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アートコレクター垂涎の作品を作り続けるジェフ・クーンズがデザインした、BMW M850i xDriveの特別仕様アート・カーに書かれた「POP!」の文字。世界で99台しか存在しないクルマに載せたこの言葉に、ジェフ・クーンズがどんな意味を込めたのか、それは彼のインタビューで明らかになるだろう。

ブルー、シルバー、イエロー、ブラックなど11色の鮮やかな色彩が使われ、ポップ・アートの要素がBMW M850i xDriveのラインや輪郭と見事な調和を見せる、名付けて「THE 8 X JEFF KOONS」は日本でも一般公開のイベントで見ることができる。その詳細は後述するが、まずここでは、ジェフ・クーンズのこれまでをざっと振り返っていきたい。

彼が生まれたのは1955年、アメリカのペンシルベニア州だ。シカゴ美術館付属美術大学で学んだ後、77年にニューヨークに移りニューヨーク近代美術館(MoMA)で美術館の会員勧誘の仕事に就く。美術館のロビーなどで来場者に声をかけ、年会費を支払う会員になるようセールスする仕事だ。MoMAで彼は美術館開館以来、最高の成績を上げたとも言われる。その後自宅で作品制作を始めるが、24歳のころ制作費用を稼ぐため一時株式ブローカーの仕事をしていたこともあった。

1980年、ニューヨークのニュー・ミュージアムで初の個展を開いたのを皮切りにニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンなど各地のギャラリーで作品を発表する。80年代後半には最初の妻との親密なシーンを作品化した「メイド・イン・ヘブン」シリーズで物議を醸す。またアート雑誌の広告に自ら登場、爽やかな好青年ふうのルックスとスキャンダラスな作品とのギャップで話題を集めた。


《バルーン・ドッグ(オレンジ)》。1994年に制作を開始した代表作とされる『セレブレーション』シリーズのひとつ。

ジェフ・クーンズの作品の中には莫大な制作費がかかるものがあり、そのため彼は何度か経済的な危機に陥っている。が、2001年にはオークションで《マイケル・ジャクソンとバブルス君》が当時の自己最高額である560万ドルで落札され、2013年にはオークションで《バルーン・ドッグ(オレンジ)》が存命作家の最高額の5840万ドルで落札された。


《マイケル・ジャクソンとバブルス君》は1988年の作品。右はクーンズ本人。

この間、2010年には彼にとって最初の《BMWアート・カー》を手がけている。このクルマは、数あるBMWアート・カーの17番目となる一台で、BMW M3 GT2をベースに制作されたもの。明るい色のエレメントをクルマが切り裂くようにデザインされたアグレッシブなデザインは「私は速い!」と語りかけてくるような佇まいだ。


2010年にクーンズがはじめて制作したBMW M3 GT2をベースにしたアート・カー。BMWアート・カー・シリーズにおける以前の作品との架け橋にもなった、BMWアート・カーにおける重要なヘリテイジだ。

そんなBMWアート・カーの制作から4年後、2014年にニューヨークのホイットニー美術館で開かれた回顧展では当時、同館最多の動員数を記録するなど、現代アートシーンでの確固たる地位を築いた。

ジェフ・クーンズの作品では美術史の巧妙な引用が特徴だ。初期の「空気ビニール玩具」シリーズは空気で膨らませる安価な人形を鏡を組み合わせたオブジェ。これは店で売られているものをそのままアートに転用するマルセル・デュシャンの手法「レディメイド」にならったものだ。アクリルケースに入れたフーバー社の掃除機を展示する「ザ・ニュー」シリーズもレディメイドの流れを汲むものだけれど、商品は常に更新され続けるという、「新しい(ニュー)」という言葉に潜むパラドックスを表明する。水槽の中央にバスケットボールが静止している「平衡」シリーズでは生と死の間にあるものを暗示している。

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「ザ・ニュー」より。大量生産される新型掃除機をディスプレイしたシリーズ。


「平衡」より。蒸留水と塩で浮力を調整した液体を満たしたガラスケースの中央にバスケットボールを浮かべた。美と価値のバランスの抽象的表現とも、胎児のメタファーとも解釈される。

「メイド・イン・ヘブン」シリーズのようにクーンズ自身が作品に登場するのも特徴だ。これはヨゼフ・ボイスや草間彌生のようにパフォーマンスの記録として本人が登場する作品や自画像とは少し違う位相のものになる。広告ポスターの形式をとったこれらの作品においては、クーンズのイメージは客観的なモチーフなのか、それとも実生活を赤裸々に露出した自画像の一種なのかが曖昧になる。このシリーズに限らず高尚とされるアートと露悪さ、キッチュさとのねじれた関係も魅力だ。


