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日本最大級の総合コンサルティングファームのひとつであるPwCコンサルティング合同会社。同社の有志が立ち上げた、ソーシャル・インパクト・イニシアチブ(以下、SII)という部門横断型組織がいま、その存在感を強めている。これまで第三者的視点でクライアントにコンサルテーションしてきた同社において、社会課題解決のために、社会起点で発想し、クライアントを巻き込むことを目指すという点において独自性が評価されているのだ。

当連載では、SIIの意義や可能性に迫ってみたい。第四回となる今回のテーマは「プロボノ活動」(※)。PwCコンサルティングではSII管理下で「戦略的プロボノ人材育成プログラム」(以下、当プログラム)を2017年から実施している。コンサルタントとしてビジネスの最前線にいる彼ら・彼女たちが、NPOなどのより社会課題の“現場”に近い環境に身を置くことで、どんな学びや気づきがあるのか。何度も当プログラムに参加しているメンバー4人に話を聞いた。

※社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動


──まず、社会課題に向き合うようになったきっかけや、プロボノ活動に参加されることになった経緯について教えてください。

中村千紗(以下、中村):私が社会課題に興味を持ったきっかけは、高校の授業でした。日本という安定的に食糧を手に入れられる環境に育ち、食への興味が強かった私ですが、世界ではまだ飢餓に苦しむ人たちがいることを知り、大きな衝撃を受けました。大学・大学院ではミャンマー農村部の母親の教育年数・エンパワーメントと子どもの健康の関係など人的資本に関する研究を続け、その後PwCコンサルティングに入社しました。現在入社3年目ですが、入社前から当社のプロボノ活動については知っており、入社2年目の4月から実際に参加しています。


中村千紗◎カスタマートランスフォーメーション部アソシエイト。2020年新卒入社。法人営業改革やエリア戦略立案・消費者セグメントの活用支援、インサイドセールスを活用した新規ビジネス立案プロジェクトなど、営業・マーケティングに関するプロジェクトに携わる。学生時代から「食」「農業」「貧困」などのキーワードに関心を持ち、教育イベントの開催にも関与。入社2年目の始めから当プログラムに継続的に参画している

大瀬千紗(以下、大瀬):私も中村さんと同じく、社会課題に関心を持ち始めたのは高校生の頃です。特に教育問題への興味が強く、大学生のころには教育系NPOで活動したり、教育福祉系の民間企業でアルバイトをしたりしつつ、教職課程も履修していました。教育や福祉の現場でさまざまな子どもたちと出会い、支援の実情を知る過程で価値観を揺さぶられるような体験を幾度となく経験し、問題意識や関心をさらに深めました。

入社直前に当プログラムの存在を知り、入社1年目の秋に参加を決心。その時の経験がとても有意義だったため、5年目にも参加しました。

吉川泰生(以下、吉川):私の場合は、お二人と違って、PwCコンサルティングに入社後に社会課題に強く関心を持つようになりました。当社はメールマガジンやビデオメッセージなどを通し、ソーシャルイノベーションやインクルージョン&ダイバーシティの重要性を発信し続けています。私はその重要性を実感する機会をもっと増やして、それらの問題を自分事化したいと考え、当プログラムに応募しました。

具体的にはこれまで、日本における同性婚法制化を目指す公益社団法人「Marriage For All Japan」や、児童養護施設を巣立つ若者の自立支援を行うNPO「Bridge for Smile」に参加しています。

折原涼太(以下、折原):私は学生時代に、発展途上国・貧困国の公共政策など、課題が多い国々をうまく発展させるためのメカニズムについて専攻していました。その過程で、素晴らしい社会システムが経済発展や人々の幸せに直結すると実感し、仕組みづくりを加速させるコンサルタントを志望するなかで、PwCコンサルティングに入社しました。現在は、プロボノ組成やコンサルタントを各NPOに送り出すため調整を行う事務局の立場で当プログラムに携わっています。

プロボノ活動を通して広がる視点


──もともと社会課題に関心の強い方が集まっているという印象が強いですが、コンサルティング業務だけでは見えてこなかった視点や、プロボノ活動を通じて得られた気づきはありますか?

