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今回のAIプロジェクトは、「やりたいから」という好奇心から始まりました。新しい発想は好奇心の先に出てくると思います。Googleのように就業時間の20%を好きなことに使ったり、莫大な資金を投資したりとまではいかなくとも、「面白そうだからやってみる」という実験はどの企業でもできるはずです。

──それは、企業レベルでの実験ですか。それとも日曜の夜に考えつくような個人ベースのクリエイティビティなのでしょうか。

長谷川:すでにクリエイティブなことを実験してみようという文化が会社にあるのでならば、個人ベースでパフォーマンスや想像力を上げていくことが正解だと思います。ただ、昔僕が働いていた証券会社で同じことができるかといえば、かなり難しいでしょう。

クリエイティブな実験を推し進める文化が醸成されていない企業においては、ある程度の枠組みを、たとえば予算はこれくらいとか、この日のこの時間は実験してみようみたいなものをつくらないと、どれだけアイディアをもった個人がいたとしても、それを実際にやってみようという行動にはつながらないと思います。

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AIアート「What Was, Is, Or Will Be」長谷川雅彬氏作

日本にいて「多様的視点」を持つためには


──環境が大事だということですね。ちなみに、長谷川さんは現在スペインにお住まいですよね。キャリアやスキルの面から見ても多様性を身につけていらっしゃいますが、アーティストでもない、海外に住んでいるわけでもない私たちが多様性を身につけるためにはどのようなことから始めたら良いでしょうか。

長谷川:ひとつは、疑いの目をもつこと。当たり前だと思っていることが「常識」に落とし込まれると、思考は硬直化します。業界のしきたりでも何でも良いのですが、「これって常識だよね」と思った瞬間に、まさに疑いの目をもってみると良いでしょう。

もうひとつは、自分と違った考えを許容する練習をすることです。例えば、スペイン人は待ち合わせによく遅刻します。日本の感覚でいるとイラッときてしまうのですが、スペインでは当たり前なので、イラついても意味がありません。いろんな衝突があるときに自分の考えを押し付けてしまうと、結局自分の視点やパターンでしか物事を見れなくなってしまいます。だからこそ、自分とは異なるパラダイムを生きている人を許容できる練習をしていた方が良いと思います。

──たしかに、自分はこういう職業だからこういう考え方をしなければいけないという考えに陥っている部分は思い当たります。そういう縛りによって、もしかするとアートの中で活きるかもしれない美意識を封印しているような気もします。

長谷川:テクノロジーを使えば、誰でもなんでも具現化できてしまう世界が近づいてきたときに、今後は感受性が大事になってくると思います。感受性がないと、目の前にあっても気づけません。何かが起きていても変化がわからないとか、新しいことが見えてこないとか、その背景にある繋がりが見えてこないとか。美意識や何かを美しいと感じる心を養うためにも、まずは感受性を鍛えると良いでしょう。

インタビュー=谷本有香  文=伊藤みさき

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