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Clear 代表取締役CEO 生駒龍史

日本酒におけるラグジュアリーマーケットの確立を目指すClear 代表取締役CEOの生駒龍史氏。快進撃を遂げ、世界をも視野に入れる氏に、これまでの歩みとこれからの展望について聞いた。


日本酒のラグジュアリーブランドを世界へ


──まずご自身の会社であるクリアについてご紹介いただけますか?

2013年にClearを設立しました。Clearには“切り拓く”という意味があり、日本酒の新たな市場を開拓していくという想いを込めています。日本酒の事業に特化したベンチャーで、2014年にSAKETIMESというWEBメディアを、2018年にSAKE HUNDREDというブランドをスタートさせました。日本酒を世界に広めることがテーマですので、メディアは英語と中国語でも展開しています。ブランドは今年4年目に入り、昨年は中国・上海でも大々的にデビューを果たしました。先日の日本酒造組合中央会の発表によると、2021年度の日本酒輸出総額は401.78億円に達し、昨対比166%でした。金額・数量ともに過去最高で、海外での日本酒人気はますます高まっていくと見られています。

──元エルメス本社副社長だった齋藤峰明氏が御社にジョインされたことも話題になりました。齋藤氏はどのような職務を担っているのでしょうか?



昨年10月から、社外取締役として全体の方針策定に関わっています。いよいよ実店舗をオープンするのですが、齋藤さんは銀座のエルメス本店をつくった方ですし、店でどのような体験が必要なのか、どのような感動をお客様に提供すれば良いのかというようなこともアドバイスいただいています。

──もともと面識があったのでしょうか?

いいえ。きっかけは1冊の本でした。まだ、いまの事業の形で突き抜けていくのに、当時掲げていた「プレミアム」のキーワードでは違和感があるなとモヤモヤしていた時に、齋藤さんの本を読んだのです。深く感銘を受けて、この人に会えば何かが変わるんじゃないかと直感しました。その頃、たまたまある媒体に記事広告を出す予定があり、対談相手に指名させていただいたのが出会いのきっかけです。2019年の夏でした。

まだ売り上げが1,000万円にも達していない時で、断られてもおかしくなかったのですが、幸い日本酒に関心があるとおっしゃっていただいて、お引き受けいただけました。実際にお会いして、齋藤ワールドにたちまち魅了されました。やるべきことはプレミアムではなくラグジュアリーなんだと、この時に気持ちが固まりました。その後、何度かお話する機会を経た後、齋藤さんにはブランドアドバイザーという形で1年半ほど伴走していただいたのですが、嬉しいことにご本人からさらに深くコミットできないかとおっしゃっていただき、現在に至ります。

これまでのラグジュアリーはリアルを中心につくられてきましたが、僕らはいまデジタルの時代に生きています。既存のラグジュアリーにはなかった成長の仕方や顧客への価値の提供ができるのではないかと考えていて、これからの時代のラグジュアリーをどうつくっていくべきかという齋藤さんご自身のテーマが、僕らのやりたいこととクロスしたのだと思っています。

──今後はエルメスのように、世界的なメゾンを目指していくのですね。

そうなりたいですし、1社の成長だけで終わらせるのでは足りないと思っています。自分たちの事業活動と成長そのものを、産業全体の活性化に繋げていければと思います。

長年、日本酒にも高単価市場があるはずだと言われ続けていましたが、成功しているところもなく、実際には難しいという通念がありました。ですから僕たちの歩みが、結果として後に続く人たちの道になっていることが大事だと思っています。立ち上げから3年で、売り上げは20億に達しましたが、そもそも高単価市場はなかったのですから、どこからか奪ったものではありません。完全にゼロから生み出した新しい市場なのです。

──そうして新たな市場を生み出したSAKE HUNDREDですが、今年はお店も出すそうですね。その理由と展望を聞かせていただけますか?



ラグジュアリーブランドは多様な価値を提供しなくてはなりませんが、当然ながらデジタルでできることとできないことがあります。リアル店舗は情緒的な価値を提供できる場所です。“SAKE HUNDREDの世界”を体感していただき、よりブランドの信頼感を醸成していきたいと考えました。ブランドの命は本物であること。そのオーセンティシティを強力に顧客に訴求できる場がリアル店舗だと思っています。

事業戦略的には、短中期でインバウンドも戻ってくるでしょう。日本に来て、せっかくだから最高の日本酒を飲んで帰りたいという人たちに、最高の体験をして帰っていただきたいし、日本酒のファンになってほしい。僕らがその玄関口となれればと考えています。

──オープンはいつになりますか?

