果が見えることを望まれる企業が多いです。私たちのシステムは、デジタルレポートを作成してデータによって成果を示すことができます。1回目のトライをした結果を踏まえ、2回目、3回目とさらに精度を上げていくためのPDCAを回していく。そのためのインデックスがレポートに掲載されます。それによって、どんどん効果を上げていくことができます。

桜庭:同じアジアでもトレンドや消費者のインサイトは違うので、多くの日本企業が悩まれています。そうしたなか、インフルエンサーマーケティングをしようと考えたら、信頼できるパートナーを探すしかありません。日本企業はものすごく慎重ですが、iKalaさんのようなAIによる客観的な評価があると企業は安心ですし、効果の実証ができることは非常に頼もしいです。それにインターフェースが日本語というのも、我々日本企業にとってありがたいです。

程:多くの日本の製品は品質に優れているだけでなく、職人魂や物語などいくつもの魅力的な要素ももっています。我々のAI技術で活用し、さらに現在のソーシャルコマースブームを合わせて、より多く海外の消費者にそうしたMade in Japanの良さを知ってもらうお手伝いができればうれしいですね。

桜庭:コロナ禍で海外旅行ができなくなったことで、越境ECのニーズが増えているという側面があるのは確かです。しかし、インバウンドの代わりに越境ECに取り組むというだけではなく、越境ECを通じて自分たちのブランドのファンをつくっておくという考えが大事です。そうすることでインバウンドが回復したときに、さらなる集客が見込めますし、ユーザーと長期的なエンゲージメントを構築することにつながります。越境ECは単なる販売チャネルだけでなく、ブランディングやファンづくりのチャネルでもあると考えています。

程:それにはやはり、ソーシャルコマースやインフルエンサーマーケティングが欠かせません。私たちはまだ日本の企業さまに広く知られる存在ではありませんが、これから当社の製品を通して、日本の企業さまの信頼を勝ち取っていけたらと考えています。そしてインフルエンサーマーケティングだけでなく、私たちが培ってきたAI技術により、ゆくゆくは日本企業のDXのお手伝いもしていきたいです。



iKala
https://ikala.tv/jp/
Twitter
Note
KOL Radar 公式サイト


程 世嘉(Sega Cheng)◎iKala共同創業者兼CEO。スタンフォード大学コンピューターサイエンス修士号、国立台湾大学情報管理学部学士号取得。Googleソフトウェアエンジニアを経て2011 年 5 月、鄭鎧尹らとともにiKalaを設立し現職。21年、iKala Japanを設立。

鄭 鎧尹(Keynes Cheng)◎iKala共同創業者。国立台湾大学情報ネットワークおよびマルチメディア研究所博士号取得。2011 年 5 月、程世嘉らとともにiKalaを設立。

桜庭真紀(Maki Sakuraba)◎電通 トランスフォーメーション・プロデュース局勤務。中国ビジネスサポートをミッションとする社内組織dentsu China Xover Center(通称CXCシーバイシー)に所属。2014~19年に上海電通に駐在し、マーケティング・プランニング部門を統括。

Promoted by iKala Japan| text by Fumihiko Ohashi | edit by Yasumasa Akashi

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