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PwC Japanグループ 坂野俊哉(左)と磯貝友紀(右)

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が、企業経営において最も重要な戦略といわれるその実情を、多数の企業のサステナビリティ経営支援に携わる、PwC Japanグループの坂野俊哉と磯貝友紀に聞いた。


「環境・社会」と「利益」の両立へ


「地球と共存するためにSXを進めるか、一緒に死に絶えるか。いま、企業に残された選択肢は、ひとつしかありません」

PwC JapanグループのSX専門組織サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンスでテクニカルリードを務める磯貝友紀は、冷静に、確信に満ちた口調でそう言い切る。これまで多くの企業は、地球環境や社会に負担をかける『外部不経済』を生み出すことで利益を拡大してきた。だが時代は明確に変わった。地球環境や社会を維持・改善することを前提としない企業はもはや生き残ることができず、SXは『最重要課題』になるというのだ。

サステナビリティ経営の専門家として活躍する同組織のエグゼクティブリード、坂野俊哉は企業を取り巻く現状を『重なり合う亀』に例える。

「これまで、環境価値、社会価値、経済価値はバラバラのものとしてとらえられてきました。しかし昨今、地球環境は親亀、社会は子亀、経済は孫亀という関係にあり、立体的かつ相互依存的に折り重なっていることが明らかになってきました。親亀や子亀がコケる、すなわち地球環境や社会が棄損され続ければ、孫亀である経済、企業もいずれは存続できなくなる。このようにSXは企業にとって全社的な最重要アジェンダとなりつつあることから、PwC Japanグループ全体でサステナビリティを総合的に支援するハブ組織として、サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンスを設立し、活動を拡大させています」

第1世代までは、経済、 環境、社会はそれぞればらばらに存在。第2世代 では、これらには重なる部分があると認識。第3 世代以降では、3つが完全に重なり合うものと認識されるようになった。 出典:『SXの時代』

SXの重要性を決定的にしたのは2015年のパリ宣言だと磯貝は言う。それまでも気候変動や環境破壊は問題視されてきたが、パリ宣言後には各国が具体的なコミットメントを相次いで発表。あらゆる施策が次々と実現するにいたっている。

「パリ宣言当時、日本企業の反応は鈍かったといえます。意味するところを理解するアンテナや、経営戦略的文脈を持ち合わせていなかったからでしょう。そこに追い打ちをかけるように、2020年ごろからは『2050年までに脱炭素社会を実現する』など、日本政府が世界の先進各国に足並みを揃える方針を相次いで発表し始めました。遅れを取り戻すために、日本の経営現場ではSXの実現に向けた具体的な方法論が強く求められています」(磯貝)

坂野と磯貝は2021年、『SXの時代―究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』を上梓。同書は大手書籍販売サイトのカテゴリー別ランキングで1位を記録するなど、大きな反響を得た。

現在、サステナビリティ経営分野の先駆的な専門家として活躍するふたりに、SX実現の取り組みについて、多くの問い合わせが寄せられている。

「SXを目指す企業は、外発型、内発型に区分できます。世の中の変化や、投資家、規制当局からのプレッシャーに対応するため、受け身的にSXに対応する企業が外発型に属します。一方、内発型はSXを自分事としてとらえ、自社のパーパスや経営戦略とサステナビリティ課題を有機的に結びつけられる企業です。日本では外発型が多数派ですが、ここ数年で内発型の企業も徐々に増加しています。今後、内発型への転換を図るための考え方や実践的なノウハウが求められていくでしょう」(坂野)


PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス エグゼクティブリード 坂野俊哉


自社における『北極星』を見つける


SXを進めていくうえで欠かせないファクターは何か。坂野がまず指摘するのは「統合思考」の重要性だ。環境変化に適応しながら自社の目標を成し遂げるには、ものごとをより複眼的かつ長期的視点で洞察する必要がある。さらには、その洞察を利益を実際に生み出している各現場にまで落とし込む細やかなプランニングが必須だ。

「SXは長期的視点で自社の目標を掲げ利益を出し続けること、そしてそのための資源配分の最適化、と定義できるでしょう。多くの日本企業は、中期経営計画で経営サイクルを回してきました。内発型の企業には、地球環境や社会の変化を見据えたうえで、10年スパン、さらにその先にある自社の『北極星』を見いだし、段階的な経営戦略を描いているのです。これは、経営者の統合思考がうまく反映されている結果だと我々は分析しています」(坂野)

坂野はまた環境や社会へのコミットを、『トレードオフ』ではなく『トレードオン』としてとらえる思考の転換が必要だと説く。

「従来、親亀や子亀へのコミットは、企業にとってコストととらえられていました。今後は、そのような考え方は企業経営の足かせとなるでしょう。SXの実現はコストではなく、自社も含めた全体の利益につながる。根本的な思考の転換が、企業経営者に求められています」(坂野)

磯貝が合わせて強調するのは、『アスピレーション型思考』への転換だ。いま、世界の変化は、これまで経験してきたものとは根本的に異なっている。従来の成功に基づき仮説を立てるような「積み重ね思考」では、新たな『ゲーム』には対応することが難しくなるとする。

「ゲームの基盤そのものが変わる時代には、成功体験や暗黙知を捨て去り、これまでとはまったく異なる新しいことを受け入れ、アスピレーションをもって高い目標を考えていく姿勢が成功のカギになります。そして、やりたいこと、やるべきことに対する強い熱望をカタチにする力が企業の競争力を支える時代になるでしょう」(磯貝)


PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス テクニカルリード 磯貝友紀


SX推進は『楽しく意義ある挑戦』


SXの射程は、「企業の道徳性を高める」というイメージのその先にある。世界と自社の共通利益を発見し、新しい企業経営の在り方を生み出すことこそが本質だ。

「これまでビジネスは『安くて良いもの』を売ることで成り立ってきました。これからはそのバーがさらに高くなります。『良いもの』の定義が、顧客のみならず、地球や社会、そしてサプライチェーン全体に利益をもたらすものでなくてはならなくなるのです。SXを実現するためには、例え短期的な利益を犠牲にしてでも、長期的な利益を取りに行くという経営判断が必要になります。PwC Japanグループはそんなイノベーティブな経営判断を下せる、最先端の企業経営者の皆様を支援していきたい。また自社の取り組みを積極的に発信して仲間をつくることもSXにとって大切なこと。未来に向けた新しい企業の在り方を模索する『楽しく意義ある挑戦』に、ぜひ一歩踏み出していただきたいです」(磯貝)


『SXの時代―究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』
坂野俊哉、磯貝友紀・著(日経BP)


https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/publication/sx2104.html


PwC Japanグループ
https://www.pwc.com/jp/


坂野俊哉◎PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス エグゼクティブリード。企業の経済的価値、環境・社会的価値を向上させるためのサステナビリティを軸にしたトランスフォーメーションを支援。

磯貝友紀◎PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス テクニカルリード。日本企業のサステナビリティビジョン・戦略策定、SXの推進、サステナブル投融資支援実績多数。

Promoted by PwC Japan Group | text by Jonggi Ha | photographs by Tadayuki Aritaka | edit by Kana Homma

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