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こうした視認性の改良に取り組む中で、色覚マイノリティの人への識別性の担保という課題にも直面することとなった。

スポーツにおける色の識別性については、海外でも度々議論を呼んでいる。2014年に欧州チャンピオンズリーグで赤いユニフォームのリバプールと緑色のルドゴレツが試合をした際、「見分けられない」との苦情が多数噴出、これをきっかけにイングランド・サッカー協会では専門家のヒアリングを基にガイドラインを策定した経緯がある。

しかしながら今年1月のプレミアリーグ、リバプール対マンチェスター・ユナイテッド戦において、またも赤いユニフォームのリバプールと深緑色を着用したマンチェスターUを区別できないと、数百件の苦情が寄せられる事態が発生している。この件は試合前にリーグからユニフォームについて指摘が入ったものの、マンチェスターUがソックスを緑から白に変更することで許可されてしまったそうだ。


Photo by Matthew Peters/Manchester United via Getty Images

欧米では日本より多い12人に1人が色の識別が難しい色覚特性を持つと言われていて、多くのスポーツ組織で色に関するレギュレーションを設けるなど、対応が進められている。

こういった先行事例を参考にしながら、Jリーグでも様々な色覚特性を持つ人にとっても快適なサッカー観戦を目指すことになった。専門家の監修のもと、視認性に対応したユニバーサルデザインを取り入れた、Jリーグ独自のフォントが制作されることとなったのだ。

>> まだ発展途上。Jリーグが全力で挑む「統一フォント」の全貌

人によって異なる「色覚特性」とは?


視覚において、日本人男性の20人に1人(5%)が色覚マイノリティとされていて、300万人以上が色覚特性の違いから日常的に「見えにくさ」を感じている。5%という数字がピンとこないかもしれないが、全国の多い苗字上位である「佐藤さん」「鈴木さん」「高橋さん」「田中さん」を合計すると全人口のほぼ5%に相当するという。また、AB型男性の人数にもほぼ匹敵するそうだ。そう考えると、とても身近な存在に感じないだろうか。

色彩の認識をつかさどるのは網膜の細胞だ。人間の網膜には青・緑・赤の3種類を感知する機能(錐体)がある。3種類すべて揃っている人をC型(一般色覚)といい、日本人女性は99%、男性は95%がC型の色彩感覚を備えている。しかし、3種の錐体のうちどれかが無い、あるいは何らかの理由で他の錐体と感度が重複する等の状態の色覚特性を持つ人がいる。

なおこうした色覚の遺伝子はX染色体に含まれていて、X染色体を2本もつ女性はどちらか1つに異常があってももう片方で補完できるが、対して男性は1本しか持たないため、男性の方がこのような色覚特性を持つ割合が高いそうだ。

見え方の違いによってP型、D型、T型と大まかに3つのタイプに分けることができ、特に赤系の光を感知する錐体と緑系の光を感知する錐体は本来非常に似ていることから、この2色を見分けることが難しいP型・D型がほとんどを占める。

実際に異なる色彩感覚を再現できるシミュレーターで12色の色鉛筆の写真を変換してみた。多くの人がC型の見え方をしているが、D型・P型では赤・茶・緑を見分けるのが難しいことが分かってもらえるだろう。



「J.LEAGUE KICK」のカラーユニバーサルデザインを監修したNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)のウェブサイトでは、こういった色覚シミュレーションツールをはじめ、さまざまな情報が提供されている。子どもがP型・D型色覚である家族から、ユニフォームの色分けに関する相談を受けることも少なくないという。学校やクラブ、そして日常生活の場においても、色覚の多様性に対応することが求められている。

文=中澤薫 編集=宇藤智子

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