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朝日新聞外交専門記者

Photo by Nicolas Datiche - Pool/Getty Images

新型コロナウイルスのワクチン接種を公式に証明する「ワクチンパスポート」(ワクチン接種証明書)の申請受け付けが7月26日、始まった。海外渡航先で提示すれば、入国後の隔離措置などを受けずに済む。外務省のホームページによれば、7月30日現在でイタリアやオーストリアなど12の国と地域が対象になっている。韓国は隔離免除書発行に必要な書類のうちのひとつとして使えるという。

「案外、使える国が少ないんですね」と政府関係者に聞くと、「レシプロ(principle of reciprocity=相互主義)でやっているからですよ」と教えてくれた。「日本がワクチンパスポートによる制限なしの入国を認めてくれるなら、こちらも日本人を同じように入国させましょう、という国が結構あるんです」という。

日本政府は現在、日本人の帰国者にも検疫所への「出国前72時間以内の検査証明書」の提示を求めており、ワクチンパスポートによる隔離免除を認めていない。しかも、検査証明書は検査方法などを予め指定している。海外の医療機関で検査を受けた際、日本政府が指定した方法などを守っていないとして、入国を拒否されるトラブルすら起きている。政府関係者によれば、日本のワクチンパスポートを認めてくれる国は、観光収入に頼るイタリアなど、特別な事情がある場合が多いという。

また、ワクチンパスポートは香港には使えるが、中国への入国で使えるようになるかどうかはわからない。中国は3月から、ワクチン接種記録などを示す「国際旅行健康証明」を発行、自国製ワクチンの接種を受けた外国人の入国規制を緩和した。だが、中国は自国製ワクチンしか承認していない。逆に、欧米諸国ではファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどを承認する国が大半で、中国製ワクチンを承認していない。日本の中国研究者の1人は「米国が中国製ワクチンを承認する可能性は低い。日本が米国に合わせて、中国製ワクチンを認めない政策を取ると、日中の経済関係は深刻な打撃を受けるのではないか」と語る。

米国は現在、「クリーン・ネットワーク」構想を掲げ、中国メーカーを排除した新技術・通信網をつくろうとしている。これに、ワクチン政策が加わると、欧米と中国の間に人の往来を許さない大きな壁「人流デカップリング」が生まれるかもしれない。研究者は「切羽詰まった日本企業のなかには、独自に中国製ワクチンを接種して隔離措置を免れようとする動きが出てくるかもしれない」と語る。

文=牧野愛博

新型コロナコロナワクチン
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