中村:私の場合は、入社間もないタイミングで参加したこともあり、普段はご一緒する機会のない他部署の先輩方の働き方を見て、視野が一気に広がりました。プロボノ活動は、社会で何が課題とされていて、そこにどのようなプレイヤーがいるのか。また自分がPwCコンサルティングの社員として、また、個人として、何ができるのかを常に客観視できる機会でもあります。

吉川:そうですね。加えて、人間関係も豊かになると思います。プロボノ活動によって、接点がなかった外部企業の方とも活発なコミュニケーションを取る機会に恵まれます。例えば、近年、PwCコンサルティングでは同性婚に関するアンケートサービスを独自に展開してきました。それが今年から、他コンサルティング企業と2社合同での実施も実現しています。これは通常業務ではあり得ないことで、回答件数が飛躍的に増えたのはもちろん、実施後にも同性婚の法制化を実現するための意見交換を続けています。プロボノ活動を通じて構築された社内外の他のネットワークも多様性に富み、非常に強力です。


吉川泰生◎金融サービス事業部シニアマネージャー。大手SI事業会社を経て、2016年より現職。金融機関向けテクノロジーコンサルタントとしてコンサルティング業務に従事しながら、社内のインクルージョン&ダイバーシティチームやSIIの活動にも参画。結婚の平等に賛同する企業を募るキャンペーン「Business for Marriage Equality」について、クライアント企業などへ意義や効果を説明し、企業視点からのインクルーシブな社会作りに取り組んでいる

大瀬:「現場に近い視点を持てる」のも、プロボノ活動に参加する大きなメリットのひとつかもしれません。私は普段は公共機関をクライアントとしており、子どもや障害者の福祉など社会課題に近しいテーマを扱っていますが、その際は国民全体という広い対象を想定し、制度設計や政策に資する研究事業に取り組んでいる一方、プロボノ活動では現場で当事者と向き合うNPO等のみなさんと共に課題に取り組みます。現場に近い環境に身を置き、直接その想いに触れることで、自分自身のモチベーションも大きく高まります。

──業務とは異なる視点や、自身の問題解決能力を高める新たなケイパビリティ獲得につながるという印象を受けますが、活動するなかで見えてきたプロボノ活動そのものの課題や構造的問題についても考えをお聞かせください。

大瀬:部署を横断したメンバーでプロボノチームが構成されることにはメリットも大きいのですが、一方で関心・知見がバラバラな状態で活動がスタートするために、プロジェクトが軌道に乗るまで時間がかかるという印象を受けました。また、プロボノに参加したメンバーのほとんどが支援団体と初めて関わることになるため、団体についての理解に時間を要します。チームビルディングを含め、いかにスタートダッシュを切れるようにするかが今後の課題だと思います。


大瀬千紗◎公共事業部シニアアソシエイト。2017年新卒入社。児童虐待防止や障害児者支援といった福祉の調査研究への従事経験多数。2022年4月からは大学の通信教育課程にも在籍し、社会福祉士取得のための学びを開始。ビジネス、福祉現場、制度設計の視点の理解を深めながら、平等・公正な社会の実現に向けて取り組んでいる

折原:事務局の課題としては、本業のプロジェクトとプロボノ活動の相乗効果をより洗練させていくこと。というのも、若い方々の参加希望が増えるなか、プロジェクトとの兼ね合いでメンバーの送り出しが難航するケースがまだまだ少なくないからです。ただし最近では、プログラム卒業生がプロボノ活動で成長した成果を本業のプロジェクトで発揮したり、ジョブマネジャーの方々が社会課題の重要性を認識して送り出してくれたりするケースも増えてきています。今後、より多くの方々がプロボノ活動に参加できるよう、各部署や本人、そして支援団体にとってシナジーやメリットが高い体制づくりを進めていくべきだと考えています。

また現在は子どもや学生、貧困関連など支援を行うテーマや団体に偏りがある状況ですが、個人やPwCコンサルティング全体が得られる経験・ノウハウをより豊かにするために、こうした偏りを解消していくことも課題のひとつです。

