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日置:経営者目線を育むのは難しい。企業戦略、事業戦略、機能戦略という古典的な戦略の分類学では、これまで人事担当役員は機能戦略のひとつの人事戦略の責任者。経営者目線は企業戦略のレイヤーなので、CHROは、機能を守る「制度の番人」から脱却し、成長しなければいけない。

スタートアップであれば、CEOと目線を合わせやすいかもしれないが、大企業は組織が大きく、積み上がったコンテクストもあるだけに難しい。だからか、人事からではなく、経営企画からCHROを抜擢するケースも増えてきている。重要なのは、経営、経営企画目線を持っている人材が人事を見ることだ。専門性が必要となれば、部課長クラスがサポートするなど、やり方はある。

組織変革は時間がかかる


日置:最近、人事領域には、「流行のキーワード」が多い。例えば、エンゲージメントやジョブ型、ウェルビーイング、人材ポートフォリオなどだ。一つひとつに反応して施策をつくっても、組織全体で見ると、意味をなさないことが多い。

入山:キーワードをかたちだけ揃えても意味がない。自社の文脈において、何が必要か定めて使うべきだ。パーパス、ビジョン、ミッションなど、とりあえず全部一式揃えようとしてしまいがちだ。これほどHRの流行のキーワードがあるのは日本だけだ。

現在のキーワードは、日本企業に先行する欧米企業が変化の激しい経営環境のなかで、イノベーションをはじめ、もがき苦しんだ努力の結果に、後から言葉ができた。日本企業は、いま、必要に迫られて、飛びついている構図とも言える。

日置:日本の「キーワード病」は人事領域に限らない。その逆は「本質思考」だ。本質が何か、考える手がかりを欲して、キーワードに飛びついてしまう。そこから本質にたどり着けばよいが、実際にはキーワードに踊らされて終わることも少なくない。

入山:それぞれ企業ごとに、長期的な視点にたち、経営目線で、どんな組織や人事戦略が必要か。「教科書」はないので、オーダーメイドでつくるしかない。

例えば、同じグローバル外食産業チェーンでも、マクドナルドとスターバックスはまったく異なる組織だ。マクドナルドは中央集権的で、国ごとには異なるが、同一国では、秒単位で統一した動き方を全店舗にフォーマットとして落とし込む。一方、スターバックスは、「体験(エクスペリエンス)」を最重要視しているため、店舗ごとの店長に大きな裁量を与えて、任せている。

このように人材と組織のつくり方がまったく違うのは、マクドナルドとスターバックスの根本の戦略が違うからに他ならない。

日置:流行のキーワードで施策を打つと、短期的には変化を感じる。ただ、カンフル剤を多用する「変革病」になっては危険だ。本質的な組織変革は、まったく新たな組織へと移行するトランジション思考で、時間をかけて、積み上げていくしかない。長期的によい会社であり続けたいのなら、この事実を再認識すべきだろう。

入山:だからこそ、経営者が長く伴走しなければ実現しない。社長が3年2期で変わる体制の企業では、打ち出の小づちのようにCHROを設置しても変わらない。

日置:人材ポートフォリオでも、「(優秀な)人材はどこかにいる」という他力発想が強い。部分的に満たせるかもしれないが、そんな簡単な話ではない。世界中にいる自社の「人材が見えているか」「人を動かせているか」「人を育てられているか」という本質的な問いをすべきだ。そして、人を育てるのには、時間がかかると再認識する必要があるのではないか。「時間をかけて人を育てる」という「現代版・人をつくる」ということに向き合うべきだ。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=小田駿一

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