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13年11月に行った2回目の挑戦で合格。こうして誕生したのが、1時間耐火の認定を受けた「COOL WOOD」だ。14年には日本で初めて2時間耐火の認定を受けた。この部材を使えば、木造建築を14階建てまで建てられる。

ただ、挑戦はそこで終わらなかった。2回目の試験のとき、試験官は高温に耐え抜いたCOOL WOODを見て「まだ余裕がありますね」とつぶやいた。そこで木村は、さらに改良を重ねて17年、3時間の耐火試験にチャレンジした。見事、一発合格。この認定を受けたことで、“階数制限なし、面積制限なし、用途制限なし”で、さまざまな建築物の柱に木を使えるようになった。これも日本初の快挙だ。

KES構法とCOOL WOODの2つが揃ったことで、木造建築の可能性は大きく広がった。冒頭に紹介した高惣木工ビルのほか、来年には1階部分に3時間耐火の木材を使った11階建て木造ビルの完成が控える。大林組の研修施設になる予定で、シェルターが技術協力している。

今夏には15階建ての純木造マンションが着工予定。現在計画中の別のマンションでは、25階建ての構造解析も終わった。「クライアントさえいれば、40階建ても建てられる」と、木村は豪語する。


山形県南陽市の「シェルターなんようホール(南陽市文化会館)」は、木質耐火部材「COOL WOOD」を採用しており、1403席の座席数を有する大ホールは2015年12月にギネス世界記録「最大の木造コンサートホール」に認定

もちろん高さは技術の象徴に過ぎず、その追求が目的ではない。木村が目指すゴールは、「木造都市をつくること」だ。

「木を燃やすと炭素を排出しますが、ビルに使って都市(まち)に森をつくればCO2が都市に固定されます。さらに木を切ったところに再植林すれば、持続可能な社会に近づく」

サステナビリティは時流に乗ったキーワードであり、都市に森をつくるという目標も後付けに聞こえなくもない。しかし、創業時から書き続けているノートを見れば、そうではないことがわかる。

ノートには本や新聞から集めたモチベーションを高める言葉がメモされており、中身は毎年替わる。ただ、最初のページに書かれた人生目標はずっと同じ。目標は10年1節、全5節からなり、最終行には「木造都市をつくる」と書かれている。木造都市の建設は、約50年前からの構想なのだ。

「ここに書いた目標は、これまですべて達成してきた。木造都市も必ず実現させます」

開発したのは“燃えない木”だが、木村の言葉は可燃性で、終始、燃え続けていた。




シェルター◎1974年に設立した山形県の木造建築会社。日本初の接合金物工法「KES構法」や木質耐火部材の「COOL WOOD」、木材に曲がりやひねりを与える「FREE WOOD」など、独自の技術を生み出し続けている。資本金は9000万円。従業員数は115人。

木村一義◎1949年、山形県生まれ。72年、足利工業大学工学部建築学科卒業後、米国カーネギーメロン大学大学院建築科に留学。帰国後、74年シェルターホーム(現 シェルター)を設立し、接合金物工法「KES構法」を開発。2020年より代表取締役会長。

文=村上敬  写真=佐々木康

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