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国際都市・東京の玄関口として大変貌を遂げつつある浜松町エリア。そのベイサイドを舞台に、都市計画のなかでも屈指の規模となる大規模複合開発が動き始めた。野村不動産グループが東日本旅客鉄道と共同で推進する「芝浦プロジェクト」だ。同プロジェクトは「浜松町ビルディング(東芝ビルディング)」の建て替え事業で、国家戦略特別区域計画の特定事業に指定されている。野村不動産史上最大規模となる“街づくり”が目指す世界とは。同社芝浦プロジェクト本部で手腕を振るう2人のキーマンに話を聞いた。


人と社会の新しい未来(あした)をつくる


「眼前に広がる空と海とそして敷地内の緑に囲まれる、都心の水辺という希少な立地環境を生かし、これからの新しいライフスタイルとワークスタイル、そして新しい都市機能を生み出そうと考えています」。野村不動産 芝浦プロジェクト企画部の内田賢吾はそう思いを語る。

「芝浦プロジェクト」の計画地は、JR浜松町駅から徒歩5分ほどの芝浦運河沿いにゆったりと横たわる。区域面積は東京ドームとほぼ同等の約4.7ha。その広大な敷地に、延べ床面積55万㎡、高さ約235mのツインタワーが誕生する。竣工時期はS棟が2025年2月末、全体竣工が2030年度を予定。ツインタワーにはオフィスやラグジュアリーホテル、商業施設、レジデンスなどが入り、完成すれば、東京の新たなシンボルとして東京湾岸部の景色を一新させることになる。

レインボーブリッジ越しに見た「芝浦プロジェクト」

そのタワーの足元には多彩な緑や花々が彩る緑地空間や小道が配置され、建物とシームレスにつながる運河沿いのテラスによって開放的な水辺空間が計画されている。魅力的なのは、ツインタワーの目の前に新設される船着場が「車寄せ」のように身近な存在であることだ。この街に集う人々の生活の足、観光の足、ひいては通勤の足にもなることだろう。

船着場のイメージ図

内田によると、山手線の駅の中で最も東京港に近いのが浜松町駅だ。東京モノレールで羽田空港から東京へ入る玄関口であり、東京と品川間にあることで国際ビジネスの中枢としての躍動感を肌で感じられる一方、駅の東側には、江戸初期の大名庭園の面影を残す旧芝離宮恩賜庭園の緑地空間が広がり、東京港を臨む水辺空間が近接する。


東京港を臨む「芝浦プロジェクト」背後には旧芝離宮恩賜庭園の緑地空間が広がる。

「このように都心の利便性を備えながら、空と海と緑が調和する。水辺に憩い、空と海から世界を感じとり、そして緑に癒やされる。そんな環境は、なかなか類を見ないと言えるでしょう。エリアの可能性としては同時期に大規模開発が進む浜松町・竹芝・芝浦の3つの地区の連携により、国際ビジネス、国際観光地としての魅力を高めていくことも非常に重要になると考えています」

プロジェクトが全体竣工する2030年度は、SDGsの目標達成年と重なることもあり、気候変動に対する緩和策として「脱炭素」にも挑むという。最新の省エネ・省CO2技術のほか「創電」による再生可能エネルギーや「カーボンニュートラル都市ガス」の導入等により、街区全体でのCO2排出量の実質ゼロの実現を目指す。さらに、街の特性を高めるべく、東京大学先端科学技術研究センターと連携し、「カーボンニュートラル技術拠点」の整備に向けた取り組みも始まっている。水素や風力などの再生可能エネルギーが普及していくうえでの課題について、産学官連携によるカンファレンスなどを通して活発な情報交換、意見交換を図っていく方針だ。

野村不動産の企業理念は「あしたを、つなぐ」であるが、その源流には、人に寄り添い、一人ひとりが心地よく過ごせる街づくりを積み重ねてきた歴史がある。

「環境負荷の低減と、この街で過ごす人々の快適性を両立し、この街のよりよい未来(あした)をともに描いていく。新しい社会を未来へ届けていく。それが芝浦プロジェクトに込めた願いです」(内田)

舟運ネットワークの中継点、芝浦が果たす役割とは

 
内田は、2019年にプロジェクトの一環として一足先に開業した「Hi-NODE(ハイノード)https://hi-node.jp/」に携わり、事業を通して東京都港湾局や船会社との関係性を深めてきたことから“水都東京の復権”には特別な思いがある。

