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日本最大級の総合コンサルティングファームのひとつであるPwCコンサルティング合同会社。同社の有志が立ち上げた、ソーシャル・インパクト・イニシアチブ(以下、SII)という部門横断型組織がいま、その存在感を強めている。これまで第三者的視点でクライアントにコンサルテーションしてきた同社において、社会課題解決のために、社会起点で発想し、クライアントを巻き込むことを目指すという点において独自性が評価されているのだ。

当連載では、SIIの意義や可能性に迫ってみたい。第一回となる今回は、SII立ち上げの中心人物となった宮城隆之氏と屋敷信彦氏に、チーム立ち上げの契機となった体験、コンサルティングファームとしての社会課題へのアプローチについて話を聞いた。


体験型フィールドスタディで向き合った社会課題


──ソーシャル・インパクト・イニシアチブ(以下、SII)の原点、またおふたりが社会課題の解決に向き合うようになったきっかけを教えてください。

宮城隆之(以下、宮城):私は学生時代、周囲に将来有望な研究者となるであろう仲間がいる中で日々を過ごしたのですが、その時に感じたのは、高い能力や知識を持った人達がパワーを結集すると非常に大きなインパクトを生むという事でした。そして社会にとってより良い方向へこれを活かせないだろうかと考えたのが、社会課題に向き合う最初のきっかけでした。
その後もビジネスの世界で、多種多様な考え方・スキルを持つ多くのステークホルダーに出会ったことで、力を合わせれば、より複雑で広域な課題も解決できるはずという想いを強くしていきました。

そのような中でSII立ち上げの最終的なきっかけとなったのは、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県女川町の復興状況を視察し、現地NPOやコミュニティの方々と対話した当社主催の体験型フィールドスタディでの経験です。
屋敷さんも参加されていましたが、何を感じましたか?


PwCコンサルティング合同会社パートナー 屋敷信彦氏

屋敷信彦(以下、屋敷):私にとっても女川町のフィールドスタディの経験は、アクションを起こす大きなきっかけとなりました。

私は以前PwCオーストラリアに出向していた際に、現地の市民や同僚が持つ多様な価値観に影響を受け、帰国後に自身のコンサルタントとしての存在意義を再考していた中で、女川町のフィールドスタディに参加しました。そこで力を結集して本気で地域課題の解決に取り組む方々との対話を通じて、日本社会の課題を正面から考えることになったのです。

その中でも特に印象に残ったのは、女川町は震災からの復興を成し遂げても、震災以前からある人口減・過疎化の問題は残るという話でした。また復興の裏で、女川町以外の地区にも課題が遍在していることを知りました。私はコンサルタントを続けていくのであれば、提供するサービスは、何らかの形でこうした社会課題解決の役に立っているべきだと考えるようになりました。この考えが私の礎にあり、SII推進の上での原動力となっています。

宮城:私も同世代の女川町長や公民連携室室長が、命をかけて課題解決に奔走されている姿に深く感じ入りました。もっと自分達にもできることがあると考え、本気で行動を起こそうと思い、SIIを立ち上げました。

SIIという新たな取り組みが必要だった理由


──社会課題解決には、プロボノなどの手段もあります。なぜSIIという新たな取り組みが必要だったのでしょうか。

屋敷:プロボノ活動も社会課題との接点という意味では重要な取り組みで、私も一時期、個人的に携わっていたのですが、社会課題解決には理念だけでなく、やはり実現するための資金力も必要だと感じました。そうした面も含めて実行力のある団体が、社会課題解決に現場で取り組むことを後押しする枠組みを設けるため、SIIに力を入れていきました。

宮城:SII設立の最大の動機としては、社会課題解決を最も効果的に進めるために、産業や専門領域の枠組みを超えたいという点がありました。1団体・1企業・1産業での取り組みでは、できることに限界があります。プロボノ活動も重要なのですが、やはり事業として成立させて、サステナブルな課題解決を図る必要があると考えています。社会・環境課題を解決しながら、ビジネスで優位性を示すモデル構築を目指すのがSIIのミッションです。

屋敷:価値を最大化させるために、人材の持つ力を組織としてのパワーにしていくことも重要な観点ですよね。

宮城:そのとおりです。SIIに集うメンバーは、非常にモチベーションが高く、やり抜こうとする粘り強さもあります。これらメンバーの力を合わせ、組織としての力に最大限変えていけるよう、部門や専門領域にとらわれることなく、解くべき課題を起点にメンバーが集まり、共通のプロジェクトに取り組める体制を作っています。

