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妖怪経済草双紙


カーボンフリー社会の実現は人類共通のテーマとされる。世界中の専門家の95%以上が、温暖化は悪いことで、その主因は人間が排出するCO2だ、化石燃料が元凶だ、と言っている。他方、数万年という地球の時間軸で見ると、温暖化は太陽から受けるエネルギーの強弱が大いに影響し、地軸や公転面がズレることによって生じるそうだ。ミランコビッチ・サイクルという有名な理論である。

しかし、昨今のメディアは、何はともあれ化石燃料撲滅の一辺倒だ。

もう少し、別の切り口や異説があることを踏まえてもよいのではないか。それに、化石燃料問題は国際政治問題でもある。国際標準を狙うEU、一帯一路の名目にしようとする中国、そこはかとなく距離を置いている米国、いずれもしたたかな国家戦略に裏付けられている。日本だけが貧乏くじを引くことがないか。メディアによる検証がいまこそ大切だ。

化石燃料は産業革命をけん引し、人々の生活を飛躍的に向上させてきた。ITも仮想通貨も化石燃料の恩恵を受けてきた。人類の光明そのものだった。それが今や人類最大の敵とみなされている。

メディアの真骨頂は適時適切な真実の報道にある。真実とは「真がわかりにくい事実」である。真実はひとつではない、ともいわれる。だからこそ、メディアは謙虚であらなければならないし、不断の勉強を怠ってはならない。通説必ずしも真説ならず。多様性を説きながら自ら単一性の一方通行では困る。

まして受け狙いばかりのバイアスのかかった発信はご法度である。社会の木鐸、公器たる電波などの「上級国民」意識にあぐらをかくと、いつの日か、そっぽを向かれる。このままでは、メディアが化石燃料になる日も遠くない。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボード、嵯峨美術大学客員教授などを兼務。

文=川村雄介

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