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「スーパー・ブリッツスケーリング」競争時代の到来

━━ グロービス・キャピタル・パートナーズ・代表パートナー 高宮慎一

メルカリが時価総額1兆円を突破し、上場後も含めて時価総額1000億円に届いたスタートアップ企業は20社程度出てきている。こうした企業がロールモデルとなり、次なる目標はデカコーン(評価額1兆円以上の未上場企業)となった。ひと昔前に「ユニコーンor Die」と言ったが、現在は「デカコーン or Die」になった。

Dieの心にも通じるが、「スタートアップ側の競争が激化」している。資金供給がボトルネックでなくなったことで、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)した瞬間に、資金力でスピードをあげてアクセル全開で急成長させる。そして、競合よりも有利な資金調達を行い、さらに競合との差を広げる。ブリッツスケーリング(猛烈な拡大)競争どころか「スーパー・ブリッツスケーリング競争」のようになっている。

現在は、VCだけでなく、上場株プレイヤー、海外プレイヤー、バイアウトプレイヤーなど多種多様な投資家がスタートアップ投資に参入し、スマートニュースのように未上場ラウンドで200億円の調達すらできるようになった。米国化の流れだ。資金供給が潤沢になることで、上場前の規模感、スピード感が拡大・加速している。

こうした環境下では、ゲームの「ルール」が変わった。今年のトレンドとして、テーマをあげることもできるが、その背景にある未上場資本市場の構造論的な変化が与えた影響の方が大きい。

かつては、未上場時点で、数十億、百億円をいかに資金調達するか、という戦いだった。その後、例えば、200億円規模の資金の出し手がいなくなると、上場するという流れだった。現在は、多様なプレイヤーが未上場の投資に参入したこともあり、200億円程度であれば調達できるようになった。その結果、スタートアップは、短期的な業績よりも長期的な事業成長を優先させ、上場時期を後ろに引っ張るようになっている。

こうした環境下では、スタートアップは、レイトステージで、組織規模が大きくなり、場合によって複数事業を展開し、あたかも大企業のような経営が求められる。起業家としての突破力だけではなく、成熟した経営者としての経営力、チーム力、チームアップする力が重要になっている。

VCが提供する価値も、変化したのではないか。近年では、資金提供からオペレーションまで踏み込んだ支援競争のようになっていたが、1周回ってVCの本分である資金供給力が、100億円規模で求められている。そして、経営支援、オペレーション支援においても、規模化した企業における仕組み化、組織構築、いわゆる成熟した企業経営のための付加価値提供という一段ステージが上がった印象だ。ベンチャーマネジメントではなく、一般のマネジメントとしての付加価値提供が求められている。(談)

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本連載は、発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「起業家ランキング2022」と連動した企画です。今後、著名投資家へのインタビューを連載形式で随時公開を予定しています。

【連載】スタートアップ・トレンド
vol.1 2021年、「ギアチェンジ」した日本のスタートアップの進化
vol.2 2022年、スタートアップ資金調達額「1兆円」時代の到来か
vol.3「CVC新元年」だった2021年。さらなる拡大・飛躍へ向かう

文=Forbes JAPAN編集部

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