VCのインサイト

スタートアップ界では、「バーンレート」とは会社が1カ月あたりに失うキャッシュの量のことです。

バーンレートは基本的に低く保ったほうが良いとされていて、そうすることで「ランウェイ」、つまり新たな資金調達をせずに事業を継続できる期間を伸ばすことが推奨されています。

ランウェイが長ければ、いろいろと試行錯誤する時間が増え、資金面でまだ余裕があるので投資家に対しても比較的強い姿勢で交渉できるからです。

また、余計なストレスを減らして事業に専念できるという点でも有利です。

バーンレートという考え方は主にスタートアップに対して使われることが多いのですが、個人にも適用できると私は考えています。

個人としての「パーソナル・バーンレート」が低く、ランウェイが長いほうが、リスクを取ってより多くの機会に挑戦する余裕や柔軟性を持つことができます。

そして、毎月の給料にしがみつく必要がなくなるので、生活費のためだけではなく仕事の楽しさを重視したキャリアパスの選択ができるようになります。

自分で自分の人生を選べるようになり、自由になれるのです。

この考え方は、これからスタートアップ界に入ることを検討している人にとって特に重要です。

毎月の給料がなければとても維持できないような「バーンレート」が高いライフスタイルを続けているかぎり、スタートアップにチャレンジする勇気を持つのはなかなか難しいかもしれません。

安定した給料への依存が、スタートアップという夢の追求を妨げてしまうのです。スタートアップのほうが長期的にみれば収入も増え、さらに人生の充実や、大幅なキャリアアップにもつながる可能性があるとわかっているにもかかわらず、です。

一方で、個人としての「バーンレート」を低くして「ランウェイ」を増やせれば、リスクを取って、長い目で見れば人生をプラスに変える可能性のあるチャンスに挑戦できるようになります。

これはスタートアップを起業しようとしている人だけではなく、スタートアップへの入社を考えている人にも当てはまります。

もちろん、こうした生き方を実践するのは口で言うほど簡単ではありません。現代の社会ではむしろ浪費を促すようなものに溢れていて、私たちは様々な面でそうした社会からの圧力を感じています。

バーンレートが高いライフスタイルを奨励する風潮は、法律事務所や投資銀行、コンサル会社などで特に顕著です。

私が新卒でJ.P. Morganに入社したときも、同期の一部は周りと張り合うために高価なスーツや靴、腕時計などを買っていました。中には、ボーナスを全額はたいて高級腕時計を買った人もいます。

彼にとってその腕時計は「成功」の象徴だったのかもしれませんが、実際はどちらかというと彼を会社や上司に縛りつける「手錠」のようでした。

スタートアップに入ることに限らず、人生を充実させるためのどんな夢を追求する上でも、低いバーンレートと長いランウェイは選択肢を増やす意味で重要です。

まだ何をしたいか決まっていなくても構いません。それがわかったときにすぐに新しい機会に飛び込めるリソース的余裕を持つことは、自分にとって大きな力になるはずです。

依存症というと、一般的にはドラッグや糖質などがまず思い浮かぶかもしれません。しかし、実は「毎月の給料」への依存も人生から驚くほど活力を奪っているかもしれないのです。

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文=James Riney

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