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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Getty Images

ラスベガスが大きく変わろうとしている。

アメリカのエンターテインメントの中心地と自他共に認めるラスベガスは、新型コロナ対策が緩和されるに従って大きく集客を伸ばし、多くのカジノホテルは史上最高の収益を上げるに至っている。

「カジノの街」から「リゾートの都市」にイメージを転換しようとしてきたラスベガスでは、多くの大企業が上場を通して集めた資金によって、巨大な施設が競うように建てられてきたが、その「競争」がいまや「独占」へと再編成されようとしている。

例えば、大手カジノ企業であるシーザーズ・エンターテイメント・コーポレーション。この会社は、その昔モハメド・アリが戦ったことでも有名なシーザーズパレスを傘下に持っていたが、ブランド力がいまひとつで、2015年には破産を余儀なくされていた。

ところが、このときに、シーザーズグループが所有していたホテルの土地や建物を買い取った資産管理会社ビッシイ・プロパティーズが、その後大躍進。いまや、ラスベガスの「影の大番長」となりつつあるのだ。

「らしさ」を失うラスベガス


こうしたラスベガスにおける覇権再編の流れは、この数年、まことしやかに噂されていた。

その理由の1つは、現代ラスベガスの立役者たる、ミラージュホテルの創始者スティーブ・ウィンとヴェネチアンホテルのシェルダン・アデルセンが高齢になってきたことだ。

ラスベガスの歴史は、基本的にカリスママフィアやカリスマ経営者が、圧倒的な集客センスとリーダーシップでゼロから立ち上げて来たものだと言っていい。その属人的な魅力が果たしてきた役割がとても大きいのだ。

しかし、スティーブ・ウィンは社内でのセクハラ内部告発を新聞にすっぱ抜かれ、経営から一切手を引かざるを得なくなったし、ウィンの最大のライバルであるシェルダン・アデルセンも、コロナ禍の中、他界してしまった。

ラスベガスのカジノの経営者を見渡してみれば、「カジノ業界で叩き上げてきた」ビジョンのある人物はほとんどいなくなり、ウォールストリート出身の財務マンが電卓をたたきながら仕切る様相となっている。街は拡大し、集客も増加しているが、地元の人間にしてみれば、ラスベガスはその「らしさ」を失って、色あせて見えてきてしまっているようだ。

今日、ラスベガスを訪れる人々にとって最も人気のあるホテルは、スティーブ・ウィンの絶頂期に建てられたベラージオホテル(1998年竣工)か、シェルダン・アデルセンのベネチアンホテル(1999年竣工)だという。金融や投資売買の専門家によってこの後にたくさん建てられたホテルが結局支持されていないのを見ても、ますます金は儲かるが「らしさ」が失われていくラスベガスの将来を想起させる。

資産管理会社に資産を売る経営手法は、本業のカジノの運営に有利子負債を軽減させる、小手先の株価対策だと思われてきた。

しかし、前述のビッシイ・プロパティーズは、不動産投資のプロをトップにすることにより、カジノ業界やエンターテインメント業界に特化した不動産投資会社を打ち出した。こうした投資方針のアピールが投資家にとってわかりやすかったことも、大躍進の理由の1つだろう。

2017年に創立したビッシイは、翌年には上場を果たし、従業員が約150人という所帯でありながら、売り上げは約1500億円、純利益が1000億円という強烈な利益体質の会社だ。現在29のカジノホテルの資産を持ち、4つの名門ゴルフ場を管理している。

そしてさらにビッシイは、これまでのシーザーズ系列とは全く関係ない、アデルセンのホテルの土地と建物に対する購入を申し入れ、このほどそれが完了した。

文=長野慶太

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