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(c) J.LEAGUE

Jリーグが5月末に開催した理事会後の定例会見で、村井チェアマンが自身の報酬の一部返上を発表する一幕があった。

今シーズンのユニフォームに圧着する背番号や選手名のシートの納品に遅延が発生した問題について、「大混乱をきたした責任を自分が取らなければならないといけない」として、報酬の30パーセントを3カ月間自主返納する決断に至ったという。

なぜこのような事態が発生してしまったのか?

2021シーズンから、全クラブ共通のオリジナルフォントに刷新


Jリーグは今シーズンから「Jリーグオフィシャルネーム&ナンバー」の新規導入を決定し、ユニフォームの背番号と選手名は全クラブ共通でJリーグが定めるオリジナルフォント(書体デザイン)に刷新されることになった。導入対象はJリーグ公式試合のすべて(カップ戦等含む)で、Jリーグに所属する全57クラブは「J.LEAGUE KICK(Jリーグ キック)」と命名されたこの新フォントの使用が義務付けられることになった。

>> まだ発展途上。Jリーグが全力で挑む「統一フォント」の全貌

選手が実際に着用するユニフォーム分については問題なく供給されたが、在庫や流通管理の手違いによりクラブが販売するためのシート納品に不備が生じたのだという。

そもそもJリーグは1993年に開幕して以来30年近くネーム&ナンバーのデザインはクラブごとに任せてきた歴史がある。ここにきて、新規制作にかかるコストのみならず、多大な労力そしてリスクを冒してまでフォントを刷新・統一しなければならない理由とは何だったのか。

これには、Jリーグが掲げる「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」そして「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」という理念が大きくかかわっている。


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新フォント「J.LEAGUE KICK」採用の目的は


このフォントを採用する最たる目的は視認性の向上である。Jリーグが「視認性」という問題に取り組もうとしたきっかけは、サッカーの視聴環境の多様化にある。

かつてはTVかスタジアムの2つしかなかった選択肢が、今ではPCやタブレット等のデバイス、そしてスマートフォンでの視聴需要が高く、実にJリーグ視聴者の8割近くがスマホの視聴体験を持つ。またコロナの影響でデジタル配信の重要性が一層高まり、様々な追加機能やマルチアングル等テクノロジーが発達する中、視聴者の「見やすさ」を担保できているかとの疑問が浮上したという。

特にサッカーという競技は野球やバスケットボール等の他競技と比べても、広い視野の中で同時に大勢のプレイヤーの動きを素早く追わなくてはいけない競技であるため、敵・味方の判別や、どの選手がどこにいるかを瞬時に見分けるために、ユニフォームの情報は非常に重要な要素となる。いかなる視聴環境でも、特に画面の小さなスマホでもクリアに選手のネーム&ナンバーを識別することがファンの視聴ストレスを軽減することに異論はなく、Jリーグとしてはこれを追求すべきと判断したのだ。

実は視認性の問題は以前から存在しており、Jリーグ公式戦のマッチコミッショナー報告において、2013~18年の間、背番号に関する報告が45件、25例の番号で視認性不良が指摘されていたという事実もある。2017年にはJ2岐阜対松本戦において、深緑色の岐阜のユニフォームと、濃い灰色の松本のユニフォームが、日差しの強さとピッチの芝の緑色の影響も受けて見えにくさが助長され、味方と相手選手を見間違えてパスミスをするに至った。この試合は急遽ホームの岐阜が後半アウェイの白いユニフォームに着替えて試合を続行する珍事となった。

7月15日にはセリエAが同様の理由で、フィールドプレーヤーの緑色ユニフォームの着用を2022-23シーズンから禁止すると発表している。


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文=中澤薫 編集=宇藤智子

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