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Photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

「会場に全く別のスイッチが入った」

ショートプログラム(SP)前日の公式練習に登場した羽生結弦選手がスケートリンクに降り立った瞬間のことだ。

コロナ禍、外交ボイコット、人権問題などによるいつもとは違った緊張、また観客は招待者のみという静かな空気の中で迎えた北京冬季オリンピック。

男子フィギュアスケート競技は、団体戦銅メダルからの好調を維持した鍵山優真選手が銀、宇野昌磨選手が銅メダルを獲得。フリースケーティングで4回転半ジャンプ(クワッドアクセル、4A)に果敢に挑戦した羽生選手がSP8位から巻き返しての4位入賞という結果で幕を閉じた。

今大会、JOC(日本オリンピック委員会)の公式フォトチームとして現地入りし、2020年から日本スケート連盟のオフィシャルフォトエージェンシーとして数多くのフィギュアスケート大会を撮影してきたアフロスポーツの長田洋平カメラマンと現地デスクを務める高橋誠氏が、「いつもと違う」と印象に残った写真3枚を選び、レポートしてくれた。

1. 羽生結弦選手が演技後に見せた「笑顔」


これまでの大会映像からも伝わってくるように、羽生選手はまわりに人を寄せつけないオーラがあると言いますか、もともと自分に意識を集中して調整していくタイプです。だから、「いつも通り」だと言えばそうなのですが...... 彼が北京入りして、初の公式練習に姿を現した時のスタッフの方々や何より私たちカメラマンの緊張感は、明らかにいつもと違ったものでした。会場の雰囲気がピリッと一変しました。

開幕時から日本のみならず、中国、アジアでの「羽生選手はどこ?」といった報道は加熱しており、会場の外にもファンが詰め掛けるなど、とにかく熱烈な注目を集めていました。この日のカメラマンの撮影の場所取りも、朝の5時には終わっていたほど。私自身も「またここから本番」とスイッチが切り替わりました。

撮影場所については色々考えましたが、ショートとフリー、同じ場所から撮ることにしました。

リンクサイドについては抽選が行われるのですが、あまり良い位置に当たらなかったため、また今回観客が招待客のみだったこともあり、観客席の2階くらいの高さの場所を選びました。

日本国内の大会ではなかなか取れないポジションです。演技はもちろん、演技前あるいはキス&クライに向かう時の選手のふとした表情も撮りたいと思い、そこに決めました。これまでの撮影経験からの直感といったようなものもありました。

クワッドアクセルという大きな挑戦


フリーの撮影では、6分間練習の間に、使用するレンズの距離感をあわせ、とにかく4Aをしっかり集中して撮れるように意識して、ちょこちょこ調整をしました。その時、いつもより会場が静かなこともあってか、羽生選手の「ふっ!」「ぱっ!」といった、感覚をつかむためのような声が聞こえてきました。4Aへの気合の入れようが強く伝わってきて、撮影への緊張感、集中も一気に高まりました。

その甲斐もあって演技でも狙った写真が撮れましたが、印象に残ったのはメインに掲載したこの写真です。フリーの演技を終えてリンクサイドに戻った時に観客席で応援していた日本代表チームに向かって見せた、何と表現すればよいのか、あたたかい笑顔の1枚です。

ほっとしたような、あるいは解放されたかのような表情が印象的で、孤高の存在ではあるがチームの一員でもある、羽生結弦らしくもあり意外でもある彼を見た気がしました。

編集=宇藤智子

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