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京都市在住のフリーランスライター兼編集者




遠山:アートにはもともと、ある種の前向きな破壊がある。ビジネスは、普段は社内の常識とかみんなの固定概念が邪魔をして新しいことをやりにくい。だから、いまみたいにあらかじめ社会の破壊と再構築が行われていると、次を生み出しやすいと思います。

例えば「アート・バーゼル香港」を苦肉の策でオンライン開催したら入場者が増えたとか、アートの価格がわからないと購入できないから一覧表にしたら、価格順に並んだときに師匠格より若い作家の作品のほうが高いことが公になっちゃったとか(笑)。

アートの本来の醍醐味って、「これまでになかったものをつくってみること」ですよね。当然リスクはつきものだけど。

アメリカの現代美術家ジャクソン・ポロックは、30代後半にドリッピング(キャンバスを床に広げ、刷毛やコテで空中から塗料を滴らせる絵画手法)を編み出して抽象主義表現を先導した。しかし、ブラック・ポーリングと呼ばれる黒だけを使ったスタイルに変えると、批評家から大バッシングを受け、酒に溺れるようになり、交通事故で死んでしまった。

世界一のアーティストですら、次の表現が酷評される可能性がある。それでも、リスクを負って、次なる表現に果敢に挑戦しないといけないんです。

杉田:僕も同意見です。作家側からすると、このコロナ禍の1年間は、経済的には厳しい部分もあったけれど、邪念が少なくなって、作品制作に集中できているという話をよく耳にします。

社会が激変して不安が増しているほうが、「そもそもアートとはなんぞや?」という話をアーティスト同士でしやすかったり、アートに対して真剣に向き合いやすくなったり。制限があるほうが、自分の腕を試しやすいということもあります。

遠山:俳句であれば、「五七五」という文字数や「季語」という制約があってこそ……。

杉田:作品が際立つ。それも、普段からチャンスを窺っている人、ずっと燻っている人ほど、いまこそ新しいことをしようとしている。

遠山:試行錯誤するには本当にいい時期ですね。

私たちもThe Chain Museumで、制作場所に苦心している作家に場所を提供する仕組みをつくったり、作家や作品をブランディングしていったり、チャレンジしようと思っていることはたくさんある。しかもそれがコロナ禍でやりやすくなった感じはあります。

杉田:遠山さんは、個人としても会社としても、楽しいチャレンジばかりしていますね。

取材・構成=堀 香織 撮影=山本マオ

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