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レイ・イナモトが考える「世界に通用するキャリア」の作り方

イラスト=Yi Pan/I&CO

「君の仕事は10年後にはなくなってるよ」

20代前半のある日、僕はそんなことを言われた。

当時、まだ駆け出しのグラフィックデザイナーだった僕は、ニューヨークのR/GAというクリエイティブ・エージェンシーで働いていた。発言の主は、マイクロソフトのエンジニア。会社にやってきて、新しいデザインソフトウェアや技術のデモンストレーションしていた時のことだった。

不安定なキャリアのスタート


幼少期から10代半ばまで、僕は日本の飛騨高山、そしてさらに山奥にある清見という村で育った。人口より牛の数のほうが多いぐらいの田舎だ。そこでは15歳まで暮らすのだが、高校からは、親が借金をしてまでスイスに留学をさせてくれた。そして大学で美術を学ぶために18歳で渡米をする。90年代の話だ。

20代のはじめに、大きな夢を抱いてニューヨークに引っ越した。2000年直前「インターネット・バブル」の最盛期で、職はあふれていたにも関わらず、就職が1年近く決まらず、ほぼ無収入で厳しい時期を過ごした。

ようやく決まった初めての会社は、少ししか続かず転職をした。次の就職先がデザイン業界では名門であったR/GAという会社だったのだが、入社後2カ月で僕を雇ってくれた上司がいなくなってしまい、喪失感に駆られた。非常に不安定なキャリアのスタートだった。



30代の時にいた会社では、そこそこ実績が出始め昇進もできたものの、会社が買収され、方向性に徐々に疑問を持ち始めていた。

40歳になる頃には、自分がいた業界の終焉が見えて、将来に対する危機感を抱いていた。その会社に残っていても、自分の仕事の未来は全く保証されていないことをジワジワと感じていた。

「君の仕事がなくなる」と言われてから15年ほど経った頃、振り返れば僕が新卒で就職した会社はとうの昔に消えており、当時重宝されていた多くの会社も過去の存在になっていた。多少時間軸の違いはあったものの、あのエンジニアの言葉は現実になっていた。

世の中の変化、キャリアの進化


日本では、長らく60歳だった定年が引き上げられ、2025年から65歳定年制の義務化が決定している。アメリカでは一部の職種を除いて定年退職はなく、イギリスにおいては、2010年に全ての職種において定年制度が廃止さている。今や70歳を超えて現役で活躍する人も少なくない。そう考えると、僕自身のキャリアには、後半どころか延長戦も十分残っている。

医療の進歩によって人の寿命が長くなり、キャリアも長くなっている一方、近年日本では早期退職が増えている。2020年に希望退職者募集の計画を発表した上場企業は約100社で、前年比の2.6倍に急増したという。

文=レイ・イナモト

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