2022年の秋を予定しています。
同じコストをかけて、例えばテレビCMを打つこともできるでしょう。ただ、CMは認知をあげていくものであり、店舗はブランドのオーセンティシティを上げるものです。いま僕たちに必要なのは後者です。このブランドが信頼に値する本物であることをご理解いただくために店舗をつくり、ファクトを重ねる努力をしっかりとやっていこうと思っています。

業界の救世主だと励まされて




──この4年間を振り返ると、どのような出来栄えでしょうか?

これまでを振り返ると、視座と実態が交互に上がっていっているような印象です。売り上げが4000万、1.5億、20億と上がり、今は急成長フェーズで投資をしていく段階ですが、大きなターニングポイントはやはり、プレミアムからラグジュアリーへと転換したことです。そこで視座が上がって、リブランディングを行い、売り上げが上がり、上がった売り上げに対して自信がついたことで、より高みを目指していこうとしている最中です。

──コンサルティング会社は付けているのでしょうか?

いいえ。何がやりたいかは自分たちの内側にしかないと思っているので。やりたいこと、やりたくないこと、好き嫌いは徹底して自分たちの中にある。心の声を聞いて、何がやりたいかが分かってこそ初めて自己紹介ができるし、お客様にもご理解いただけるのだと思います。

──そうした強いアイデンティティや意識を持てるのも、やはりSAKETIMESという日本酒を扱うメディアがあるからではないでしょうか?

おっしゃる通りです。メディアを運営していることによって知見やネットワークが広がり、全国の蔵を回りながら日本酒の可能性を信じることができました。自分で記事を企画し、取材し、写真を撮って書いて、編集までしていたのですが、足を使って全国を回った経験がとても大きかったですね。訪ねた蔵は、売り上げが数千万の家族経営から300億を超える大手までと幅広く、さらには海外の酒蔵にまで足を運びました。その経験なくしていまはありません。

──ペアリングも含め、日本酒の楽しみ方のバリエーションが時代とともに増えていますが、日本酒がすごい、面白いと思われたきっかけを教えてください。

美味しい日本酒に出合ったことに尽きます。僕自身は、実はあまりお酒に強くないのですが、酒屋の息子である友人から勧められて飲んでみたら、驚くほど美味しかった。穏やかで丸みのある、柔らかな味わいが衝撃的でした。そこで興味が湧いて調べてみたら、ECサイトもメディアも新規産業もない。こんなに素晴らしいもので、無限の可能性があるのに、世の中がそれに気づいていないということに愕然としました。それで、自分がいいと思うものを広げていきたいと思い始めたんです。2011年夏のことでした。

──どちらかというと勢いが衰えていた日本酒ですが、自分が日本酒の未来をつくろうと思ったきっかけはなんでしょう?

下積み時代に真剣に生きた日々が、振り返ればきっかけになったのかなと思います。取材先で掛けていただいた言葉や、語り合った想いが少しずつ自分の中に積もっていて、気がついたら強固な覚悟になっていました。全国の酒造からも応援の言葉をいただいて、信じて全力で駆け抜けた数年間が覚悟に繋がっていきました。

良いものを提供するために人として豊かでありたい


──この仕事をしていて良かったと思う瞬間はどんな時ですか?

お薦めしたお酒を飲んでいただいて、その人が笑顔になった時です。それは10年前も今も変わらず、今後も変わりません。僕にとっての強烈な原動力になります。

──これまで一番美味しいと感じたSAKE HUNDREDは、誰と、どこで、どのようなシチュエーションで飲んだ時でしたか?

去年の11月に、初めて全社員を集めてオフサイトミーティングを行いました。過去を振り返り、未来についてディスカッションして、苦楽を共にしたメンバーたちと同じ未来を見ていることを確認し合った後に乾杯したんです。あぁ、贅沢だな、格別に美味しいなと感じました。



──社員にはどのような人材がいて、どのような分担があるんでしょうか?

