ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座

Louis Roedererの醸造家チーム

長い歴史と伝統がありながら、同時にモダンでもあるワイン産地がシャンパーニュだ。この地には、シャンパーニュメゾン「ルイ・ロデレール」のように、伝統を受け継ぎながら、次時代を見据えて新しいアイデアを世に送り続ける造り手たちがいる。今回は、同メゾンの新しい創作である「Collection」を深掘りすることで、シャンパーニュの今を紹介したい。

NVシャンパーニュとは


「NV(non-vintage)シャンパーニュ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、そのシャンパーニュが、複数の収穫年のワインをブレンドして造られていることを意味する。これに対し、単一の収穫年(ヴィンテージ)のみのブドウから造られ、ボトルにその収穫年が明記されるものは、「ヴィンテージ・シャンパーニュ」と呼ばれる。

実に、シャンパーニュの全生産量の約80%が、このNVで造られている。例えば、モエ・エ・シャンドンのImperialやヴーヴ・クリコのYellow Labelのように、NVで造られたスタンダード・キュヴェは、造り手の商品ラインナップのなかでも最も入手しやすく、より多くの飲み手が味わうことがある、造り手の“顔”となる商品だ。

こうしたNVシャンパーニュは、その造り手のスタイルや伝統を体現するもので、一貫したスタイルを維持する。大手メゾンの場合、リザーヴワインと呼ばれる、過去の収穫年に造られ保管されているものも含め、ときに何百種類ものワインをブレンドして造りあげる、非常に手が込んだ創作物だ。

これに対し、ヴィンテージ・シャンパーニュは、その収穫年の個性を表現したもので、良作年にしか造られず、生産量も少ない。


NVシャンパーニュは、直近の収穫年のワインをベースに、過去の収穫年のワインであるリザーヴワインをブレンドして造られる

シャンパーニュにおいて、NVの概念が生まれたのには理由がある。

もともと、シャンパーニュ地方は、ブドウが栽培可能な北限に位置する冷涼なワイン産地で、海からの影響により、年によっては雨量も多く、ブドウの栽培にとって厳しい気候条件の場所だ。毎年安定した量と品質のブドウが収穫できるとは限らず、また年ごとに、ブドウの質や特徴に差がでやすい。

そのため、難しい収穫年のワインを、質・量の面で補うために考えられたのが、リザーヴワインだ。過去の収穫年からのリザーヴワインを最新の収穫年のワインに加えることで、毎年、一貫した量と品質のNVシャンパーニュを造り続けることができるようになった。

さらに、リザーヴワインをブレンドすることで、熟成由来の複雑さや深みが追加される。また、ブドウ栽培で生計を立てる農家にとって、収穫が豊富な年のワインを取っておくことは、将来への備えとなり、金銭的な安定も見込める。

NVシャンパーニュは、厳しい条件を乗り越えて更に良いものを生み出すという、シャンパーニュの人々の英知の結晶ともいえる。そして、こうした背景事情に、近年では変化がみられる。


シャンパーニュの風景

文、写真=島悠里

ワイン
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