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企業はなぜ取り組むのか


前出の新しいサービスなどを利用して、健保の運営コストや全体の医療コストの最適化に取り組むメリットは企業にとって大きい。しかし、企業が従業員のウェルビーイングを重視すべき理由はそれだけではない。

スイスのビジネススクール、IMDで企業のDXを研究する横井朋子は、新型コロナのパンデミックで、世界の企業がより従業員のウェルビーイングに取り組むようになったと指摘する。

「リモートワークの導入によって、労働時間が増え、会議数やメールの数も上昇傾向にあります。従業員のいわゆる『燃え尽き症候群』による経済的な損失も明らかです。本気でウェルビーイングに取り組まざるを得ない状況にあるのです」

新型コロナによって、福利厚生の中身も変化しているという。これまでの企業のウェルビーイングプログラムでは、オフィス内を前提にした福利厚生が多かったが、動画配信など別の形態への変更が模索されている。また、従業員任せだった取り組みも、企業のチームレベルから導入し、企業文化や慣習として統合していくことが重要だ。

「これまで労働生産性が追求されてきましたが、いま多くの人々が求めているのは目的(パーパス)です。人々のパーパスとウェルビーイングを支えることが企業の今後の成長にとって不可欠なのです」。(横井)

国内でエンゲージメント投資を手掛けるみさき投資マネージャーの佐藤広章もウェルビーイングの重要性を強調する。企業価値は、機械・装置等の有形資産に加えて、目に見えない無形資産によって生み出されるが、近年は無形資産の重要性が急速に高まっている。

例えば、米国S&P500企業の市場価値について、1975年には有形資産の価値で8割程度が説明できていたが、2020年現在では1割しか説明できないという分析結果がある。みさき投資では、無形資産の一つが組織能力・人的資本であると考え、従業員のウェルビーイングに注目している。

「投資を検討する際、事業そのものの障壁の有無だけでなく、会社の組織能力/人的資本の強さに着目しています。企業との対話の中で、従業員のウェルビーイングを意識している経営者が多くなってきていることを実感していますが、取組余地は大きいと思います」(佐藤)

ウェルビーイングの実現には、従業員が中長期的に豊かになることも不可欠だと佐藤は指摘する。日本では、長年実質賃金が上がらず、従業員の豊かさが置き去りにされてきた。従業員のやる気を引き出すとともに、成長の果実をどのように還元できるのか。例えば、ユニ・チャームが20年に従業員全員に譲渡制限付株式報酬を導入したことがニュースになったが、ウェルビーイングを実現する取り組みの一つと言える。

「給与の引上げのみならず、株式も活用し、従業員・経営者・株主がみなで豊かになることは重要だと考えています」(佐藤)。

文=Forbes JAPAN編集部

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