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経済とアート。一見、対極にあるように思えるこの2つは、密接な関係を築いてきた。アート市場は、全世界がコロナ禍に見舞われた2020年以降、意外にも活況を呈している。コロナ禍によってアートの世界でどのような変化が起きているのか、また、経済とアートの関係性とアート作品がもたらす価値などを、日本を代表するアートコレクターでもある横浜美術大学の宮津大輔学長に聞いた。
2月17日にバーチャルセミナーを開催 Credit Suisse
※本セミナーは終了いたしました。ご応募ありがとうございました。
Credit Suisseのアートに関する取り組み

資産として注目を集めるアート作品


―世界のアート市場が活況を呈していますが、その背景にはどのような要因があるとお考えですか?

宮津大輔(以下、宮津):アートは、空売り可能な株式などとは異なる実物経済です。作品という実際に存在するモノを取引するからです。現在、世界中でコロナ対策のため、市中に貨幣がどんどん供給されている、いわゆるお金がだぶついている状態です。正に富裕層はさらに富み、貧困層はさらに苦しくなるという二極化が進んでいます。そんな状況において、評価が確立したアーティストの作品は、確かな資産としてますます価値が高まる傾向にあります。もちろん、アート作品は、経済的な価値としてだけではなく、新しい気づきや美を享受する喜びを与えてくれるなど、人生を豊かにしてくれます。そんなアートの力に魅せられた富裕層が増えているのではないでしょうか。

―宮津学長は長年アート作品を集めてきたコレクターでもいらっしゃいます。

宮津:元々は企業に勤務していましたが、30歳のときに自分へのご褒美として購入したのが大ファンだった草間彌生さんの作品でした。当時はバブル経済の名残もあり、同年代の友人たちは、高級腕時計やスポーツ・カーを買っていました。私は子どもの頃から古典や近代美術が好きで、自分でも好んで絵を描いていました。大学生の時に美術館で草間さんの『無限の網』に出会い、それ以来虜になってしまいました。それからというものは、何としても彼女の作品を手にいれたくて、ようやくあるギャラリーからボーナス2回分の価格で1953年制作の「無限の水玉」というドローイング作品を購入しました。それから約30年、今では400点にも上る現代アート作品をコレクションしています。

コロナ禍で変化する現代アート作品


―30年近く現代アートと向き合ってこられて、アートと時代や経済との関係性については、どのように感じていますか?

宮津:「現代アート」は英語のコンテンポラリーアートの翻訳であり、“Contemporary”には、現代という意味に加えて、「同時代の」という意味もあります。つまり、今の時代を表現すべき問題意識が内包されていなければ真の現代アートとは呼べないと私は考えています。換言すれば、現代アートとはその時々の社会が抱える課題や世相を表現してきたといっても過言ではありません。例えば、日本では2011年の東日本大震災を境に作品の傾向ががらりと変わりました。それまでの“かわいい”アートから政治的な問題意識を伴った作品へと多くが変化してきています。

時代をさかのぼると、14世紀中ごろから16世紀にかけて起こったヨーロッパのルネサンスも、当時の状況を捉えた“現代アート”でした。14世紀中ごろ、ヨーロッパでは黒死病と呼ばれたペストの大流行で世界人口のおよそ1/4が命を落としました。免罪符や祈祷は、何の効力もなかったわけです。それを契機に、人々は従来の教会中心の中世的な価値観に疑問を抱き、人間性の解放や個性を尊重した芸術活動や科学の発達へと目覚めていくのです。このことからも、現代アートが果たす役割は、今も昔も変わらないことがわかると思います。

一方、アート作品を経済的な側面からみると、世界経済に大打撃を与えたリーマンショックでもピカソなどの作品は、価格の下落が小幅ですぐに回復するなど、その影響は極めて限定的でした。その後も、現在に至るまでアート市場は拡大し続けてきました。欧米や中国の富裕層の間では、ポートフォリオの一角に欠くことのできない“金融商品”として取り入れられています。

―日本では、まだアートを経済的な価値から語ることを憚るような風潮が残っています。

宮津:確かに未だに残っていると思います。しかし、人類にとってアート作品は、ラスコー洞窟の壁画やカトリック教会のフレスコ画など建物の一部であった時代を経て、作品が動産という形態になってからは、貨幣との交換対象物として現在に至るまで存在してきました。しかも固有の言語を超えた翻訳不要の視覚芸術であることから、世界中で受け入れられてきました。例えば、スイスやルクセンブルクなどの金融立国ではビジネスのみならず文化並びに安全保障戦略の重要なツールとしてアートを捉えています。人類共通の財産であるアートを戦略的に保有・活用することで、エネルギー戦略やパブリック・ディプロマシー、外交などに大きな成果を挙げているのです。

―コロナ禍になってから現代アートには何かしらの変化はありますか?