物議を醸した「メイド・イン・ヘブン」シリーズより。クーンズ本人とのち離婚した当時の妻・チチョリーナことイローナ・ストラー。

自作だけでなくメディアにもよく登場するクーンズはいつも上質なスーツに身を包み、爽やかな笑みを浮かべている。そういったいかにもビジネスマン的な振る舞いもまたアートとビジネスの関係を皮肉まじりに表現する、彼の作品の一環と見ることもできるだろう。20世紀、21世紀アメリカの諸相を軽やかに切り取っていく独特の手つきが彼をユニークな存在にしているのだ。



駆け足でジェフ・クーンズがアーティストとして表現してきたもの、そしてその作品がどのように評価されてきたかを述べてきたが、そんなジェフ・クーンズの直近の作品が、2022年に制作したBMWの8シリーズをモチーフにしたアート・カー「THE 8 X JEFF KOONS」だ。

ジェフ・クーンズはこのクルマについて、こう述べる。「BMW 8シリーズは私の夢がつまったクルマです。本当に特別な経験でした、BMWの特別仕様車をデザインすることは長年の夢だったのです。スポーティーで華やかでありながら、ミニマリストでコンセプチュアルでもあります。(中略)大切なのは、人と人との関係性や、自分を取り巻くすべてのものへの意識です。ドライバーと同乗者全員の歓びが高まっていくようなクルマを目指しました」

エクステリアには11種類のボディーカラーを組み合わせ、シートには印象的なレッドとブルーを組合わせた。それは、コミックのスーパーヒーローのカラーであると同時に、BMWの高性能モデルであるBMW Mのカラーを反映。リアに向けてデザインされた爆発したようなカラーラインは、前述の2010年にジェフ・クーンズが制作したBMWアート・カーのオマージュであり、さらに今作ではパワーとスピードをイメージさせるものとして配されている。

このアート・カー THE 8 X JEFF KOONSは、5月28日に六本木ヒルズのHills Café/Spaceで一般公開展示。店舗やオンラインストアでの販売は行わないとしている。そして日本独自の取り組みとして専用のウェブオークションサイトで6月16日から6月27日まで入札を実施する(要事前登録)。オークションによる売上は、ボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」へ寄付される。この団体は、3歳から18歳未満の難病と闘う子どもたちの夢を叶え、生きる力や病気と闘う勇気を持ってもらうべく1980年にアメリカで設立された非営利のボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ」の日本支部だ。

さらに、一般公開に先駆けた5月27日には、招待客限定のイベントも開催。この限定イベントでは「THE 8 X JEFF KOONS」実車展示だけでなく、GMOインターネット代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿と、森美術館特別顧問の南條史生によるトークショーも開催予定。ジェフ・クーンズおよびモダンアートに興味のある向きにとっては、貴重な発見を得られる機会となる。このイベントでは抽選で3組6名を招待。詳細は以下リンクより。


特別展示会開催
現代アートの巨匠、ジェフ・クーンズがデザインを手がけた、BMW 8シリーズのアート・カー「THE 8 X JEFF KOONS」の展示会を開催。

開催日時:5月28日(土) 11:00〜20:00
開催場所: ヒルズ カフェ/スペース会場
東京都港区六本木 6 丁目 10−1 六本木ヒルズヒルサイド2F

事前申し込みはこちら

「VIP Reception」に3組・6名様をご招待
応募期間:2022年4月20日(水)〜5月11日(水)23:59まで
開催日時:5月27日(金) 18:00〜20:00(17:30受付開始)
開催場所: ヒルズ カフェ/スペース
〒106-0032 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ ヒルサイド2F

応募はこちら

オンラインチャリティオークション実施
THE 8 X JEFF KOONSはオンラインによるチャリティオークションにて販売されます。落札代金は全額、子どもたちを支援するボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」に寄付されます。

申込期間:4月20日(水)〜5月31日(火)23:59まで
本人確認期間:5月16日(月)〜6月6日(月)23:59まで
入札期間:6月16日(木)〜6月27日(月)23:59まで

オークションへのエントリーはこちら

Promoted by BMW Japan / text by Naoko Aono / edit by Tsuzumi Aoyama

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