社員は現在19名で、少数精鋭のプロフェッショナル集団です。多くのスタートアップは半分がデジタルマーケティング系だったりしますが、うちは商品開発、ブランドマーケティング、カスタマーサポート、リテールなど、職業別に水平展開しているのが特徴です。ブランドは立体的なものなので、どの角度から見てもSAKE HUNDREDであることが徹底されていなくてはなりません。多極的にブランドをつくり上げていく必要があるので、各分野のスペシャリストを集めています。

──Clearで働くことで得られることや、学べることはなんでしょう?

機会の提供はできますが、やりがいや成長は自分で獲得するもので、与えるものではないと思っていますが、社員一人ひとりがそれぞれの人生の中で何かを得ているだろうと感じています。世界のラグジュアリーブランドと肩を並べるであろうSAKE HUNDREDや、世界に広げていくSAKETIMESというメディアをつくるプロセスに参加できるというのは、一生に一度あるかないかの貴重な体験となるでしょう。

──日本ではこれまで、なかなかラグジュアリーブランドが育ってきませんでしたが、どのような課題と勝算がありますか?

ラグジュアリーの条件の一つは規模だと思っています。皆に知られて、皆が追い求める存在だから売り上げが上がるわけで、売り上げの絶対値が低いということは求められていないからであり、求められていないから売り上げられないわけです。これは自戒も込めて言っていることですが、僕らは2,000億を目指しています。2,000億を達成したら、一定のニーズがあると確信できると思うので。



──それを実現するために、何か自分へのインプットとしてやっていることはありますか?

情報のインプットは日常的にやっていますが、事業を健全に成長させていくために、人として自分自身が豊かであるよう心がけています。かつて、家庭や自分を犠牲にしてまで頑張ることが美徳であるかのような見方がありましたが、僕らはそのようなことはしません。世の中に対して良いものを提供していくのであれば、自分が人間として、あるいは夫として、父親として、一個人として豊かでありたいと思います。豊かな土壌があればこそ、そこから良い木が育つのではないでしょうか。何をインプットするかということよりも、インプットするに値する自分であることが大事だと思っています。

──自分が良い状態であるために、何かしていることはありますか?

ビル・ゲイツが年に一度「Think Week」をつくってどこかの小屋に篭り、仕事はせずに1週間とにかく思考を深めるようにしていると聞いたことがあります。とてもいいなと思って、自分も「Think day」をつくるようにしています。家族がいるので1週間も篭ることはできませんが、月に1、2回、ホテルの部屋をデイユースで借りて、ひたすら本を読み、メモを取っています。自分の中の淀みがリセットされるんです。

──生駒社長にとっての三種の神器とはなんでしょうか?

普通に考えるとアイフォン、マック、アップルウォッチですが、もっと深く突き詰めると、神器は自分自身だと思います。自分の思考そのものが、何より大事な資産ですから。

──最後に、サロンへの期待や要望がありましたらお聞かせください。

まずはサイト上で、メンバーにどういう方々がいらっしゃるのかを知りたいと思っています。いきなりメンバーの方に会いにいくとか懇親会をすることは、やはりハードルがありますよね。会員の方々の個性をもっと可視化していただけると、声をかけやすいし、かけられやすいのかなと思います。

あるいはあえてビジネスのことは考えずに、閉ざされた空間で、許されたメンバーだけが集うサードプレイスのような、緩くコミュニケーションが取れる場所になってもいいのかもしれません。家庭、仕事、フォーブスサロンという感じでしょうか。


いこま・りゅうじ◎大学卒業後、2年間の社会人経験を経て独立。2013年にClearを創業。「日本酒の未来をつくる」をビジョンに掲げ、日本酒に特化した事業を展開する。日本酒ブランドSAKE HUNDREDのフラッグシップ商品「百光」は世界的コンクールで数々の賞を受賞。業界では不可能と言われていた高価格市場を開拓し、昨年は約13億円の資金調達を実施。海外進出を視野に入れたブランド強化を目指している。国税庁主催「日本産酒類のブランド戦略検討会」委員。

Promoted by Forbes JAPAN SALON / interview & text by Shigekazu Ohno(lefthands) / photographs by Takao Ota

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