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だが、高校卒業前の18歳のときに、転機が訪れる。義肢装具士の臼井二美男を訪ねたことがきっかけで、パラアスリートを撮影する写真家の越智貴雄を紹介され、越智が制作する写真集『切断ヴィーナス』のモデルとして復帰する。

人前で義足を見せることに強い抵抗を感じ、6年も自分の殻に引きこもっていた海音は、最初は申し出を断っていた。が、「義足をハイブランドのような格好いいものにしたい」という越智の熱い思いに突き動かされる。

と同時に、この言葉が義足と一緒に閉じ込めていた「本当の自分」を呼び起こすきっかけになった。人前で表現するのが好きだった自分。病気であきらめたモデルの仕事が何よりも好きだったこと。海音は、6年間義足にとらわれていた自分と決別し、モデルとして再出発する覚悟を決める。

「義足」を個性として受け入れることができたのも、両親の支えや、いろいろな人との出会いがあったから。

「義足は絶対に隠さないといけないものだと思っていたんですが、義足はハンデではないって気付かされました。これからは義足であっても、もっと人前に出ていきたいと思います。できれば、隠す隠さないを自分の意志で自由に選択できる世の中になるといいですよね」。

自分の体験を話すことで、「多様な個性を認める寛容な社会」の実現に一歩でも近づくことができればいい。それ以上にいまは、「殻に閉じこもっている人たちの支えに少しでもなりたい」と、苦手なトークショーや対談に挑戦している。

海音の飾らない言葉に、引き付けられる人は多い。SNSのフォロワーは4歳から86歳までと幅広く、「手術の決断がついた」、「大学に入ってやりたい道を進む」と、背中を押された女性もいる。

“うまくいく”と信じる気持ちと負けん気が原動力


目標は毎年決めるという。モデルに再デビューしたときの目標は、パラリンピックに出ること。1年以内に達成した。ファッションブランドのアンバサダーになる目標も叶った。

「目標を頭に描くと、必ずうまくいくって信じているんです」と話す海音。生来の負けず嫌いな性質が目標の実現へ突き進む原動力になっている。

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来年は、海外のファッションショーに出演することが目標だ。そのために、英語の勉強も始めた。

オーディションに落ちたら、「次に来る仕事のほうが、もっと自分に合う、いい仕事が舞い込むって、思うようにしています」と前を向く。そう信じ切っている分、うまくいかなくても落ち込むことはないという。

もちろん、「落ち込む時期はあってもいいと思います。落ち込んだときは、自分が好きなことをしてみる。絵を描く、写真を撮る、何でもいいので好きなことをすれば、気持ちが上がってマイナスなことは考えなくなりますよね」。

海音にとっての好きなことはモデルの仕事。ファッションショーや雑誌モデルの仕事をしている今が「ハッピー!」と笑顔を見せた。

いつかは、憧れの女性、両足義足の元パラリンピック選手のエイミー・マリンズのように、ハリウッドで女優として活躍したい。「いずれ私も」と、海外へと夢は広がる。

文=中沢弘子 写真=吉澤健太 編集=坂元耕二

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