「歴史を遡ると、江戸は東洋のヴェネチアといわれる水の都でした。人と物資輸送の要として張り巡らされた運河沿いには水辺と親しむ人々の姿があり、昭和初期までその光景が見られたといいます。しかし、物流の主役が陸路に移り、高速道路の建設や治水事業による堤防設置が進むにつれて、水辺の建物は街のほうに顔を向けるようになってしまった。水辺の空間があっても、一般の生活者に向けて開放されてこなかったのです。近年ウォーターフロントの開発が進んでいますが、親水空間を取り戻す動きはこれから本格化していきます。芝浦プロジェクトでは、水辺に顔を向け、人々に水辺を“生活の場”として開放していきたいと思っています」

「水都東京の魅力向上には、舟運の活性化が重要なカギを握り、芝浦が果たす役割は大きい」とも話す。なぜなら、芝浦は、羽田や天王洲などの湾岸部と浅草や日本橋など河川沿いのちょうど中間に位置し、舟運ネットワークの中継地点の役割を担い、加えて、浜松町駅は徒歩数分で海と陸の足をつなぐ結節点となるからだ。

「日の出ふ頭も含めたこの芝浦エリアが水辺に関する取り組みを強化することで、東京全体の水辺までもがよりよくなっている。そういう役割をデベロッパーとして担っていかなければならないと考えています。そのためには私たちだけでなく、浜松町、竹芝の事業者や舟運会社などと連携し、地域としての回遊性と賑わいを共創していくことが大切になるでしょう。羽田に到着した外国人が船で移動してホテルに到着し、カンファレンスに出席する。オフィスワーカーであれば、水上バスで潮風に吹かれて出社し、東京の夜景を見ながらビール片手に帰宅する。そんな新しいライフスタイルを思い描きながら取り組みを進めています」(内田)


内田賢吾|野村不動産 芝浦プロジェクト本部 芝浦プロジェクト企画部 企画一課 課長代理

都心の水辺から始まる「TOKYO WORKation」


「芝浦プロジェクト」の中核事業ともいえるのが、オフィス事業であろう。野村不動産では、首都圏と大阪エリアを中心に、大規模オフィスのほか小規模サービス付きオフィスの「H¹O(エイチワンオー)」から中規模ハイグレードオフィスビル「PMO(ピーエムオー)」、他拠点シェアオフィス「H¹T(エイチワンティー)」まで各種オフィスブランドを展開。コロナ禍を通してさまざまなチャレンジを試みオフィスの在り方を見直す企業の多様なニーズに応えている。

その同社がプロジェクトで新たに打ち出すのが、「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」という働き方だ。芝浦プロジェクト本部 ビルディング営業部 営業二課の飯田真規は、その言葉に込めた想いを次のように話す。

「まず、大前提として、新型コロナウイルス蔓延が収束したとしてもテレワークを活用した新しい働き方は続くと考えています。そのなかで東京にはどのような働き方が相応しいのかを考えました。ワーケーションという働き方は、働き方改革の一環としてコロナ以前から取り入れる企業が存在しました。しかし、その段階では、東京の本社で働くか、観光地やリゾート地へ赴いて働くか、の選択になります。私たちは、ここ浜松町・芝浦ではもうひとつの選択肢があるのではないかと感じていました。つまり、ビジネスの中枢である東京で働く。自然を身近に感じながら気分を変えて働く。ふたつの「働く」が融合した働き方です。TOKYO WORKationは、遮るもののない空と海と緑があり、さらには行き交う船など移り変わる情景をリアルに感じていただけるといった、浜松町・芝浦ならではの稀有な立地環境から生み出されたものなのです」


飯田真規|野村不動産 芝浦プロジェクト本部 ビルディング営業部 営業二課 主任

芝浦プロジェクトのオフィス事業の企画においては、同社のオフィス事業の思想である「ヒューマンファースト」を軸に、同社が企業や有識者とともに立ち上げた「ヒューマンファースト研究所」の調査研究結果も考慮し、一人ひとりが自分らしく働けるようなワークスペースを利用する人々の導線に配慮した設計を行っている。洗練されたラウンジとそこから連続するルーフテラス、木漏れ日のベンチ、水辺のカフェスペース……。浜松町駅から敷地内へは自然豊かな緑のアプローチを作り、駅から始まるウェルビーイングを具現化する。

敷地内の緑のアプローチイメージ図。

「ヒューマンファースト研究所の調査によると、ワークスペースの選択肢を多様にもっている人ほどパフォーマンスが高い※という結果が出ています。さらには、その場所を自由に選べると幸福感が上がり、所属会社やチームに対するエンゲージメントが高まるという調査結果も。そのような裏付けをもちつつ、個々の企業が抱えるニーズと真摯に向き合いながら、プロジェクトの企画にフィードバックしています。これからの新しい働き方をデザインしていくのは、そこで働く一人ひとりのワーカーの方々です。そのための環境を整えていくのが私たちデベロッパーの役割だと思っています」(飯田)