──PwCコンサルティングでは、プロボノ活動にかかわった労働時間の10%を実務として認めて参加を推進するシステムを採用していると聞いています。社会課題に取り組みやすい仕組みづくりの一環だと思うのですが、その有益性についてはどうお考えでしょうか。

吉川:外部企業の人事の方々と会話をする際、当社のプロボノ活動について話す機会が時々あります。私の印象では、ボランティア休暇制度を採用している日本の企業は多いのですが、プロボノ活動に業務工数を認める企業は非常に限られています。社員が持つ社会課題に対する思いを支えるという意味では、このような制度はとても有意義だと思います。

折原:近年、当社はクライアントからNPOや社会課題に関連した問い合わせを受けることが増えてきています。そのため、社会課題を解決できるメンバーを育成する仕組みとしての当プログラムは、クライアントの求めるニーズとも合致します。コンサルティング企業の実業にも沿う新たな仕組みであり、経営陣の理解やリーダーシップなくして成りたたない制度だと思います。


折原涼太◎テクノロジー・メディア・テレコム事業部マネージャー。2013年新卒入社。経理・人事などの業務改善が専門。近年は健康経営に関する方針策定・施策推進の支援に従事。18年から当プログラムの運営事務局に参画。実際のプロボノプロジェクトには参加しないが、コンサルタントを支援NPOに送り出すための調整などを担当している

継続のモチベーションは、社会課題解決の手ごたえと得難い体験


──プロボノ活動に参加する最大のモチベーションとなるものはどういったものでしょうか。 

大瀬:純粋にワクワクできるからという気持ちが最も大きいです。関心があることに取り組めますし、支援団体のみなさんの強い想いに寄り添って支援できるからです。さらに、部署・社内外を問わず、多くの人と出会うことができ、協働して課題に挑むことができます。通常業務と両立することは決して楽ではないものの、その苦労を超えて得るものはとても大きいです。

中村:私も大瀬さん同様、自分の成長を見据えた時に有意義な活動だと考えていて、参加し続けるモチベーションになっています。入社前から、コンサルティングワークが実際に社会課題にどう貢献できるか疑問に感じていましたが、その答え合わせもしかり、解決のために自分にどんな力が必要なのか気づくことができるのがプロボノ活動の意義だと感じています。

吉川:私は本当にただプロボノ活動そのものが楽しい、これに尽きます。活動自体もそうですが、このように普段のジョブではなかなかご一緒する機会のないPwCコンサルティングのメンバーと意見を交わして知見を得ることもプライスレスですし、それがモチベーションにつながっています。

折原:私は事務局メンバーなのでプログラムに参加することはないのですが、定例会で参加メンバーが語る、プログラムを通してのスキルアップや体験談を興味深く聞いています。それが私自身のモチベーションになっています。

──最後にSIIとして目指していきたいことがあればお聞かせ下さい。

吉川:例えば、これから日本で同性婚に関する法整備が進んでいくと想定した場合、LGBTQ+の方々に必要なサービスやさまざまなソリューションも準備する必要があります。SIIとしては、クライアントネットワークを駆使して社会課題の解消を成し遂げながら、併行して新たな社会や経済の仕組みを生み出す役割を担っていきたいですね。

折原:私も同感です。加えて、クライアントのみならず、その先の外部の力まで集めるハブになることで、これまでになかったインパクトを生み出していきたいと思っています。



PwC コンサルティング 「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ」連載

#1 公開中|「社会課題の解決にもビジネスの優位性を」──PwCコンサルティングの部門横断型チームが構築する新たなビジネスモデルとは
#2 公開中|「マルチステークホルダーをつなぐハブに」SIIだからこそ実現可能な社会課題解決へのアプローチ
#3 公開中|各業界の脱炭素戦略にどうアプローチするべきか。ナレッジの共有で横断的な施策を提案するPwC コンサルティングSII チーム
#4 本記事|コンサル視点と当事者目線の両立で社会課題の解決を。PwCコンサルティングがプロボノ活動を積極的に推進する理由

Promoted by PwC Consulting LLC / text by Jonggi Ha / photographs by Tadayuki Aritaka / edit by Kaori Saeki

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