なぜ、コレクティブ・インパクトにこだわるのか


──SIIの核となる概念に、「コレクティブ・インパクト・アプローチ」があります。これは、「社会の多くのステークホルダーを巻き込みながら、各者がそれぞれのくくりを超えて協働し、さまざまな社会課題に取り組むことで集合的なインパクトを最大化する」という考え方ですが、なぜこの概念が必要なのでしょうか。


PwCコンサルティング合同会社パートナー 宮城隆之氏

宮城:公共・社会視点では、複雑かつ長期化する課題を解くためには、各ステークホルダーの強みを持ち寄りつつ、課題解決に取り組む人とそれを享受する人が必ずしも一致せずとも解決策を推し進めるスキームを作っていく必要があります。そのためには、知識や能力を持った関係者を巻き込む力、つまりはコレクティブ・インパクトを創出する力が重要になると考えています。個々人が「どうしたら集合的なインパクトを生み出すことができるか」と考え、行動に移すという「コレクティブ思考」のもとで、人が集まり、より大きなインパクトが出せる集団になっていく……。これこそが、私達SIIの目標でもあります。

屋敷:従来のコンサルティングは、クライアントである企業のコーポレートイシューを解決して、その対価を受け取ることがほとんどです。ただ、私自身も最前線に身を置く中で非常に強く感じるのですが、社会の不確実性が高まり、課題が複雑化する中、1企業では解決できない課題・テーマが増加しています。サステナビリティはまさにそうした課題に該当し、企業・業界・官公庁・アカデミア等が皆で同じ方向へ向かって協働しなければなりません。また、それら多くのステークホルダーがいる中で全体をオーガナイズする役割が必要であり、それがSIIのミッションでもあると考えています。

目指すのはコンサルタントとしての変革


──複雑な社会課題の解決という目標を達成するために、個人として、またSIIやPwC Japanグループとしてどのような変革を目指しますか。

宮城:これからは、企業課題・社会課題・環境課題といった区別はなくなっていくと考えています。個人的に大切にしているキーワードは「ボーダレスとダイバーシティ」です。課題の境目をなくし、ステークホルダーの垣根を超え、多様な視点で考え抜く。また中長期的な視点で根気強く取り組むという姿勢へ、自身だけでなく周りも含めて変革していくことも重要です。SIIはまさにその考え方から育ててきたイニシアチブであり、日本のみならずグローバルにもこの考え方を発信していきたいと思っています。

屋敷:PwCとしては、さまざまなコンサルティングサービスを通じて、重要な課題解決に貢献することに尽きます。重要な課題とは、グローバルレベルのものもあれば、国レベルのものもあります。時代によっても変化します。私達が今まさに解くべき課題を特定し、解決のために貢献できるコンサルタントであり続けるためには、常に自らを変革し続けなければなりません。また個人の想いとしては、誰もが自分らしく生きられる社会を作っていきたいと考えています。


宮城 隆之◎1997年より20年以上にわたり、製造業・小売/サービス業から公共事業まで幅広い分野におけるコンサルティング業務に携わる。2018年、公共事業部門担当パートナーに就任。近年は、主に郵便・物流事業、中小企業関連事業、人材サービス事業といった社会インフラ関連事業でのコンサルティング経験を生かし、公共公的機関のアドバイザーを務めるとともに、それらの機関と協働し、政策提言・デジタルトランスフォーメーション・地方創生・イノベーション戦略など、クライアントのビジネスに長期にわたって大きな価値を生み出していく新たなビジネスモデルを実践している

屋敷 信彦◎コンサルティング会社を経て、2008年より現職。16年から2年間PwCオーストラリアに出向。専門領域は、セールス&マーケティング分野における戦略立案・新規事業創出・デジタルトランスフォーメーション・チェンジマネジメント。食品・飲料・流通・サービス・物流・生命保険・製薬・官公庁など、幅広い業界において、15年以上にわたるプロジェクト経験を有する。近年はパーパス経営の実現、経済性と環境・社会性の両立をテーマに企業のサステナビリティトランスフォーメーションを通じた社会的インパクトの創出に取り組んでいる


PwC コンサルティング 「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ」 連載
#1 本記事|「社会課題の解決にもビジネスの優位性を」──PwCコンサルティングの部門横断型チームが構築する新たなビジネスモデルとは
#2 公開中|「マルチステークホルダーをつなぐハブに」SIIだからこそ実現可能な社会課題解決へのアプローチ
#3 公開中|各業界の脱炭素戦略にどうアプローチするべきか。ナレッジの共有で横断的な施策を提案するPwC コンサルティングSIIチーム
#4 公開中|コンサル視点と当事者目線の両立で社会課題の解決を。PwCコンサルティングがプロボノ活動を積極的に推進する理由

Promoted by PwC Consulting LLC / text by Jonggi Ha / photographs by Tadayuki Aritaka / edit by Kaori Saeki

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