ポストラグジュアリー 360度の風景


ラグジュアリービジネスを考える時に、偽物の排除は常に課題となりますね。実際、現在は多くのハイブランドが中古市場に参入していますが、その主な目的は、市場から偽物を排除することです。

安西さんの指摘にもあるように、いま、ハイブランドの偽物はとても高品質で精巧です。素人目に見分けることはほぼ不可能で、もはや本物を作ったブランド関係者しか見分けられないという状況も生まれるなかで、ブランド側が直々、中古市場に参入しているというわけです。

こうした状況において、「ラグジュアリーの知財侵害はロゴやブランド名」ということですが、であればビリー・アイリッシュがやっていた堂々たるブランドの知財侵害、すなわち海賊版の着用はなぜ許されたのでしょうか。素朴な疑問です。

2019年に大ブレークした彼女は、ルイ・ヴィトンやシャネル、グッチなどのロゴマークが派手に並ぶ海賊版ファッションを堂々と着ていました。ビリーのために「カスタムメイド」されたものだそうで、ブランドの認可を得たわけではないものです。


ビリー・アイリッシュ(Kevin Winter/Getty Images for Coachella)

フェイクの誇示という挑発的態度はZ世代を中心に支持されましたが、自他ともに「ルールブレーカー」と認めるアーティストが、明らかなフェイクを着るならば、それはむしろアートな行為に近くなり、ブランドにとっては知財侵害が転じて名誉になるということなのでしょうか? 

それがアート表現になるのであれば、ブランドが海賊版を意図的に取り込むことで新たな価値を生むことだって、当然、アリになりますね。

刺激し合う本物と偽物


2018年にアレッサンドロ・ミケーレ率いるグッチは、「ダッパー・ダン」コレクションでそれをやってのけました。

ダッパー・ダンとは、1982年から1992年にかけて、ニューヨークのハーレムを拠点にハイブランドの華麗なる海賊版(ブートレグ)を作り、「ブートクチュール」というジャンルを生んだアフリカ系アメリカ人のデザイナーです。当時のヒップホップ界のスターやボクサーの間で人気でしたが、最終的にはブランド側に訴えられてビジネスを終えました。

文=安西洋之(前半)、中野香織(後半)

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