宮津:2つの大きな変化があったと考えています。1つは作品的な側面です。新型コロナのみならず、私たちの社会は今、地球温暖化やマイクロプラスチック、新たな東西冷戦など、解決すべき課題がますます見えにくくなり、対処しづらくなっています。実はこうした課題解決へのヒントが、世界で高く評価されているアート作品には隠されているのです。そういった意味では、従来の(白人男性優位の)人間中心主義から、広義の脱人間主義≒多様な価値観を尊重する時代が到来していることを感じさせます。(コロナは私たちの体内でしか生きられない友でもあり、命を奪う殺人鬼でもあるのです)

もう一つは経済的な側面です。世界は2極化が進んでいます。とくにテレワークの推進やオンライン動画配信、eコマースなどの普及により生活や仕事のデジタル化はますます進んでいます。従ってGAFAやBATHに代表されるような企業は巨大化し、経済格差はますます大きくなっています。こうした経済状況を反映してか、世界中で富裕層による数億円~数百億円という高額な作品の売買が活況を呈しています。例えば、ここ数年中東の王族や中国の富裕層が、マーケット・リーダーとしてアート市場に続々参入しています。また、比較的低価格帯のアート作品(若手の作品やアニメのセル画、今話題のNFTなど)の取引も盛んです。一方で数百万円から数千万円という中間価格帯の作品が厳しいというのが実情です。



人的ネットワーク構築や決断力の強化に


―現代アートが経済やビジネスにどのような影響力を持っているとお考えですか?

宮津:先ほど申し上げたように、優れた現代アート作品は同時代性を備えています。そうした優品の間口は広く、誰でもが簡単に魅せられる一方で、奥が深く、その言わんとすべきところを深く読み解くには、相応の思想、文化、経済、社会に関する知識が不可欠です。そういった面からは、現代アートを通して、リベラル・アーツと呼ばれる教養を身につけることも可能です。当然、そのような知識はグローバルなビジネス上でも大いに役立ちますし、高額な作品を購入するという決断は、必ずやビジネスにおける意思決定力の涵養にも役立ちます。

さらに一人のコレクターとして私が一番実感していることは、アートを通じ多くの魅力的な人々と出会えるという点です。作品を購入したことでアーティストや同好の士と出会い、楽しい会話や食事、時には一緒に旅するなど、得難い時間を共に過ごすことができました。また、コレクションを通じて、かけがえのない友人やビジネス・パートナーと邂逅したという話も、私の回りでは枚挙にいとまがありません。アートを介さなければ決して出会うことのない人々との人的ネットワークを築くことができる点も大きな魅力です。

―最後に、宮津学長は2月にクレディ・スイスの「バーチャルアートセミナー」に講師として参加しますが、アートに興味のある読者にメッセージをお願いします。

宮津:多くのセミナーやオンライン・イベントは、プラットフォーマーや売り手側によるものです。しかし、今回のセミナーはおよそ30年間にわたり国際的に第一線でコレクションを続けてきた私の視点から、つまり利用者側と買い手側に立ってお話をします。優れたアート作品は所有する人の人生を豊かにし、新しい人的ネットワークをもたらすだけでなく、金融商品としても他にはない独自優位性を持っています。従って、アセットのポートフォリオ見直しや、財産の承継をお考えの方にも必ずお役に立てると思っています。


バーチャルセミナー 新型コロナウイルスはアート市場をどう変えるか?~コロナ禍の現代アートとそのトレンド~

日本の現代アートコレクターの第一人者で横浜美術大学学長を務める宮津大輔氏が、コロナ禍のアート市場を分析するバーチャルセミナー。世界のアート市場は、アジア並びに中東産油国の旺盛な購買意欲に牽引され、新型コロナウイルス感染拡大前まで活況を呈していました。しかし新型コロナウイルスの世界的な流行によりその在り方は根本的に変わり、新しいアートの形が生まれつつあります。本セミナーでは、ウィズ/ポスト・コロナ時代のアート界について、またトレンドの変化の傾向を、宮津氏にご自身の経験、深い洞察、アートに関する最新情報を元に分析、解説していただきました。

日時:2022年2月17日(木)バーチャルセミナー
   17:00 セミナー開始、18:00 終了 ※本イベントは終了しました。

講師:宮津 大輔氏 アート・コレクター、横浜美術大学学長、森美術館理事

【ご応募ありがとうございました】
2月17日にバーチャルセミナーを開催
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宮津大輔◎横浜美術大学学長。上場企業の広報、人事管理職を経て大学教授へ。主な研究領域は、アートと経済、社会との関係性。世界的な現代アートのコレクターとしても知られる。著書に『アート×テクノロジーの時代』、『現代アート経済学Ⅱ 脱石油・AI・仮想通貨時代のアート』など。

Promoted by クレディ・スイス / text by Tetsuji Hirosawa / edit by Hirotaka Imai

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