「2025年2月に竣工予定のS棟の上層階には長らく日本進出が期待されたラグジュアリーホテルブランド『フェアモント』が出店予定です。地域の特性を大事に生かしながらウェルビーイングな滞在体験をつくっていくところに私たちのプロジェクトとの親和性を感じました。ときには、ホテルで朝食を摂ったり、文豪のように執筆に没頭したり。SPAでリラックスして出勤するといったワークスタイルもここでは叶います。」(内田)

S棟のオフィスフロアは、フロア貸室面積1,500坪超と、都内でも最大級のフロア面積を誇る。ロの字型の空間設計により回遊性を高めるとともに、ワーカー同士の偶発的なコミュニケーションによってイノベーションが生まれやすくなるのが特徴だ。眺望を最大限に取り込むため柱スパンは18mを確保。放射空調方式や複層Low-eガラスを採用することで温度ムラの少ない快適な執務空間を実現する。

「オフィスフロアに関しては分割可能な設計となっていますので、1フロア1社に限らず、フレキシブルな対応が可能です。また、芝浦プロジェクトだけで完結することなく、H¹OやPMO、H¹Tと組み合わせて最適なオフィスポートフォリオ構築をご提案していきます」(飯田)

※ここでいうパフォーマンスとは、「エンゲージメント」「ウェルビーイング」「クリエイティビティ」に関して既存研究において使用される設問項目の回答を点数化し、各指標を標準化後に平均した値を「ヒューマンパフォ―マンス・スコア」としてヒューマンファースト研究所が独自に定義したもの。主に、人の継続成長を重視した値。

こだわり抜いた安全性、源流に「人」への思い


「ここに人々が集まっていただく以上、この拠点は安全安心であるべきだと考えています」と飯田は力を込める。制振と免震をハイブリッドさせた構造や、水害に耐えられる防潮設備をもつほか、感染症対策として、換気量と空気質にこだわった仕組みも備える。

また、エネルギーのバックアップ体制の充実度も高い。電源供給に関しては通常の変電所に加えて予備変電所からも供給を受け、万一系統電力自体が遮断された場合は中圧ガスがバックアップとなり、最大10日間、貸室内に電力と空調の供給が可能。さらに、中圧ガスが途絶した場合でも、重油を72時間分貯蔵しているため、同様に電力と空調の稼働が可能となっている。

「3重、4重のバックアップにより、有事の際の地域対策拠点にしていただくこともできます。これらのスペックもすべて、ヒューマンファーストの哲学に基づいています。ここに集う人々が快適になってほしい、安全でいてほしいという、その思いが今回のスペックに詰まっています」(飯田)

「源流が“人”であることは、住宅事業、オフィス事業、ホテル事業など、弊社が手がけるすべての事業において通底しています。人に寄り添う、つまり、そこで暮らす方、働く方にとって何がいちばんいいかということを考え抜いてお客様に価値を提供する。芝浦においては、弊社史上最大級の“街”という規模感でそれに取り組む、そういうことだと理解しています。プロジェクトは40名程度の専属の人員を中心に、グループ一丸となり取り組んでいますが、皆、同じ思いで取り組んでいると思っています」(内田)

現在、2021年に設立された「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」において地域住民との絆を深めると同時に、小学生とその親御さん、高校生を対象とした街づくりに関わる出張講座も開いているという。海と空と緑と人々の営みが溶け合い、一人ひとりの心地よさでデザインされていく街。未来を潤す、サステナブルな街づくりが始まっている。

野村不動産が手がけた住まいやオフィス、街を訪ねて出会うのは、そこで過ごす時間に喜びを感じている人々の笑顔である。国際都市・東京の玄関口として水辺に開く街のなかには、無数の笑顔が溢れることだろう。開業が心から待たれる。

芝浦プロジェクト
https://shibauraproject.com/

内田賢吾(うちだ・けんご)◎野村不動産 芝浦プロジェクト本部 芝浦プロジェクト企画部 企画一課 課長代理。芝浦プロジェクトの計画地に現存する浜松町ビルディングのリーシングや運営企画を経験後、2017年に芝浦プロジェクトの関連事業として東京都港湾局との連携による「Hi-NODE(ハイノード)」の企画・運営に携わる。現在は芝浦プロジェクトにおいて水辺の商品企画や舟運、プロモーション等に携わる。

飯田真規(いいだ・まさき)◎野村不動産 芝浦プロジェクト本部ビルディング営業部 営業二課 主任。中規模ハイグレードオフィスビル「PMO」や虎ノ門駅上のオフィスビル再開発等、幅広くオフィスビルのリーシングを手掛け、その経験をもとに今回、芝浦プロジェクトのオフィス企画とリーシングに携わる。

Promoted by 野村不動産 / text by 五十嵐せい / photograph by 後藤秀二 / edit by 高城昭夫

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