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役職は「役割」にすぎない


社内において新規事業の立ち上げや要職を歴任してきた鳥屋尾は、リーダーシップについてどう考えているのか。

「私が考えているリーダーシップのある人というのは、『物事を前に進めた人』です。会議での進行だったり、アイデアをたくさん出すことだったり、会社の運営だったり、求められるリーダーシップの形は、仕事内容やチーム編成によって変化しますよね。

例えば、会議ではさほどアイデアは出さなくても、進んで議事を取り、次回までに進めるべきタスクを整理して共有し、次回の日程を調整して決めるという行動をとったメンバーも“物事を前に進める”という意味ではリーダーシップを発揮していると私は見ています。

だからこそ、リーダーシップは誰にでも発揮できる場所がある。役職は『役割』にすぎないと思っているんです」

ワコールは社員の約9割が女性で、75年もの歴史を持つ会社だ。つまり、女性の活躍なしには成り立たない。「全員が活躍していることが前提で、それぞれがそれぞれの役割を担っているだけ」だと鳥屋尾は言う。

「社員の男女比や、障がいを持つ従業員の雇用率、女性の役員が多い少ないなどといった指標は、単なる『属性』の多様を語っているに過ぎません。それは最低限のもの。女性にも外交的なのか内向的なのか、イノベーターかアダプターかなど、それぞれの特性があります。私がアイネクストで大事にしているのは、こうした個々の多様性です」

例えば、集中しすぎてしまう(過集中)という特性を持つ従業員には、作業時間を区切ってこまめに休憩を促したり、1つのタスクに集中しすぎて辛くならないように複数のタスクを掛け持ちしてもらったり、その人が最大の成果を出せるように「配慮」する。従業員それぞれの特性にあわせたインクルーシブな働き方が実践されている。

「私たちは、相互信頼をとても大切にしています。だからこそ、障がいを持つ従業員に対しても、研修の段階から『配慮はするけど遠慮はしない』と伝えています。相手に対して腫れ物を触るように遠慮してしまったら、信頼関係は生まれないと思うから。彼らが成長できるような仕事のやり方を組み立てて、プロの仕事をしてもらい、成果をきちんと出すこと。これは当たり前だけれど、すごく大切なことだと思っています」

さらに鳥屋尾には、管理職についてから、ずっと心がけていることがある。それは、メンバーに違うプロジェクトで3つの立場を持ってもらうことだ。

「1つのプロジェクトにはメンバーとして、他のプロジェクトにはリーダーとして、もう1つのプロジェクトにはサブリーダーとして、というように、立場を変えて関わってもらうんです。そうすると、それぞれの立場における振る舞い方の違いがわかってくるので、サポートやフォローもうまくできるようになってプロジェクトが回り出す。違う視点をたくさん持つことで、やるべき仕事や課題解決への解像度がグッと上がってくるんですよね」

同じ人物でも、さまざまな役割があり、立場によって違う視点を持つことができる。特性から一歩進んだ「個の中の多様性」と呼んでいる。同じ1人の人間がさまざまな立場や側面を持つことを意識することで、一人一人の新たな可能性が発見につながると考えている。

「私も、妻であったり、母であったり、時には娘や妹であったり、立場によって役割が異なります。社会人としても、会社の代表であると同時に、京都を愛する一個人として休日を使って地元NPOのアドバイザーをしたり、地元の空手道場の指導員であったり、スタートアップのメンターであったり、日本文化における「間」の探究をする大学生であったり、多分野の大学の先生方と語らうラジオのパーソナリティや場のオーナーであったりと、さまざまな立場をいま、持っています。

多くの違う視点を自分の中にもつこと。リーダーシップや仕事との向き合い方とも繋がるのですが、こうした自分の中の『個』をたくさん見つけることで、その人自身の伸び代も見つかるはず。これからも、個の中の多様性をもっと増やしていける環境と、成長できるチャンスを少しでも多くつくっていきたいと思っています」

文=松崎美和子、アステル 写真=柳原久子

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