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2021年もまた、Forbes JAPANは社会を動かす、未来をつくるリーダーシップ、アントレプレナーシップをもった経営者たちを取り上げてきた。そんな2021年の締めくくりとして、この1年でForbes JAPANの誌面を通じて取り上げた「今年の100人」にフォーカスし、バーチャルセッションを中心としたオンラインカンファンレンスが開催される。それが、今年が初の試みとなる「Forbes JAPAN 100」だ。

そしてそのセッションのひとつとして、12月20日に「Impact Entrepreneurship Summit」が配信された。同サミットでは、クラウド型ビジネスアプリケーションを提供するセールスフォース・ドットコムの常務執行役員でSalesforce Ventures 日本代表・パートナーの浅田賢をホストに、Forbes JAPAN「日本の企業家ランキング2022」においてセールスフォース・ドットコム特別賞を受賞したユニファ代表取締役CEO 土岐泰之、グッドパッチ代表取締役 兼 CEO  土屋尚史、One Capital代表取締役CEO 浅田慎二の3名をゲストに迎え、「企業が社会課題に取り組む意義と課題」、そして「中長期的戦略から考える現代社会におけるステップアップのヒント」を探った。

本稿では、そのイベントの様子を振り返っていきたい。


保育業界のDXを推進するユニファが特別賞を受賞


私たちが考えるビジネスというのは、単に利益を上げて株式価値を最大化することのみならず、さまざまなステークホルダーに対して価値を届けるためのプラットフォームである——。

これは、セールスフォース・ドットコム創業者のマーク・ベニオフの言葉だ。この言葉を実践している、つまり「ビジネスが世界を変えるためのプラットフォームであることを実践している企業」であるとして、11月に発表された「日本の起業家ランキング2022」の受賞企業の中から、セールスフォース・ドットコムはユニファに特別賞を贈った。

「ステークホルダーは従来、利害関係者を意味しますが、私たちは地球環境や基本的人権への配慮などさまざまな社会問題も含まれると考えています。ユニファ様は、保育業界のデジタル・トランスフォーメーションを推進し、その事業を通じて、保護者に『子どもの安心安全』という価値を届けています。現場で働く保育士の業務を大幅に効率化することで保育の質を高めている点、そして女性の社会進出に多大な貢献をしている点から特別賞を贈らせていただきました」(浅田賢)


浅田 賢 株式会社セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 Salesforce Ventures 日本代表・パートナー

一方、受賞した土岐泰之は、その喜びを次のように語る。

「私たちは、保育士不足、女性の社会進出、待機児童など、さまざまな社会問題を解決したいという思いで取り組んできました。今回の受賞は、テクノロジーやデータの力を活用する『スマート保育園構想』を評価していただいた結果だと、実感しております」(土岐)

スマート保育園構想とは、その地域の保育園が、保育士や保護者から選ばれる保育園になっていくことを目指す取り組みだ。

「たとえば、手書きで5分おきに保育帳にお昼寝中の子どもの様子を記録していた業務が、医療機器で体の傾きをチェック、自動記録することで業務の生産性を格段に上げることができた。ICTやIoTを活用することで子どもの状態を可視化するとともに、業務を効率化することに成功したのです。結果、空いた時間を子どもと向き合う時間に充てることができ、保育の質の向上につなげています」(同)


土岐泰之 ユニファ株式会社 代表取締役 CEO

グッドパッチでは、社会課題の解決に取り組む事業・組織に対し、デザインの力を用いて事業の言語化・可視化することで、その事業における社会への貢献がより認識されやすくなるよう支援を進めている。

「昨年、貧困家庭におけるプログラミング支援、そしてフードロスに取り組む事業者・NPOのブランディングをデザインの力で支援しました。プロダクトのデザインだけではなく、会社自体がどういうことを大切にしており、そのサービスによって社会がどのように循環しているのかを、社員全員が共通言語で認識できるようにしました。表には出にくいのですが、社員が同じ言語、同じストーリーを話せるような可視化の支援に取り組んできたのです」(土屋)

ではこうした起業家の取り組みについて、投資家はどのように捉えているのだろうか。One Capitalの浅田慎二が続ける。

「たとえば日本社会における効率の悪い印鑑・紙・ファックスなどによる時間の浪費は、経済の浪費でもあると考えています。私たちベンチャーキャピタルも、こうした『無駄』を社会課題と捉え、昨年からさまざまなスタートアップに投資しています」


データ活用の“その先”の未来とは


続いてセッションのテーマになったのが、「データ活用のその先の未来」だ。社会課題の解決に向けたデータ活用の重要性について、専門家はどのように捉えているのだろうか。

「データ活用の分野や適用については次の3点から今後も広がりを見せると考えています。1つ目は、コロナ禍によりデジタル・トランスフォーメーションが進んだ点です。対面からリモートへ、紙から電子データに移行せざるを得なくなりました。2つ目は、日本社会における非効率を改善しなければならない点です。物流、小売りの人材不足をはじめとして、日本の労働人口の減少が顕著になっています。データを活用することによって生産性を向上させることが必要だと考えます。

そして3つ目は、政府の保有するオープンデータに皆がアクセスできるようになることです。デジタル庁の発足により今後、デジタル・トランスフォーメーションが進み、政府の保有するオープンデータが整備され、透明性が高くなるでしょう。データを採取、蓄積をすることでビジネスチャンスが生まれると思っています」(浅田賢)

海外においては、データ活用の重要性をどのように捉えられているのだろうか。

「2011年、投資家のマーク・アンドリーセンは『ソフトウェアがさまざまな産業を食べている』と述べました。現在、アメリカにおいては、ソフトウェアのスタートアップ企業が大半を占めています。旅行であればAirbnb、オンデマンドであればNetflixなど、すべてのビジネスがソフトウェアを通じて顧客に接点をもつことが生き残る術になる、という時代が来ているのです。データを活用するのか否かではなく、活用する前提で、自社の顧客の利便性を高めるために利用履歴を分析し、ソフトウェアを改善していくことが重要ではないでしょうか」(浅田慎二)


浅田慎二 One Capital株式会社 代表取締役CEO

さらに土屋は、データを可視化することに大きなビジネスチャンスがあると補足する。

「今まで見えなかったデータを可視化し、取れなかったデータを取れるようにすることが新たな価値につながります。


土屋尚史 株式会社グッドパッチ グッドパッチ代表取締役 兼 CEO


たとえば、かつて可視化できないと言われていたテレビCMへの投資効果の可視化を実現した『ノバセル』(ラクスル)は、マーケットを大きく変える事例です。可視化できなかったものを使える形で可視化できれば、強いビジネスの後押しになっていくでしょう」(土屋)

例えば土岐が業務効率化に取り組んだ保育園でも、医療機器活用のほかに、写真や動画を用いて子どもたちの発達データや教育データを明らかにし、分析の支援に取り組んでいるという。さらに、集めた写真や動画データを保護者に販売するなど、新たなビジネスモデルも確立されつつある。

最後に、企業が社会の向かう先を捉える意義、社会に即したデータ活用のその先について、浅田賢は「私たちが知らない業界、業種、今後その領域のスタートアップと一緒になって、ビジネスで世界をよりよく変えていきたい」と強調する。

社会課題の解決とビジネスによる利益拡大は二律背反ではなく、むしろ共存可能であり、ビジネスチャンスでもある。そんな“リアル二刀流”を武器に、次世代のスタートアップが偉業を達成していく姿に期待したい。

▶本セッションのアーカイブ動画の視聴はこちらから

Promoted by セールスフォース・ドットコム / Text by 金沢健太

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